ここは世田谷豪徳寺

武者走走九郎or大橋むつお

文字の大きさ
40 / 139

40《はるかさんと待ち合わせ》

しおりを挟む
ここは世田谷豪徳寺・40(さくら編)

第40話《はるかさんと待ち合わせ》さくら 




『春を鷲掴み』で、間所健さんと坂東はるかさんとも『お友だち』になった。でも、二人ともキャリアが違いすぎる。って、あたしのキャリアがなさすぎなんで、お仕事仲間はみんな、遠近の違いはあっても先輩だ。とても対等な友だちとは言えない。

 でも、はるかさんは、日に何度もメールをくれる。

――おはよう。もう起きた? わたしはこれから寝るところで~す――
――今から○○の収録。朝は苦手。でも、いってきま~す――
――○○の収録終わり。とりあえず問題なし――
――もう寝たぁ? 今から来月の舞台の打ち合わせ、たぶん午前様で~す――
――おはよう。もう起きた? わたしは、これから爆睡しま~す――

 最初は、この五本のメール。

――おはよう。今からお仕事。いってきまーす(^▽^)/――
――聞いて聞いて、今夜の仕事、相手役の急病でオフになっちゃった!――
――肝心なこと忘れてた、よかったら、今夜晩ご飯付き合ってください(^□^)!――

 じつは、この間に十五本もメールが入っていたんだけど、今どこそこにいまーすというようなものばかりなので、このお話の展開に関係あるやつだけ並べました。

 あたしは、この五日間入試で学校は休みだった。駆け出しの業界人の仕事は、こないだの『春を鷲掴み』とラジオの生があっただけなので、リアルはがない女子高生のあたしは、数少ない友だちのまくさと恵里奈とカラオケ行った以外は、チュウクンのお相手してるのかされているのか分からない付き合いがあったきり。喜んで、先輩女優のゴチになる。


 場所は乃木坂近くのKETAYONAってお店。


 一応店のありかは教えてもらっていたけど、スマホの道案内に頼ることもなく着くことができた。

「あのう、はるかさんと待ち合わせている佐倉っていいますけど……」

 そこまで言うと「どうぞ」と奥の個室に通された。

「ごめんね呼び出して。お家大丈夫?」

「大丈夫です。はるかさんといっしょだって言ってありますから。はるかさんの信用は、家じゃ一番なんです」

「嬉しいこと言ってくれるじゃない。ま、とりあえず乾杯で、お料理は任せてね!」

「あたし、未成年ですから」

「大丈夫。わたしアルコールだめだから、ジンジャエールで乾杯」

 そして、ノンアルコールで乾杯したあと、ひとしきりお料理をぱくつき、ソロリとお話に入っていった。

「あたし、この店初めてって気がしないんですよね」

「目立たないお店なのにね」

「えと……『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』に出てきませんでした?」

「え、さくらちゃん、あの本読んだの!?」

「はい」

「おお、心の友よ(∩˃o˂∩)♡!」
 
 はるかさんはジャイアンのようなことを言ってハグしてきた。ジンジャエールってノンアルコールだったわよね?

「あの本読んでる人って、めったにいないんだよね」

「いいラノベなんですけどね」

「まあ、出版不況だからね」

「あたし、姉妹作の『真田山高校演劇部物語』も読みましたよ」

「え、あれ出版されてないわよ!?」

「ネットで掲載されてるの読みました」

「うーん、ういヤツじゃそなたは。あれ、今度本になるんだよ『はるか ワケあり転校生の7ヵ月』ってタイトルで、春には出るよ」

「あたし、最初の読者になります!」

「なかなかの心がけよのう(o^―^o)」

「あの話は、実話なんですか?」

「多少の誇張はあるけどね、マンマよ」

「じゃ、小さい頃は成城のお嬢さんだったんですか?」

「まあ、五歳までね。あとは本の通り。お父さんの会社が倒産して……ハハ、オヤジギャグだ」

「南千住の実家に越して、高二で大阪に引っ越して……」

「さくらちゃん、優しいねぇ。親の離婚飛ばしてくれるのね……」

「あ、話端折っただけです」

「いいのいいの、そこ抜きにしちゃ、今のわたしにたどり着かないから」


 あたしは、とことん付き合う気になっていた。


 はるか先輩は、とても行儀が良い。やっぱ成城のお嬢さんの時代に身に付いたものがあるんだろう。

 ら抜き言葉を使わないし、一人称も「あたし」じゃなくて「わたし」だ。あたしも「わたし」だけど、油断してると「あたし」になる。どうかすると「あし」とか「たし」だしね。

「青春て、めくるページの早さが速いじゃない。今いっしょのページに居たかと思うと、次のページには居ないのよね……人間って、みんな一冊ずつ自分の本を持ってるのよね。で、この人生の本と言うのは、人のと重なったり離れたり。いつも友だちや、身内が同じページに居るとは限らない……今、わたしのページはね、わたし一人きり。人はいるけど、みんな背景に溶け込んじゃって、物言わぬ書き割りみたいなものになっちゃった……」


