王族に転生した俺は堕落する

カグヤ

文字の大きさ
9 / 71

第9話 信頼

しおりを挟む
 俺は光の妖精とやらが見えることをお兄様に相談してみる事にした。頭脳明晰で博識だと名高いお兄様なら光の妖精リンネとやらの事も知っているかもしれない。
「お兄様。ちょっと相談が……」

「何だい。ジーク」
 11歳にしてこの色気は何なのだろうか。同性の俺から見ても惹かれる何かがこのお兄様にはあるな。

「実は最近、光の妖精リンネとやらが現れまして……」
 俺は現状を切り出そうとした。

「えっ?! 何だって? 光の妖精リンネ? それは凄い!! 成こ……いや、どういう事か、詳しく聞かせてくれないかい」
 いつものお兄様と違い少しテンションが上がったように感じたが、すぐにいつもの穏やかなお兄様に戻られる。

「実は……」
 俺は、光魔法が使える事と、それには光の妖精リンネが手を貸してくれているが、他の人には見えないということを伝えた。
「素晴……いや、ちょっと光魔法を使ってくれるかい?」
 俺は【ライト】と頭の中で念じて手の中に光の玉を作る。

「今、詠唱をしてなかったように思うんだけど、それも光の妖精のおかげかい?」

「分からないです。頭の中で魔法をイメージして念じれば使えます」

「凄いね。きっと光の妖精が力を貸してくれているんだよ。普通は特定の個人に取り憑いたりはしないから、これは魔法界の常識を塗り替える事だよ」
 お兄様に褒められるとは、これは凄いことのようだな。流石は転生チートというやつですか。
「じゃあ、あまり気にする事はないんですか?」

「そうだね……いや、一つ問題があるかもね」
 顎に手をやり何かを考えているご様子。俺は不安になる。

「何かあるんですか? 寿命が縮むとか?」
 もしくは不細工になるとか……

「聞いた限りではその光の妖精は危険がなさそうだね。それよりもジークが光の妖精を宿している事を他の人に知られるのは不味いかもしれないね」

「どうしてですか?」

「さっきも言ったように今までにその身に妖精を宿すなんて偉業を成し得た人はいないんだ。だから、この事が知られてしまうと研究機関に送られて人体実験をさせられてしまうかもしれない。最悪死んでしまう事も……」
 何それ怖すぎるんだけど……

「でも自分は王族だって聞いてますよ。そんな事にはならないんじゃ」
 王族の権力を使う時ですよ。

「確かに王族だからひどい扱いは受けないかもしれないけど、最悪は想定しておかなければならない。それに、父、つまりこの国の王様の子供は僕達二人だけというわけではないんだ。今は8人の妻を娶っているからね。それぞれに子供がいる上に、これからも増えていくと思うから王様にとって子供1人の価値がどれほどあるのかは分からない。魔法技術の発展による利益が子供1人よりも価値が高いと判断する可能性もゼロとは言い切れないからね」

「そ、そんなに妻がいるんですか?」
 うらやま……なんてけしからんのだ。お母様みたいに美人な妻がいるというのに他に7人もいるだと。この世界の価値観はハーレムを容認しているという事か。

「そうだね。僕達の国は領地をどんどんと拡大していっているからね。その支配した領地との結びつきのための政略結婚とかで増えているみたいだよ。それがこれからも続くと考えると、まだまだ増えるんじゃないのかな」

「そうですか……」
 となると、国を発展させるために子供一人を犠牲にするという事も十分に考えられるという事か……そういう決断を下せるように今まで会った事がないのかもしれない。俺が不安そうな顔をすると、それをお兄様が察してくれた。

「けど大丈夫だよ。僕は誰にもこの事を言うつもりはないからね。ジークもこの事は他の誰にも言っちゃいけないよ。黙って今まで通り普通に暮らせばいいんだよ」
 お兄様!! 流石です。信用できるのはお兄様だけですね。
「ありがとうございます。お兄様!!」

「気にしなくていいよ。2人だけの秘密だね。ふふふ。あっ、でも何かあったら、僕だけには教えてよ。ジークの身に何かがあったら大変だからね」

「分かりました!! お兄様!!」
 お兄様に任せておけば大丈夫だな。うむ、お兄様に相談して良かった。何かあれば力になってくれる事だろう。
 その後、光の妖精が出た時の事などをさらに詳しくお兄様に話すことになった。


 閑話休題


 お兄様は実地訓練とやらに行ってしまって、またもや2、3日帰ってこない。
 俺がお兄様に相談してから、前にもまして俺の事を気にしてくれるようになった。俺の体を心配してか、前にも増していろいろと食べ物を持って帰ってくれる。全部俺のためという事で、その食材は全て俺が食べている。俺の体を心配してくれるのは有難いが、ぽっちゃり体型から抜け出すことができぬ。ぐぬぬ。
  
 俺はソファーに寝ころび、明日から運動するかと考えていると、窓の外に庭先の門のところで一人の少女がうろうろしているのが見えた。身長からして自分と同じ年くらいだろうか。俺には同年代の知り合いがいないのでその少女に興味が湧いた。
 自ら応対するために、ソファーから立ち上がり玄関を飛び出した。そして、庭を囲っている柵の向こうでうろうろしている少女に声をかけた。

「何か用?」

「あっ、あの、ここにヨハネス様はいらっしゃいますでしょうか?」
 びくっと驚いた少女は両手を胸のあたりに構えたままお兄様の事を尋ねてきた。お兄様のファンか何かですかね。あの容姿なのだからきっとおモテになっているに違いない。こんな小さな少女までメロメロなんですね。

