「きみ」を愛する王太子殿下、婚約者のわたくしは邪魔者として潔く退場しますわ

間瀬

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13 シャロウン家の過去と今

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 わたくしとラファエル殿下の婚約は、全くの政略によって結ばれたものと聞き及んでおりますわ。
 婚約が成立したのは、わたくしが六歳、ラファエル王太子殿下が七歳の頃でしたわ。
 しかし、婚約者としての顔合わせが行われたのは、それから四年も後のこと。
 その期間中、王都では様々な陰謀策略や権謀術数けんぼうじゅっすうがはびこっていて、とても顔合わせどころではなかったそうですの。
 幸いにも、一触即発の危険な状況に幼子おさなごを放り込むほど、ギーズ家もブルボン家も鬼畜ではございませんでしたので……。
 わたくしはギーズ公領のお城、ラファエル王太子殿下は王城で、外部との接触を極力減らして安全を確保されておりました。

 後から聞いたところによりますと、ラファエル王太子殿下の婚約者候補には、名門コンデ家のご令嬢も含まれていらっしゃったそうですわ。
 そこから色々あって――この部分は、どんなにお願いしても誰一人として教えてくださらないのですが――婚約者の座にわたくしが収まったんですの。
 けれど、やはり選ばれなかった家、特に伯爵以下が諦めきれずに姦計詭策を講じたようでして、命を狙われたことも何度もあったそうですわ。
 全く覚えておりませんけれども。

「お嬢様、姉君がお話をしたいとのことです」
「お通ししてくださいまし」

 夜ごはんの後に来訪したマルギュお姉様は、いつもと同じように甘い香りを振りまいていらっしゃいますわ。
 けれども、どこかお疲れのようで、普段よりもお顔の色がよろしくないんですの。

「マルギュお姉様、何かあったんですの?」
「……アリアは、本当に聡い子ねぇ……」

 疲れの滲む、気だるげなお声ですわ。
 寝不足といった御様子でもございませんので――きっと精神的なものですわね。

「最近、シャロウン家と関わりはあったかしら?」
「……ええ。中等学園に在学していらっしゃる双子の方々と、お話をいたしましたわ」

 こみ上げる感情を覆い隠すかのように、マルギュお姉様は扇子を広げましたわ。
 そのまましばらく思案げなお顔をしていらっしゃいましたが、数秒の後、再び口を開かれましたの。

「シャロウン家は色々と不透明な部分も、悪いお話も多いのよ」

 同意を求めているような雰囲気ではございませんので、黙して続きに耳を傾けますわ。

「そして、これはアリアには初めて話すのだけれど――あなたとラファエル王太子殿下の婚約に、水面下で抵抗していた家でもあるのよ」

 そ、れは……。
 予想外の内容に、軽く目を見張ってしまいましたわ。
 わたくしの記憶によれば、シャロウン家の叙爵には我がギーズ家が大きく貢献していたはずですもの。

「あの家は、子々孫々末代まで云々といったことは一切しない――各個人の自立した風潮が強いのよ。そのくせ、妙なところで結束が固いものだから厄介なのよねぇ……」
「妙なところで結束が固い、ですの?」
「ぁ……」

 マルギュお姉様……自身の失敗を悟らせるような顔はしないでくださいませ。
 猫かぶりを教えてくださったのはマルギュお姉様だというのに、教師ができていないようではよろしくないと思いますわ。

「それは、わたくしの方の話よ。少なくとも今は、あなたには関係ないわ」

 正直、このような雑な説明では納得しかねるのですけれども――とりあえずはこれで妥協いたしましょう。

「何も起こらなければよろしいのですけれども……」
「まあ、望み薄でしょうね……もう既に始まっているようだもの……」

 未来は、常に予測不可能なものですわ。
 けれど、確実に言えることは――これは、わたくしたちだけではなく「家」をも巻き込むだろうということですわ。
 そして、おそらく、国全体にも波紋が広がるんでしょうねぇ……。
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