 気が付くと、外は久々の雪になっていた。



☆彡 主な登場人物
佐倉  さくら       帝都女学院高校1年生
佐倉  さつき       さくらの姉
佐倉  惣次郎       さくらの父
佐倉  惣一        さくらとさつきの兄 海上自衛隊員
佐久間 まくさ       さくらのクラスメート
山口  えりな       さくらのクラスメート バレー部のセッター
米井  由美        さくらのクラスメート 委員長
白石  優奈        帝都の同学年生 自分を八百比丘尼の生まれ変わりだと思っている
原   鈴奈        帝都の二年生 おもいろタンポポのメンバー
氷室  聡子        さつきのバイト仲間の女子高生 サトちゃん
秋元            さつきのバイト仲間
四ノ宮 忠八        道路工事のガードマン
四ノ宮 篤子        忠八の妹
明菜            惣一の女友達
香取            北町警察の巡査
タクミ           Takoumi Leotard  陸自隊員 

 

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

美人生徒会長は、俺の料理の虜です!~二人きりで過ごす美味しい時間~

root-M
青春
高校一年生の三ツ瀬豪は、入学早々ぼっちになってしまい、昼休みは空き教室で一人寂しく弁当を食べる日々を過ごしていた。 そんなある日、豪の前に目を見張るほどの美人生徒が現れる。彼女は、生徒会長の巴あきら。豪のぼっちを察したあきらは、「一緒に昼食を食べよう」と豪を生徒会室へ誘う。 すると、あきらは豪の手作り弁当に強い興味を示し、卵焼きを食べたことで豪の料理にハマってしまう。一方の豪も、自分の料理を絶賛してもらえたことが嬉しくて仕方ない。 それから二人は、毎日生徒会室でお昼ご飯を食べながら、互いのことを語り合い、ゆっくり親交を深めていく。家庭の味に飢えているあきらは、豪の作るおかずを実に幸せそうに食べてくれるのだった。 やがて、あきらの要求はどんどん過激(?)になっていく。「わたしにもお弁当を作って欲しい」「お弁当以外の料理も食べてみたい」「ゴウくんのおうちに行ってもいい?」 美人生徒会長の頼み、断れるわけがない! でも、この生徒会、なにかちょっとおかしいような……。 ※時代設定は2018年頃。お米も卵も今よりずっと安価です。 ※他のサイトにも投稿しています。 イラスト:siroma様

初恋♡リベンジャーズ

遊馬友仁
青春
【第五部開始】  高校一年生の春休み直前、クラスメートの紅野アザミに告白し、華々しい玉砕を遂げた黒田竜司は、憂鬱な気持ちのまま、新学期を迎えていた。そんな竜司のクラスに、SNSなどでカリスマ的人気を誇る白草四葉が転入してきた。  眉目秀麗、容姿端麗、美の化身を具現化したような四葉は、性格も明るく、休み時間のたびに、竜司と親友の壮馬に気さくに話しかけてくるのだが――――――。  転入早々、竜司に絡みだす、彼女の真の目的とは!?  ◯ンスタグラム、ユ◯チューブ、◯イッターなどを駆使して繰り広げられる、SNS世代の新感覚復讐系ラブコメディ、ここに開幕!  第二部からは、さらに登場人物たちも増え、コメディ要素が多めとなります(予定)

【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません

竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──

ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜

遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった! 木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。 「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」 そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

昔義妹だった女の子が通い妻になって矯正してくる件

マサタカ
青春
 俺には昔、義妹がいた。仲が良くて、目に入れても痛くないくらいのかわいい女の子だった。 あれから数年経って大学生になった俺は友人・先輩と楽しく過ごし、それなりに充実した日々を送ってる。   そんなある日、偶然元義妹と再会してしまう。 「久しぶりですね、兄さん」 義妹は見た目や性格、何より俺への態度。全てが変わってしまっていた。そして、俺の生活が爛れてるって言って押しかけて来るようになってしまい・・・・・・。  ただでさえ再会したことと変わってしまったこと、そして過去にあったことで接し方に困っているのに成長した元義妹にドギマギさせられてるのに。 「矯正します」 「それがなにか関係あります? 今のあなたと」  冷たい視線は俺の過去を思い出させて、罪悪感を募らせていく。それでも、義妹とまた会えて嬉しくて。    今の俺たちの関係って義兄弟? それとも元家族? 赤の他人? ノベルアッププラスでも公開。

先輩から恋人のふりをして欲しいと頼まれた件 ~明らかにふりではないけど毎日が最高に楽しい~

桜井正宗
青春
“恋人のふり”をして欲しい。 高校二年の愁(しゅう)は、先輩の『柚』からそう頼まれた。 見知らずの後輩である自分になぜと思った。 でも、ふりならいいかと快諾する。 すると、明らかに恋人のような毎日が始まっていった。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

処理中です...