「今、ヨハン兄様は出かけてていないよ。2、3日後には戻ってくると思うけど」

「2、3日……」
 すぐに戻らないことを聞くと明らかにテンションが下がってしまった。今にも泣き出しそうな雰囲気すらある。
「ど、どうしたの? 何かヨハン兄様に伝える事があるなら伝えておくよ」
 少女が泣き出しそうなのを見て俺は少々動揺してしまった。

「い、いえ……2、3日後では……」
 どうやら2、3日後では駄目なようである。ふと気付いたのは、最初から両手の位置が胸のあたりで固定されているので気になった。そこでよく見るとその両手の中には小鳥が横たわっているように見えた。

「その鳥、怪我してるの?」

「は、はい。それでヨハネス様の魔法なら治せるかもしれないと思ってここまで来たのですが……」
 そういえばお兄様は【聖なる癒しホーリー・ヒール】なる魔法を使っていたな。あれは高位の光魔法らしく使い手自体貴重な存在のようである。流石はお兄様だな。お兄様がその魔法を使えるのは有名なのかもしれないな。

 しかし、待てよ。光の妖精であるリンネの力を借りる事ができる俺ならば【聖なる癒しホーリー・ヒール】を使うことができるかもしれない。基本家でゴロゴロとしかしていない俺はそんな回復魔法を使う機会等なかったので、可能かどうか等試したことがない。

「ちょっとその鳥見せてもらってもいい?」

「は、はい」

 俺は鳥に両手を翳して、昔お兄様が俺にしてくれた【聖なる癒しホーリー・ヒール】を思い出しながら再現を試みる。

「はわわ~」
 少女は目をぱちくりさせながら手の中の鳥を見つめる。
「ピー、ピー」
 手の中でぐったりしていた小鳥が元気よく囀りだす。どうやら成功したようだな。

「グーちゃん!! 良かったです。ありがとうございます!!」

 涙で濡れるつぶらな瞳で俺の方を見つめて感謝を述べる。

「良かったね」

「はい!! さっきヨハン兄様って……もしかしてヨハネス様の弟ですか?」

「そうだよ。ジークフリート=ハイゼンベルクって名前だよ。ジークって呼んでくれていいよ」
 歳の近い初めての友達ができるかもしれん。少し赤みがかった髪の毛は肩ほどにかかり、どこかリスのような小動物をイメージさせるその少女は将来可愛らしく成長する事を感じさせる。

「はわわ~。初めまして。私はソフィア=ハイゼンベルクっていいます。ジークお兄様って呼んでもいいですか? 私の事はソフィーって呼んでください」

「えっ?! あっ、うん」
 さっきまで泣いていた顔はパッと明るい笑顔を取り戻し、一礼するとその場から走り去って行った。
「あっ、ちょっと」
 俺は呼び止めようとしたが、俺の声は聞こえてないようでソフィーは立ち止まらなかった。俺はその後ろ姿を見ていると、その姿は少し離れたところにある隣の屋敷の中へと入って行った。

 どうやら隣の屋敷に住んでいるようである。お兄様が言っていた8人の妻の内の1人がそこに住んでいるという事か……お母様に聞くのは何か憚られるので、メイドかお兄様にでも詳しく聞かねばなるまい。

 こうして俺には友達ではなく、妹ができたのである。



 
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

ファンタジーは知らないけれど、何やら規格外みたいです 神から貰ったお詫びギフトは、無限に進化するチートスキルでした

渡琉兎
ファンタジー
『第3回次世代ファンタジーカップ』にて【優秀賞】を受賞! 2024/02/21(水)1巻発売! 2024/07/22(月)2巻発売!(コミカライズ企画進行中発表!) 2024/12/16(月)3巻発売! 2025/04/14(月)4巻発売! 応援してくださった皆様、誠にありがとうございます!! 刊行情報が出たことに合わせて02/01にて改題しました! 旧題『ファンタジーを知らないおじさんの異世界スローライフ ~見た目は子供で中身は三十路のギルド専属鑑定士は、何やら規格外みたいです~』 ===== 車に轢かれて死んでしまった佐鳥冬夜は、自分の死が女神の手違いだと知り涙する。 そんな女神からの提案で異世界へ転生することになったのだが、冬夜はファンタジー世界について全く知識を持たないおじさんだった。 女神から与えられるスキルも遠慮して鑑定スキルの上位ではなく、下位の鑑定眼を選択してしまう始末。 それでも冬夜は与えられた二度目の人生を、自分なりに生きていこうと転生先の世界――スフィアイズで自由を謳歌する。 ※05/12(金)21:00更新時にHOTランキング1位達成!ありがとうございます!

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

転生幼子は生きのびたい

えぞぎんぎつね
ファンタジー
 大貴族の次男として生まれたノエルは、生後八か月で誘拐されて、凶悪な魔物が跋扈する死の山に捨てられてしまった。  だが、ノエルには前世の記憶がある。それに優れた魔法の才能も。  神獣の猫シルヴァに拾われたノエルは、親を亡くした赤ちゃんの聖獣犬と一緒に、神獣のお乳を飲んで大きくなる。  たくましく育ったノエルはでかい赤ちゃん犬と一緒に、元気に楽しく暮らしていくのだった。  一方、ノエルの生存を信じている両親はノエルを救出するために様々な手段を講じていくのだった。 ※ネオページ、カクヨムにも掲載しています

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

処理中です...