14 / 30
14 ノブレス・オブリージュ
しおりを挟む
本日は木曜日。
「小宮廷」とも称されるヴェルサイユ中等学園では、宮廷での活動に則り、毎日様々な行事などを開いているのですわ。
わたくしはギーズ家の令嬢ですので、それを取り仕切るのが、暗黙の、ではございますが、義務ですの。
「夏は食堂が暑くなるため、窓を増やすなどの対応策を講じてほしいとの意見がありました」
「デストレ侯爵子息、同じような意見は音楽室などからも寄せられているのよ。全てを改装していたら、とても予算が足りないわ」
「まあ、優先順位からいえば、利用者も利用頻度も最も高い食堂ですわね。ボワセロー侯爵令嬢、その点においてはどう考えていらっしゃいますの?」
「たしかに食堂も大切でしょう。ですが、音楽室の要望に関しては長年寄せられていながらも解決されていな」
「アリアンヌ様!」
あら、珍しいお客様がいらっしゃいましたわね。
学園の運営に関して討論するこのサロンには、普段はいらっしゃらないのに。
どうなさったのでしょう、ラファエル王太子殿下のこともあって、少々不安ですわ……。
「シャロウン男爵令嬢、ごきげんよう」
「ご……ごきげんよう!」
まぁ……!
シャロウン男爵令嬢が挨拶を返してくださいましたわっ。
挨拶が無視されてしまうのは虚しいですもの、嬉しくてたまりませんわぁ。
「それから、え~っと……」
なんですの、もじもじなさって。
もっと背筋を伸ばして自信を見せてくださいまし。
「そのぉ……ありがとうございました!」
お礼……思い当たりませんわね、わたくし、何か良いことでもしましたの?
とりあえず首を傾げ、続きを促してみましたわ。
「昨日の朝のことです。助かりました」
昨日の朝……あぁ、あの、廊下をともに走ったことですの?!
たったあれしきのことでお礼をおっしゃりにいらっしゃるなんて――なんて律儀な方でしょう。
正直、見直しましたわ。
「お礼を言われるほどのことではございませんわ。いわば、高貴なる者の義務ですもの」
「はぃ……?」
あら、もしかして。
「高貴なる者の義務、ご存じないの?」
「知っていますが……それで片付けられるほどのことなのだと、驚きました。わたしは今まで、見返りのあることしか行ってきませんでしたから」
「少々認識が間違っていますわよ」
怪訝そうな顔ですわね。
「わたくしたち貴族は、平民の方々に常日頃助けられて存在しているのですわ。それに対してわたくしたちが同じように――いえ、その人数差をおぎなうため、同等以上に尽くす義務があるんですの。そして」
ギーズ家があるのは、平民の方々のお力だけではございませんわ。
「自分よりも低い階級の方々を守り、導き、時には庇う。これは、高位貴族に――我がギーズ一門に生まれた以上は、必ず行わなければならないこと、生涯にわたっての責務なのですわ」
「ですが、あの――罰則を、受けられたと……」
あぁ、そんなことを気にしていらっしゃったんですの?
「先生方の資料のまとめのお手伝いというものは学びが多いのですわ。外聞が悪いので罰則としては受けたくはございませんが、毎日行いたいくらいでございますわ」
「そ、うですか……」
なぜそこで頷かないんですの?
普通、資料の内容がとても興味深いので、もっと行いたいと考えませんこと?
「アリアンヌ様!」
「はい……?」
急に元気になりましたわね、シャロウン男爵令嬢……。
「わたしは負けません、絶対すぐに追いついてみせます!」
「え、えぇ……?」
「失礼しました!」
……?
何が何やら、わかりませんわ……。
これは、突然宣戦布告された、という認識でよろしくて?
