135 / 139
135≪💀 髑髏ものがたり・7≫
しおりを挟む
新 VARIATIONS*さくら*37(さつき編)
135≪💀 髑髏ものがたり・7≫
イケメン中尉さんが戸惑ったような顔して桜子さんのやや後ろに立った……ところで目が覚めた。
新聞の反応は直ぐには出なかったが、翌週、うちの雑誌が出たころから反応があった。
反応は二種類。
戦死者の首を切って骨格見本のようにした猟奇性と残虐性への表面的な興味。いわゆる怖いもの見たさ。
それと戦争犯罪とまで主張するラディカルな反応。戦闘地域や時期がはっきりしているので、当時のオーストラリアの部隊や兵士まで明らかになった。
オーストラリア政府は、当初は否定していたが、当時部隊にいた兵士が生きていて「本当だった」と証言した。この証言は証拠写真が付いていた。鍋の中で煮られる首と兵士たちの飯盒炊爨のように喜んでいる姿が生々しく写っていた。当然兵士の名前まで分かったが、すでに故人になっていた。
「父がやったこととはいえ、これは死者に対する冒涜です。たいへん残念に思います。父に代わってお詫びします」
年老いた故人の娘さんが涙ながらに謝っていた。
「写真は、野生のノブタを煮ているところ。言いがかりだ!」
という人もいた。
科学技術というものは凄いもので、写真を鮮明にし、鍋の中の首と、頭蓋骨の特徴から90%の確率で同一人物のものであるということが分かり、オーストラリア政府が声明を発表するところまで行った。
あたしは山下公園に来ている。
阿部中尉が「山下公園に行きたい」と夢の中で言ったから。
「ここはね、関東大震災の瓦礫を埋め立てて造った公園なんだよ。子供の頃から、よくここで遊んだもんだ」
阿部中尉が言う。もう目が覚めていても姿が見える。あたしは人が見たら独り言を言っているように見えたかもしれない。
「あんまり嬉しそうなお顔には見えないんですけど、ひょっとして、あたしがやっていることって、余計なことだったですか?」
「……さつきさんや、惣一君には感謝している……」
「なんですか?」
「あれは異常な戦争だった、我々も褒められたことばかりやってきたわけじゃないしね……敵の兵隊を恨む気持ちは、自分にはない」
「そうなんですか……」
「あれは氷川丸だね、アメリカ航路の豪華客船だ」
あやうく「大人二枚」と言うところだった。
二人で氷川丸に乗った。陸軍中尉さんは子供のようにデッキを走り、タラップを上り下りした。
「そうだ、タイタニックごっこをしよう!」
「タイタニックごっこ?」
「ほら、二十世紀の終わりごろに映画になったじゃないか。アメリカでテレビ放送されるのを観ていた」
「案外ミーハーなんですね」
「ME HER? 英語かい?」
「いや、そうじゃなくて……」
案外俗語の説明というのは難しい。
「ああ、思い出した。ミーハーのことか!」
「分かるんですか?」
「ああ、昭和の初めにはあったからね。ある事象に対して(それがメディアなどで取り上げられ)世間一般で話題になってから飛びつくことだ。ミーはみつまめのことで、ハーは林長次郎のことだ」
「林長次郎?」
「ああ、僕らの時代の二枚目スターさ。女の子の好きな、その二つをくっつけてミーハーになったんだ」
「そうなんだ」
「さあ、舳先に行こう」
「あそこ立ち入り禁止ですよ。監視カメラもあるし」
「なあに、五分ほど見えないようにすればいいんだ」
阿部さんの言うことを信じて舳先の方へ。すると、動かないはずの氷川丸が白波を立てて、いっぱいに向かい風を受け大海原を走り始めた。あたしたちは、無邪気にタイタニックごっこをやった。
不思議なことに、映画と同じアングルでスマホに映像が残された。
誰にも見せない、あたしだけの宝物になった。
135≪💀 髑髏ものがたり・7≫
イケメン中尉さんが戸惑ったような顔して桜子さんのやや後ろに立った……ところで目が覚めた。
新聞の反応は直ぐには出なかったが、翌週、うちの雑誌が出たころから反応があった。
反応は二種類。
戦死者の首を切って骨格見本のようにした猟奇性と残虐性への表面的な興味。いわゆる怖いもの見たさ。
それと戦争犯罪とまで主張するラディカルな反応。戦闘地域や時期がはっきりしているので、当時のオーストラリアの部隊や兵士まで明らかになった。
オーストラリア政府は、当初は否定していたが、当時部隊にいた兵士が生きていて「本当だった」と証言した。この証言は証拠写真が付いていた。鍋の中で煮られる首と兵士たちの飯盒炊爨のように喜んでいる姿が生々しく写っていた。当然兵士の名前まで分かったが、すでに故人になっていた。
「父がやったこととはいえ、これは死者に対する冒涜です。たいへん残念に思います。父に代わってお詫びします」
年老いた故人の娘さんが涙ながらに謝っていた。
「写真は、野生のノブタを煮ているところ。言いがかりだ!」
という人もいた。
科学技術というものは凄いもので、写真を鮮明にし、鍋の中の首と、頭蓋骨の特徴から90%の確率で同一人物のものであるということが分かり、オーストラリア政府が声明を発表するところまで行った。
あたしは山下公園に来ている。
阿部中尉が「山下公園に行きたい」と夢の中で言ったから。
「ここはね、関東大震災の瓦礫を埋め立てて造った公園なんだよ。子供の頃から、よくここで遊んだもんだ」
阿部中尉が言う。もう目が覚めていても姿が見える。あたしは人が見たら独り言を言っているように見えたかもしれない。
「あんまり嬉しそうなお顔には見えないんですけど、ひょっとして、あたしがやっていることって、余計なことだったですか?」
「……さつきさんや、惣一君には感謝している……」
「なんですか?」
「あれは異常な戦争だった、我々も褒められたことばかりやってきたわけじゃないしね……敵の兵隊を恨む気持ちは、自分にはない」
「そうなんですか……」
「あれは氷川丸だね、アメリカ航路の豪華客船だ」
あやうく「大人二枚」と言うところだった。
