「きみ」を愛する王太子殿下、婚約者のわたくしは邪魔者として潔く退場しますわ

間瀬

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11 お昼休みのタンペット

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 さあ、お昼休みになりましたわ。
 決戦の時間ですわ。
 今回こそは泣かず、しっかりとお二人の姿を見届けて見極めて参りますわ。
 では、まずは食堂に直行、ですわね!
 お腹すきましたわ……今日のお昼ごはんデジュネはなんでしょう……楽しみですわぁ……お腹すきましたわぁ~……。

「初めてお目にかかります、ギーズ公爵令嬢! コリニー家のテオドールと申します! お見知りおきください!」

 大きな声とともに、目の前でぱっと頭が深く下げられましたわ。
 ……昨日に続いて、今日もですの……?
 食堂は、出会いの場ではないはずですのに……これは、お昼ごはんデジュネの妨害――宣戦布告と受け取ってもよろして……?

「ごきげんよう。初めてお目にかかります、アリアンヌ=マルゼリアスティーナ・ド・ギーズと申しますわ。以後、お見知りおきくださいまし」

 軽く下げた頭を上げますと――あら……今朝の親切な方々のうちの一人ですわね?
 ちょうどよろしいですわ。

「コリニー伯爵子息、今朝はありがとう存じましたわ」
「いえ、あれくらいは人として当然のことです! あ、そういえばっ」

 抑えきれないように一歩前に足を踏み出し――かわいいですわ!
 コリニー伯爵子息は、癒し系の方でしたのねっ。

「ギーズ公爵令嬢、非常に乗馬がお上手なんですねっ。びっくりしました、尊敬してます!」
「……え、えぇ?」

 ど、どういうことでございますの?

「馬と一体化したかのような騎乗、駆歩ガロップでも崩れない美しい姿勢、何より、馬の負担を最小限に抑えるあの技術っ。どれをとっても素晴らしいんです!」
「い、言うほどのものではございませんわ。乗馬は貴族令嬢の嗜みでしてよ」
「そういうレベルではないんです!」

 これでもまだ納得してくださいませんの?!

「そうだ、ギーズ公爵令嬢、僕にぜひ乗馬を教えてくだ」
「コリニー伯爵子息? 少々時間をもらってもいいかい?」

 ぁ……なんてタイミングの悪いときに……。

「ぅえ、お、王太子殿下ぁ?!」

 あぁ……今日もなんて麗しいのでしょう……。
 ステンドグラスから差し込む光に浮かぶ、精悍で端正で……彫刻よりも整った横顔。
 艷やかに輝く、ホワイトブロンドの髪。
 すべてを見透かすようかのに澄んだ、思慮深いヴェールの瞳。
 あまりの美しさに対する感動と、愛おしさで……もう、胸がいっぱいで、息もできませんわ……。

「アリア」

 ハッ、わたくしとしたことが。
 ダメですわ、名門ギーズ家の令嬢としての意識が足りていませんわ。

「ごきげんよう、ラファエル王太子殿下」
「……は?」

 なんですの、急に低い声をお出しになって。
 ――って、え、恐いですわ、表情の抜け落ちた顔と、あふれ出る威圧感が……。
 絶対怒っていらっしゃいますわ。
 どうしてですの、わたくしが何かいたしましたの?!

「コリニー伯爵子息、食事をともにしようか。話はその時するから」
「しょ、承知いたしました! ギーズ公爵令嬢、失礼いたしますっ」

 シャロウン男爵令嬢含めた御三方は、食堂の奥へと行ってしまわれましたわ。
 ……まるでタンペット、ですわね……。
 結局、何がしたかったので――って、失敗しましたわっ!?
 ラファエル王太子殿下とシャロウン男爵令嬢のお二人のこと、きちんと見極めるどころか見届けることすらできませんでしたわ。
 わたくしとしたことが、何たる失態を……!
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