ここは世田谷豪徳寺

武者走走九郎or大橋むつお

文字の大きさ
58 / 139

58《ワケ転7ロケのアクシデント》

しおりを挟む
ここは世田谷豪徳寺 (三訂版)

第58話《ワケ転7ロケのアクシデント》さくら 




 この連休はH市で『ワケあり転校生の7カ月』のロケだ。

 
 ドラマや映画は、けして順番通り撮るわけじゃないんだよ。役者やロケ先の都合などで、場合によってはラストシーンを最初に撮ったりする。

 H市のロケは、劇中のピノキオホールでの夏の公演とコンクールでの本選のシーンを撮影する。映画の中盤と終盤の山で、設定は劇中劇の兵庫県ピノキオホールでの『すみれの花咲くころ』の初演を市民会館の中ホール。コンクール本選の公演を大ホールで撮る。

 エキストラの高校生や市民の人たちにリアルな反応をしてもらうために『すみれ』をまるまる一本上演する。本編では両方合わせて10分もないシーンなんだけど、この連休は、この公演とそれに付随するシーンだけを撮るんだ。

 コンクール本選を撮る大ホールの観客席はエキストラの地元の高校生などで一杯。

「まず『すみれの花さくころ』を通して上演しますので、単なる公演としてご覧になって正直に反応してください。ラストだけは大きな拍手お願いします」

 助監督の田子さんが観客席に向かって頭を下げる。

 わたしは、はるかの親友の鈴木由香の役なんで、カレ役の勝呂さんといっしょに客席中央に座っている。後ろには、はるかのカタキ役で、作中の後半で仲良くなる東亜美役の一ノ瀬由香里ちゃん(ユカリン)が座っている。

 由香里ちゃんは、AKRの選抜になったばかりのモテカワ系のアイドルだけど、今回は、ちょっとイメージの違うナナメになった女子高生役。

 衣装合わせじゃ、なんだか学芸会みたいに合わないってか、ヘタクソだった由香里ちゃんがサマになっている。端役なんだけど、この子の本気度はかなりのもんだ。
 なんでも従姉が、この街に住んでいて、なかなかのイケイケネーチャンで、その従姉のところに泊まって、訓練してから本番に臨んでいるらしい。


「ね、その従姉のオネエサン来てんの?」

 本番前にユカリンに聞いてみた。

「あ、この人」

「あ、一ノ瀬薫と申します。よろしくお願いします」

 !?

 びっくりした。

 てっきり筋金入りのヤンキーのオネエチャンかと思っていた。

 入学案内に載っていそうな完ぺきな制服姿、ロングの黒髪に地味なカチューシャがよく似合っている。言葉遣いも物腰も生まれながらのお嬢様風。

「あ、今日は、エキストラなので、地味にまとめてみました。由香里が言うほどのイケイケでもありませんし……ええとぉ、これでよかったですよね?」

「うん、いいと思うけど、田子さーん。彼女ユカリンの従姉さん。エキストラやってもらうんだけど、これでいいですよね」

「え、君が……話とは全然違う清楚さだね」

「イケイケは、全部由香里に貸してありますから」

「うん、よろしくッス<(`^´)>」

 ユカリンの方がイケてるんで、みんな噴き出してしまった( ´艸`)。

「じゃ、あなたはユカリンの横で、少し迷惑そうに座っててくれます? ユカリンが栄えそうだから」

「はい、承知しました」

 折り目正しくお辞儀をすると、お嬢さま系のシャンプーの香りがした。


 アクシデントは撮影のOKが出た直後に起こった。


「テメー、いつまでも昔の傷逆撫でしてんじゃねーよ!」

 ユカリンの従姉は、そう言うとちょっとチャラ目の男子を、観客席から通路に投げ飛ばした。

 ズッドーーン!

「みんな、こいつはこんなにスカシてるけど、イケイケのアバズレでよ、バージ……グホ!」

 そこまで言った瞬間、従姉さんの頭突きをくらって、階段状の通路を舞台鼻まで転がり落ちてきた。スタッフが寄ってきてはるかちゃんをガードするような勢いだった。

「すみません。お騒がせしました」

 従姉さんは、そういうと舞台鼻まで来て、チャラオを引立てて会場から出ていった。

「連れ戻して、このままじゃスキャンダルになる」

 田子さんの声で、スタッフが駆けだし、従姉さんをスタッフの控え室に呼んだ。

「……そう、そんな事情があったんだ。よかったら、話の最初のとこだけ省いてマスコミに話してもらえるかな。スキャンダルじゃなくて、撮影のエピソードで終わらせたいんだ。ユカリンのために頼むよ」

 男は以前付き合っていたチョイワルで、嫌がらせのために参加していたらしい。

「分かりました、後始末は、あたしがつけます(^▽^)」

 この薫という従姉さんは、十人余りの記者の前で、明るく請け負ってくれて、スキャンダルにはならずに済んだ。それどころか、明るくも凛とした態度に惚れ込んだ監督が「役つくるから、君も出てくれないかな!」と目を輝かせたくらいだった(^_^;)。