わたくし、そもそもなぜシャロウン男爵令嬢に競争相手と認識されているのかが理解できていないのですけれども……。
やはり、シャロウン男爵令嬢は嵐の如きお方でしたわ。
意外と素直なお方でもございましたけれども。
「小宮廷」とも称されるヴェルサイユ中等学園では、宮廷での活動に則り、毎日様々な行事などを開いているのですわ。
わたくしはギーズ家の令嬢ですので、それを取り仕切るのが、暗黙の、ではございますが、義務ですの。
「夏は食堂が暑くなるため、窓を増やすなどの対応策を講じてほしいとの意見がありました」
「デストレ侯爵子息、同じような意見は音楽室などからも寄せられているのよ。全てを改装していたら、とても予算が足りないわ」
「まあ、優先順位からいえば、利用者も利用頻度も最も高い食堂ですわね。ボワセロー侯爵令嬢、その点においてはどう考えていらっしゃいますの?」
「たしかに食堂も大切でしょう。ですが、音楽室の要望に関しては長年寄せられていながらも解決されていな」
「アリアンヌ様!」
あら、珍しいお客様がいらっしゃいましたわね。
学園の運営に関して討論するこのサロンには、普段はいらっしゃらないのに。
どうなさったのでしょう、ラファエル王太子殿下のこともあって、少々不安ですわ……。
「シャロウン男爵令嬢、ごきげんよう」
「ご……ごきげんよう!」
まぁ……!
シャロウン男爵令嬢が挨拶を返してくださいましたわっ。
挨拶が無視されてしまうのは虚しいですもの、嬉しくてたまりませんわぁ。
「それから、え~っと……」
なんですの、もじもじなさって。
もっと背筋を伸ばして自信を見せてくださいまし。
「そのぉ……ありがとうございました!」
お礼……思い当たりませんわね、わたくし、何か良いことでもしましたの?
とりあえず首を傾げ、続きを促してみましたわ。
「昨日の朝のことです。助かりました」
昨日の朝……あぁ、あの、廊下をともに走ったことですの?!
たったあれしきのことでお礼をおっしゃりにいらっしゃるなんて――なんて律儀な方でしょう。
正直、見直しましたわ。
「お礼を言われるほどのことではございませんわ。いわば、高貴なる者の義務ですもの」
「はぃ……?」
あら、もしかして。
「高貴なる者の義務、ご存じないの?」
「知っていますが……それで片付けられるほどのことなのだと、驚きました。わたしは今まで、見返りのあることしか行ってきませんでしたから」
「少々認識が間違っていますわよ」
怪訝そうな顔ですわね。
「わたくしたち貴族は、平民の方々に常日頃助けられて存在しているのですわ。それに対してわたくしたちが同じように――いえ、その人数差をおぎなうため、同等以上に尽くす義務があるんですの。そして」
ギーズ家があるのは、平民の方々のお力だけではございませんわ。
「自分よりも低い階級の方々を守り、導き、時には庇う。これは、高位貴族に――我がギーズ一門に生まれた以上は、必ず行わなければならないこと、生涯にわたっての責務なのですわ」
「ですが、あの――罰則を、受けられたと……」
あぁ、そんなことを気にしていらっしゃったんですの?
「先生方の資料のまとめのお手伝いというものは学びが多いのですわ。外聞が悪いので罰則としては受けたくはございませんが、毎日行いたいくらいでございますわ」
「そ、うですか……」
なぜそこで頷かないんですの?
普通、資料の内容がとても興味深いので、もっと行いたいと考えませんこと?
「アリアンヌ様!」
「はい……?」
急に元気になりましたわね、シャロウン男爵令嬢……。
「わたしは負けません、絶対すぐに追いついてみせます!」
「え、えぇ……?」
「失礼しました!」
……?
何が何やら、わかりませんわ……。
これは、突然宣戦布告された、という認識でよろしくて?
わたくし、そもそもなぜシャロウン男爵令嬢に競争相手と認識されているのかが理解できていないのですけれども……。
やはり、シャロウン男爵令嬢は嵐の如きお方でしたわ。
意外と素直なお方でもございましたけれども。
134
あなたにおすすめの小説
婚約破棄寸前、私に何をお望みですか?