二人で氷川丸に乗った。陸軍中尉さんは子供のようにデッキを走り、タラップを上り下りした。
「そうだ、タイタニックごっこをしよう!」
「タイタニックごっこ?」
「ほら、二十世紀の終わりごろに映画になったじゃないか。アメリカでテレビ放送されるのを観ていた」
「案外ミーハーなんですね」
「ME HER? 英語かい?」
「いや、そうじゃなくて……」
案外俗語の説明というのは難しい。
「ああ、思い出した。ミーハーのことか!」
「分かるんですか?」
「ああ、昭和の初めにはあったからね。ある事象に対して(それがメディアなどで取り上げられ)世間一般で話題になってから飛びつくことだ。ミーはみつまめのことで、ハーは林長次郎のことだ」
「林長次郎?」
「ああ、僕らの時代の二枚目スターさ。女の子の好きな、その二つをくっつけてミーハーになったんだ」
「そうなんだ」
「さあ、舳先に行こう」
「あそこ立ち入り禁止ですよ。監視カメラもあるし」
「なあに、五分ほど見えないようにすればいいんだ」
阿部さんの言うことを信じて舳先の方へ。すると、動かないはずの氷川丸が白波を立てて、いっぱいに向かい風を受け大海原を走り始めた。あたしたちは、無邪気にタイタニックごっこをやった。
不思議なことに、映画と同じアングルでスマホに映像が残された。
誰にも見せない、あたしだけの宝物になった。
0
あなたにおすすめの小説
美人生徒会長は、俺の料理の虜です!~二人きりで過ごす美味しい時間~
root-M
青春
高校一年生の三ツ瀬豪は、入学早々ぼっちになってしまい、昼休みは空き教室で一人寂しく弁当を食べる日々を過ごしていた。
そんなある日、豪の前に目を見張るほどの美人生徒が現れる。彼女は、生徒会長の巴あきら。豪のぼっちを察したあきらは、「一緒に昼食を食べよう」と豪を生徒会室へ誘う。
すると、あきらは豪の手作り弁当に強い興味を示し、卵焼きを食べたことで豪の料理にハマってしまう。一方の豪も、自分の料理を絶賛してもらえたことが嬉しくて仕方ない。
それから二人は、毎日生徒会室でお昼ご飯を食べながら、互いのことを語り合い、ゆっくり親交を深めていく。家庭の味に飢えているあきらは、豪の作るおかずを実に幸せそうに食べてくれるのだった。
やがて、あきらの要求はどんどん過激(?)になっていく。「わたしにもお弁当を作って欲しい」「お弁当以外の料理も食べてみたい」「ゴウくんのおうちに行ってもいい?」
美人生徒会長の頼み、断れるわけがない!
でも、この生徒会、なにかちょっとおかしいような……。
※時代設定は2018年頃。お米も卵も今よりずっと安価です。
※他のサイトにも投稿しています。
イラスト:siroma様
初恋♡リベンジャーズ
遊馬友仁
青春
【第五部開始】
高校一年生の春休み直前、クラスメートの紅野アザミに告白し、華々しい玉砕を遂げた黒田竜司は、憂鬱な気持ちのまま、新学期を迎えていた。そんな竜司のクラスに、SNSなどでカリスマ的人気を誇る白草四葉が転入してきた。
眉目秀麗、容姿端麗、美の化身を具現化したような四葉は、性格も明るく、休み時間のたびに、竜司と親友の壮馬に気さくに話しかけてくるのだが――――――。
転入早々、竜司に絡みだす、彼女の真の目的とは!?
◯ンスタグラム、ユ◯チューブ、◯イッターなどを駆使して繰り広げられる、SNS世代の新感覚復讐系ラブコメディ、ここに開幕!
第二部からは、さらに登場人物たちも増え、コメディ要素が多めとなります(予定)
【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません
竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──
ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜
遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった!
木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。
「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」
そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
昔義妹だった女の子が通い妻になって矯正してくる件
マサタカ
青春
俺には昔、義妹がいた。仲が良くて、目に入れても痛くないくらいのかわいい女の子だった。
あれから数年経って大学生になった俺は友人・先輩と楽しく過ごし、それなりに充実した日々を送ってる。
そんなある日、偶然元義妹と再会してしまう。
「久しぶりですね、兄さん」
義妹は見た目や性格、何より俺への態度。全てが変わってしまっていた。そして、俺の生活が爛れてるって言って押しかけて来るようになってしまい・・・・・・。
ただでさえ再会したことと変わってしまったこと、そして過去にあったことで接し方に困っているのに成長した元義妹にドギマギさせられてるのに。
「矯正します」
「それがなにか関係あります? 今のあなたと」
冷たい視線は俺の過去を思い出させて、罪悪感を募らせていく。それでも、義妹とまた会えて嬉しくて。
今の俺たちの関係って義兄弟? それとも元家族? 赤の他人?
ノベルアッププラスでも公開。
先輩から恋人のふりをして欲しいと頼まれた件 ~明らかにふりではないけど毎日が最高に楽しい~
桜井正宗
青春
“恋人のふり”をして欲しい。
高校二年の愁(しゅう)は、先輩の『柚』からそう頼まれた。
見知らずの後輩である自分になぜと思った。
でも、ふりならいいかと快諾する。
すると、明らかに恋人のような毎日が始まっていった。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる