ここは世田谷豪徳寺

武者走走九郎or大橋むつお

文字の大きさ
50 / 139

50《予想通りの間抜けた顔》

しおりを挟む
ここは世田谷豪徳寺 (三訂版)

第50話《予想通りの間抜けた顔》さくら 




 大阪で主要キャストの顔合わせと記者会見をやって新大阪からの新幹線。

 記者会見で話題の出た銀熊賞をとった女優さんの話で盛り上がっていると、なんと、原作者が京都駅から乗り込んできた。予想通りの間抜けた顔だったが、なぜか喪服……。


「あ、どうしたんですか、その喪服?」


「大橋先生!」「お、はるか!?」の驚愕の声の後に、はるかさんが聞いた。

「今日は、オカンの納骨でな。ついでに東京の出版社にいくとこ」

「なんか、とんでもないついでですね(^_^;)」

「あ、このナリか? それとも京都から東京はついでにしては遠すぎてか?」

「「あ、両方」」

 あたしと、はるかさんの声が揃った。


 大橋先生は、そのまま、あたし達の横の空いている席に居座った。


「出不精やさかいなあ。なんかキッカケでもなかったら、箱根の向こうになんか行かれへん」

「新幹線の中で二人が出会うの二回目ですね」

 原作を読んだ知識で振ってみる。

「ああ、はるかが、みんなだまくらかして、南千住に行った時以来やな」

「その節はお世話になりました」

「しかし、まあ、離婚したお父さんを東京まで説得に行こういうのは、はるからしいスットコドッコイやったけどな」

 この会話だけで、はるかさんの苦しかった高校生活が偲ばれる。

 親の離婚で、名門乃木坂学院を辞め、大阪のありきたりの府立真田山学院高校に転校。
 読者の中には、お父さんといっしょに南千住に残っていた方が、両親の復縁には効果的ではなかったかと言う人もいる。

 でも、はるかさんは見抜いていた。お母さんは別れてしまったら、それっきりのサバサバした性格。だから、お母さんに付いて大阪に来た。そのほうが、自分が両親の接着剤になれると思ったから。

「はるかの『運命に流されない!』いう片ひじの張り方は好きやで。で、片ひじ張りながら、結局は流されて。空振りになってしまうんやけど……」

「もう、言わないでくださいよ」

「そやけど、その空振りが、トンでもない運命のボールをかっ飛ばす。せやろ、お父さんは、さっさと再婚決めてしもて、はるかは荒川の土手で大泣きするしかなかった。せやけど、それがお父さんと奥さんの秀美さんを、ごく自然なカタチでお母さんとお父さん夫婦の縁を作った。そんで、その時の痛手が、演劇部の芝居に活きて、あっという間に、女優さんや」

「まぁ、それはそうですけど。そのときそのときのわたしは、とても苦しかったんです……でも、そうですよね。苦しみの無い青春なんて、サビ抜きのお寿司みたいなもんですもんね」

「いいや、ネタ抜きの寿司ぐらいにちゃう」

「どうも、でも、今のはるかがあるのは先生のお陰です」

「そら、ちゃうで。はるかは、俺と出会わんでも、いつかは、だれかの目に留まってたと思う」

「いや、やっぱり『すみれの花さくころ』に出会ってからですよ。あれが無かったら、お父さんとの『さよならだけどお別れじゃない』は活きてきませんでしたから」

「そら、かいかぶり。はるかにはそれだけの力があったんや。銀熊賞とった桃木華も、別に、あの高校やら短大行かんでも芽の出た子ぉやと思う。ただ、そういう縁を大事に思てくれるはるかは好きやし、はるかの値打ちやと思うで」

 グゥ~~

 そこで、あたしのお腹が鳴ってしまった(n*´△`*n)。

「お、もう飯時やな。自分ら美味そうな駅弁持ってんねんな」

「あ、これはさくらが選んだんです」

「はい、選びすぎて乗り遅れ寸前でしたけど」

「はるか、列車の入り口で振り返っとったやろ」

「ええ、なんで分かるんですか?」

「こいつは、そういう乗り遅れた人間に気を遣いよる。ええ顔しとったやろ」

「はい。お話の中で、お父さん達を見送ったときの顔でした」

「うそ、ほんと?」

「はい!」

 あたしが返事すると、大橋先生が手を上げた。車内販売のオネエサンを見つけたようだ。

「これと同じ弁当……は、あれへんねんなあ。ほんなら幕の内」

「はい、幕の内でござい……あ、大橋先生やないですか!?」

「え……ああ! イケイケネーチャンの岸本!」


 オネーサンの目に、みるみるうちに涙が溢れてきた……。



☆彡 主な登場人物

佐倉  さくら       帝都女学院高校1年生
佐倉  さつき       さくらの姉
佐倉  惣次郎       さくらの父
佐倉  惣一        さくらとさつきの兄 海上自衛隊員
佐久間 まくさ       さくらのクラスメート
山口  えりな       さくらのクラスメート バレー部のセッター
米井  由美        さくらのクラスメート 委員長
白石  優奈        帝都の同学年生 自分を八百比丘尼の生まれ変わりだと思っている
原   鈴奈        帝都の二年生 おもいろタンポポのメンバー
坂東 はるか        さくらの先輩女優
氷室  聡子        さつきのバイト仲間の女子高生 サトちゃん
秋元            さつきのバイト仲間
四ノ宮 忠八        道路工事のガードマン
四ノ宮 篤子        忠八の妹
明菜            惣一の女友達
香取            北町警察の巡査
タクミ           Takoumi Leotard  陸自隊員 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

美人生徒会長は、俺の料理の虜です!~二人きりで過ごす美味しい時間~

root-M
青春
高校一年生の三ツ瀬豪は、入学早々ぼっちになってしまい、昼休みは空き教室で一人寂しく弁当を食べる日々を過ごしていた。 そんなある日、豪の前に目を見張るほどの美人生徒が現れる。彼女は、生徒会長の巴あきら。豪のぼっちを察したあきらは、「一緒に昼食を食べよう」と豪を生徒会室へ誘う。 すると、あきらは豪の手作り弁当に強い興味を示し、卵焼きを食べたことで豪の料理にハマってしまう。一方の豪も、自分の料理を絶賛してもらえたことが嬉しくて仕方ない。 それから二人は、毎日生徒会室でお昼ご飯を食べながら、互いのことを語り合い、ゆっくり親交を深めていく。家庭の味に飢えているあきらは、豪の作るおかずを実に幸せそうに食べてくれるのだった。 やがて、あきらの要求はどんどん過激(?)になっていく。「わたしにもお弁当を作って欲しい」「お弁当以外の料理も食べてみたい」「ゴウくんのおうちに行ってもいい?」 美人生徒会長の頼み、断れるわけがない! でも、この生徒会、なにかちょっとおかしいような……。 ※時代設定は2018年頃。お米も卵も今よりずっと安価です。 ※他のサイトにも投稿しています。 イラスト:siroma様

初恋♡リベンジャーズ

遊馬友仁
青春
【第五部開始】  高校一年生の春休み直前、クラスメートの紅野アザミに告白し、華々しい玉砕を遂げた黒田竜司は、憂鬱な気持ちのまま、新学期を迎えていた。そんな竜司のクラスに、SNSなどでカリスマ的人気を誇る白草四葉が転入してきた。  眉目秀麗、容姿端麗、美の化身を具現化したような四葉は、性格も明るく、休み時間のたびに、竜司と親友の壮馬に気さくに話しかけてくるのだが――――――。  転入早々、竜司に絡みだす、彼女の真の目的とは!?  ◯ンスタグラム、ユ◯チューブ、◯イッターなどを駆使して繰り広げられる、SNS世代の新感覚復讐系ラブコメディ、ここに開幕!  第二部からは、さらに登場人物たちも増え、コメディ要素が多めとなります(予定)

【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません

竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──

ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜

遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった! 木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。 「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」 そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

昔義妹だった女の子が通い妻になって矯正してくる件

マサタカ
青春
 俺には昔、義妹がいた。仲が良くて、目に入れても痛くないくらいのかわいい女の子だった。 あれから数年経って大学生になった俺は友人・先輩と楽しく過ごし、それなりに充実した日々を送ってる。   そんなある日、偶然元義妹と再会してしまう。 「久しぶりですね、兄さん」 義妹は見た目や性格、何より俺への態度。全てが変わってしまっていた。そして、俺の生活が爛れてるって言って押しかけて来るようになってしまい・・・・・・。  ただでさえ再会したことと変わってしまったこと、そして過去にあったことで接し方に困っているのに成長した元義妹にドギマギさせられてるのに。 「矯正します」 「それがなにか関係あります? 今のあなたと」  冷たい視線は俺の過去を思い出させて、罪悪感を募らせていく。それでも、義妹とまた会えて嬉しくて。    今の俺たちの関係って義兄弟? それとも元家族? 赤の他人? ノベルアッププラスでも公開。

先輩から恋人のふりをして欲しいと頼まれた件 ~明らかにふりではないけど毎日が最高に楽しい~

桜井正宗
青春
“恋人のふり”をして欲しい。 高校二年の愁(しゅう)は、先輩の『柚』からそう頼まれた。 見知らずの後輩である自分になぜと思った。 でも、ふりならいいかと快諾する。 すると、明らかに恋人のような毎日が始まっていった。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

処理中です...