みこと。
恋愛
男爵令嬢マチルダが現れてから、王子ベイジルとセシリアの仲はこじれるばかり。
婚約破棄も時間の問題かと危ぶまれる中、ある日王宮から、公爵家のセシリアに呼び出しがかかる。
なんとベイジルが王家の禁術を用い、過去の自分と精神を入れ替えたという。
(つまり今目の前にいる十八歳の王子の中身は、八歳の、私と仲が良かった頃の殿下?)
ベイジルの真意とは。そしてセシリアとの関係はどうなる?
※他サイトにも掲載しています。
婚約破棄されたので田舎で猫と暮らします
たくわん
恋愛
社交界の華と謳われた伯爵令嬢セレスティアは、王太子から「完璧すぎて息が詰まる」と婚約破棄を告げられる。傷心のまま逃げるように向かったのは、亡き祖母が遺した田舎の小さな屋敷だった。
荒れ果てた屋敷、慣れない一人暮らし、そして庭に住みついた五匹の野良猫たち。途方に暮れるセレスティアの隣には、無愛想で人嫌いな青年医師・ノアが暮らしていた。
「この猫に構うな。人間嫌いだから」
冷たく突き放すノアだが、捨て猫を保護し、傷ついた動物を治療する彼の本当の姿を知るうちに、セレスティアの心は少しずつ惹かれていく。
猫の世話を通じて近づく二人。やがて明かされるノアの過去と、王都から届く縁談の催促。「完璧な令嬢」を脱ぎ捨てた先に待つ、本当の自分と本当の恋——。
愛しの第一王子殿下
みつまめ つぼみ
恋愛
公爵令嬢アリシアは15歳。三年前に魔王討伐に出かけたゴルテンファル王国の第一王子クラウス一行の帰りを待ちわびていた。
そして帰ってきたクラウス王子は、仲間の訃報を口にし、それと同時に同行していた聖女との婚姻を告げる。
クラウスとの婚約を破棄されたアリシアは、言い寄ってくる第二王子マティアスの手から逃れようと、国外脱出を図るのだった。
そんなアリシアを手助けするフードを目深に被った旅の戦士エドガー。彼とアリシアの逃避行が、今始まる。
【短編】誰も幸せになんかなれない~悪役令嬢の終末~
真辺わ人
恋愛
私は前世の記憶を持つ悪役令嬢。
自分が愛する人に裏切られて殺される未来を知っている。
回避したいけれど回避できなかったらどうしたらいいの?
*後編投稿済み。これにて完結です。
*ハピエンではないので注意。
【完結】仕方がないので結婚しましょう
七瀬菜々
恋愛
『アメリア・サザーランド侯爵令嬢!今この瞬間を持って貴様との婚約は破棄させてもらう!』
アメリアは静かな部屋で、自分の名を呼び、そう高らかに宣言する。
そんな婚約者を怪訝な顔で見るのは、この国の王太子エドワード。
アメリアは過去、幾度のなくエドワードに、自身との婚約破棄の提案をしてきた。
そして、その度に正論で打ちのめされてきた。
本日は巷で話題の恋愛小説を参考に、新しい婚約破棄の案をプレゼンするらしい。
果たしてアメリアは、今日こそ無事に婚約を破棄できるのか!?
*高低差がかなりあるお話です
*小説家になろうでも掲載しています
【短編】婚約解消を望もうとも、婚約者から言葉を聞かない限りは応じませんわ
あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
伯爵令嬢のディアナ・アルヴィエは実家と絶縁し、婚約者であるアーレントの実家である辺境領の屋敷で暮らしていた。魔物討伐や結界の管理などを担う即戦力としていたディアナは、アーレンが成人したら結婚する。
はずだった。
王都に突如現れた黒竜討伐へと赴いた婚約者アーレンと様の部下だと名乗る使いから婚約解消の知らせが届く。それと同時に辺境地の結界に亀裂が入り、答え合わせは後回しとなるのだが、同時にカルト集団の奇襲を受けてしまい──!?
両親に愛されなかった令嬢が幸せを受け入れるまでのお話。
年下情緒不安定ヤンデレ騎士×自尊心の低い年上大魔法使いのお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる