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63『豊盃 茶姫の陣営』
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鳴かぬなら 信長転生記
63『豊盃 茶姫の陣営』信長
門衛に来意を告げると、入ってすぐのピロティーのようなところで待たされた。
塀が高いうえに植栽が豊かなので、外から見当をつけることはできなかったが、入ってもよく分からない。
「学校のようでもあるし……城塞のようでもあるし……」
「刑務所のようでも、こわもて辺境伯の館のようでもあるな……」
ここに立っている限り、この施設の中心部が見えない。尖塔らしきものも伺えないので宗教施設ではないようだ。寺にしろ教会にしろ、坊主も大名も同じように高さ大きさで権威を示したがるものだからな。
「お待たせしました、秘書官の劉備忘録と申します。これより茶姫将軍のところへご案内いたします」
五分ほど待たされて、現れたのは、蘭丸を思わせる美少年だ。小具足姿で腋に週刊誌ほどの帳面を数冊抱えている。袖口が黒ずんでいるところを見ると、今まで帳付けでもやっていたのだろう。
「これはお恥ずかしい、仕事が溜まっておりましたので身を構う暇もありませんでした」
こいつ、視線だけで俺のチェックを見抜きおった。
「どうぞこちらへ」
建物と植栽が二度入れ替わって、やっと二階建て三階建ての建物群が現れる。
「え、こっちなの?」
シイ(市)は奥の三階建てだと見当を付けていたようで、二階建ての手前で備忘録が曲がってタタラを踏む。
「はい、本日はこちらを使っておられます」
目配せされた番兵が観音開きの戸を開けて、二度角を曲がって入った部屋は地図と書類で一杯であった。
「あんたの部屋みたい」
「そうか」
あいまいに返事をしたが、俺も思う。
「将軍、お連れしました」
なんで、書類の山に声を掛ける……と思ったら、その向こうから、これも、和風に言えば赤地錦の直垂の小具足姿で茶姫がメガネ型ルーペを掛けたまま顔を出した。
「おう、ご苦労であった」
「書類は、ここに置いておきます」
「いや、直ぐに目を通す。ダメ出しに呼んでは二度手間だからな。二人は、しばらく待っていてくれ」
茶姫に帳面を渡すと、机上の書類の山を三つほど移動させる備忘録。そこに、自然な流れで帳面を広げる茶姫。その流れのままに、椅子を置いて、主の尻を降ろさせ、二歩ばかり離れたところで蹲踞する備忘録。
おお……
シイが小さく歓声をあげる。無理もない、まるで、主従で舞を舞っているようなのだからな。
それに、チラリと見えた帳面の字は、上下二段組の新書の活字のようだ。注釈の字は、それよりもポイントが小さく、なるほど、メガネ型ルーペでも無ければ読めないだろう。
「質問が二つ」
「ハ」
「近衛と娘子憲兵に二名づつ欠員あるままなのは何故か? また、炊飯婆の定員が二名超えているのは何故か?」
「はい、お二人を配置するため、近衛、娘子いずれにでも編入できるように開けてあります。そのために、近衛・娘子合格者二名を炊飯婆に回しました」
「近衛・娘子合格者をか?」
「はい、これで辞退するような者は近衛や娘子憲兵には配置できません」
「この二人の成績は?」
「成績上位一番と二番であります」
「よし、三十分以内に決定する」
「承知」
返事をするや否や、備忘録は、茶姫と同じ椅子を俺たちのために置いて出て行った。
「さあ、やっと話ができるなあ!」
勢いよくこちらに向き直った茶姫。
あるで向日葵が不意打してきたような笑顔であったぞ。
☆ 主な登場人物
織田 信長 本能寺の変で討ち取られて転生
熱田 敦子(熱田大神) 信長担当の尾張の神さま
織田 市 信長の妹
平手 美姫 信長のクラス担任
武田 信玄 同級生
上杉 謙信 同級生
古田 織部 茶華道部の眼鏡っこ
宮本 武蔵 孤高の剣聖
二宮 忠八 市の友だち 紙飛行機の神さま
今川 義元 学院生徒会長
坂本 乙女 学園生徒会長
曹茶姫 魏の女将軍
63『豊盃 茶姫の陣営』信長
門衛に来意を告げると、入ってすぐのピロティーのようなところで待たされた。
塀が高いうえに植栽が豊かなので、外から見当をつけることはできなかったが、入ってもよく分からない。
「学校のようでもあるし……城塞のようでもあるし……」
「刑務所のようでも、こわもて辺境伯の館のようでもあるな……」
ここに立っている限り、この施設の中心部が見えない。尖塔らしきものも伺えないので宗教施設ではないようだ。寺にしろ教会にしろ、坊主も大名も同じように高さ大きさで権威を示したがるものだからな。
「お待たせしました、秘書官の劉備忘録と申します。これより茶姫将軍のところへご案内いたします」
五分ほど待たされて、現れたのは、蘭丸を思わせる美少年だ。小具足姿で腋に週刊誌ほどの帳面を数冊抱えている。袖口が黒ずんでいるところを見ると、今まで帳付けでもやっていたのだろう。
「これはお恥ずかしい、仕事が溜まっておりましたので身を構う暇もありませんでした」
こいつ、視線だけで俺のチェックを見抜きおった。
「どうぞこちらへ」
建物と植栽が二度入れ替わって、やっと二階建て三階建ての建物群が現れる。
「え、こっちなの?」
シイ(市)は奥の三階建てだと見当を付けていたようで、二階建ての手前で備忘録が曲がってタタラを踏む。
「はい、本日はこちらを使っておられます」
目配せされた番兵が観音開きの戸を開けて、二度角を曲がって入った部屋は地図と書類で一杯であった。
「あんたの部屋みたい」
「そうか」
あいまいに返事をしたが、俺も思う。
「将軍、お連れしました」
なんで、書類の山に声を掛ける……と思ったら、その向こうから、これも、和風に言えば赤地錦の直垂の小具足姿で茶姫がメガネ型ルーペを掛けたまま顔を出した。
「おう、ご苦労であった」
「書類は、ここに置いておきます」
「いや、直ぐに目を通す。ダメ出しに呼んでは二度手間だからな。二人は、しばらく待っていてくれ」
茶姫に帳面を渡すと、机上の書類の山を三つほど移動させる備忘録。そこに、自然な流れで帳面を広げる茶姫。その流れのままに、椅子を置いて、主の尻を降ろさせ、二歩ばかり離れたところで蹲踞する備忘録。
おお……
シイが小さく歓声をあげる。無理もない、まるで、主従で舞を舞っているようなのだからな。
それに、チラリと見えた帳面の字は、上下二段組の新書の活字のようだ。注釈の字は、それよりもポイントが小さく、なるほど、メガネ型ルーペでも無ければ読めないだろう。
「質問が二つ」
「ハ」
「近衛と娘子憲兵に二名づつ欠員あるままなのは何故か? また、炊飯婆の定員が二名超えているのは何故か?」
「はい、お二人を配置するため、近衛、娘子いずれにでも編入できるように開けてあります。そのために、近衛・娘子合格者二名を炊飯婆に回しました」
「近衛・娘子合格者をか?」
「はい、これで辞退するような者は近衛や娘子憲兵には配置できません」
「この二人の成績は?」
「成績上位一番と二番であります」
「よし、三十分以内に決定する」
「承知」
返事をするや否や、備忘録は、茶姫と同じ椅子を俺たちのために置いて出て行った。
「さあ、やっと話ができるなあ!」
勢いよくこちらに向き直った茶姫。
あるで向日葵が不意打してきたような笑顔であったぞ。
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