 従姉さんは丁重に断って帰っていった……。




☆彡 主な登場人物

佐倉  さくら       帝都女学院高校1年生
佐倉  さつき       さくらの姉
佐倉  惣次郎       さくらの父
佐倉  惣一        さくらとさつきの兄 海上自衛隊員
佐久間 まくさ       さくらのクラスメート
山口  えりな       さくらのクラスメート バレー部のセッター
米井  由美        さくらのクラスメート 委員長
白石  優奈        帝都の同学年生 自分を八百比丘尼の生まれ変わりだと思っている
原   鈴奈        帝都の二年生 おもいろタンポポのメンバー
坂東 はるか        さくらの先輩女優
氷室  聡子        さつきのバイト仲間の女子高生 サトちゃん
秋元            さつきのバイト仲間
四ノ宮 忠八        道路工事のガードマン
四ノ宮 篤子        忠八の妹
明菜            惣一の女友達
香取            北町警察の巡査
タクミ           Takoumi Leotard  陸自隊員 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

美人生徒会長は、俺の料理の虜です!~二人きりで過ごす美味しい時間~

root-M
青春
高校一年生の三ツ瀬豪は、入学早々ぼっちになってしまい、昼休みは空き教室で一人寂しく弁当を食べる日々を過ごしていた。 そんなある日、豪の前に目を見張るほどの美人生徒が現れる。彼女は、生徒会長の巴あきら。豪のぼっちを察したあきらは、「一緒に昼食を食べよう」と豪を生徒会室へ誘う。 すると、あきらは豪の手作り弁当に強い興味を示し、卵焼きを食べたことで豪の料理にハマってしまう。一方の豪も、自分の料理を絶賛してもらえたことが嬉しくて仕方ない。 それから二人は、毎日生徒会室でお昼ご飯を食べながら、互いのことを語り合い、ゆっくり親交を深めていく。家庭の味に飢えているあきらは、豪の作るおかずを実に幸せそうに食べてくれるのだった。 やがて、あきらの要求はどんどん過激(?)になっていく。「わたしにもお弁当を作って欲しい」「お弁当以外の料理も食べてみたい」「ゴウくんのおうちに行ってもいい?」 美人生徒会長の頼み、断れるわけがない! でも、この生徒会、なにかちょっとおかしいような……。 ※時代設定は2018年頃。お米も卵も今よりずっと安価です。 ※他のサイトにも投稿しています。 イラスト:siroma様

初恋♡リベンジャーズ

遊馬友仁
青春
【第五部開始】  高校一年生の春休み直前、クラスメートの紅野アザミに告白し、華々しい玉砕を遂げた黒田竜司は、憂鬱な気持ちのまま、新学期を迎えていた。そんな竜司のクラスに、SNSなどでカリスマ的人気を誇る白草四葉が転入してきた。  眉目秀麗、容姿端麗、美の化身を具現化したような四葉は、性格も明るく、休み時間のたびに、竜司と親友の壮馬に気さくに話しかけてくるのだが――――――。  転入早々、竜司に絡みだす、彼女の真の目的とは!?  ◯ンスタグラム、ユ◯チューブ、◯イッターなどを駆使して繰り広げられる、SNS世代の新感覚復讐系ラブコメディ、ここに開幕!  第二部からは、さらに登場人物たちも増え、コメディ要素が多めとなります(予定)

【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません

竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──

ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜

遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった! 木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。 「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」 そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

昔義妹だった女の子が通い妻になって矯正してくる件

マサタカ
青春
 俺には昔、義妹がいた。仲が良くて、目に入れても痛くないくらいのかわいい女の子だった。 あれから数年経って大学生になった俺は友人・先輩と楽しく過ごし、それなりに充実した日々を送ってる。   そんなある日、偶然元義妹と再会してしまう。 「久しぶりですね、兄さん」 義妹は見た目や性格、何より俺への態度。全てが変わってしまっていた。そして、俺の生活が爛れてるって言って押しかけて来るようになってしまい・・・・・・。  ただでさえ再会したことと変わってしまったこと、そして過去にあったことで接し方に困っているのに成長した元義妹にドギマギさせられてるのに。 「矯正します」 「それがなにか関係あります? 今のあなたと」  冷たい視線は俺の過去を思い出させて、罪悪感を募らせていく。それでも、義妹とまた会えて嬉しくて。    今の俺たちの関係って義兄弟? それとも元家族? 赤の他人? ノベルアッププラスでも公開。

先輩から恋人のふりをして欲しいと頼まれた件 ~明らかにふりではないけど毎日が最高に楽しい~

桜井正宗
青春
“恋人のふり”をして欲しい。 高校二年の愁(しゅう)は、先輩の『柚』からそう頼まれた。 見知らずの後輩である自分になぜと思った。 でも、ふりならいいかと快諾する。 すると、明らかに恋人のような毎日が始まっていった。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

処理中です...