王族に転生した俺は堕落する

カグヤ

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第16話 戦棋

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 ゴロゴロして、スイーツを作ってばかりではただの豚だ。

 ゲームやテレビという娯楽がないこの世界は、王族に生まれ時間を持て余している俺にとっては本当に暇である。
 というわけで、ソフィーや最近仲良くなったエリザベートと一緒に遊べる何かを作ろうと思い立った。
 ひとまず、異世界で定番のオセロと、チェスを作ることにした。ソフィーと遊ぶにはオセロが丁度いいだろう。しかし、前世の記憶を持つ俺や年長者であるエリザベートには少々物足りない。そこでチェスというわけだ。
 といっても俺の使える光魔法では木を加工する事も、土で造形することもままならない。

 そこで、紙だ。羊皮紙は高価なものではあるが、そこはなんたって王族である。頼めば貰うことができるのだ。
 俺は7×7マスと8×8マスの書いた紙と、表を黒く塗った丸い紙を64個、チェスの駒をそれぞれ紙で作り、ソフィーの家へと向かった。

 「今日はどうしたんですか? また新作のすいーつを開発したんですか?」
 めっちゃ期待した目で見られている。何か持ってくるべきだったか。
 「いや、今日は遊び道具を持ってきたんだ。やってみない?」
 俺は8×8マスの紙と小さい丸い紙をポケットから出した。
 「はわわ~。何ですか? これは?」
 「これはオセロという遊びなんだけど………」
 「オセロ? 聞いたことないです。どうやって遊ぶんですか?」
 「まず中央に白と黒の紙を置いて、後は交互にこの丸い紙を置いていくんだ。片方は白い紙を置いて、もう片方は黒い紙を置くんだ。そして同じ色に挟まれた紙は全部同じ色になっていって、最後に自分の色が多い方が勝ちっていうゲームだよ」

 「う~ん………??」
 「一回やってみよう。慣れれば簡単だよ。まずはソフィーから置いていいよ」

 「……わかりました」
 ソフィーは丸い紙を手に持ち、悩んだ末に左隅に白い紙を置いた。

 「あっ、違う!!」
 「はわわ~。 ごめんなさい!!」
 「いや、ごめん。説明してなかった。ひっくり返せないところには置けないんだ」
 「そうなんですか? じゃあここです」
 今度は黒の紙の横に置いてその黒い紙をひっくり返して白くする。初手で角を取ろうとするという事はかなりの強者ではないだろうか。考えてのものなのか、感覚によるものか、これはいい勝負になる予感である。
 「そうそう。そうやって、あとは交互に紙を置いていくだけだ。簡単でしょ」
 「そうですね。でもこれで勝負がつくんですか?」
 「一度やってみよう」
 「わかりました」

 その後、俺達は交互に紙を置き合った。ソフィーは完全にオセロを理解しているようだが、初めてという事もあり、やはり俺には敵わない。

 「はわわ~。ほとんど黒くなっています。すごいです」
 大人げない勝ち方をしてしまったが、特に泣くようなこともない。むしろ、尊敬の眼差しである。
 「ソフィーも何回もやっていると、上手くできるようになるよ」

 「じゃあ、もう一回…しませんか」

 「いいよ」
 ソフィーは満面の笑みを浮かべる。
 守護らねばならぬ。この笑顔。

 その後、何度も戦ったがソフィーが勝つことはなかった。しかし、最後の方では枚数の差はなくなりつつあった。
 
 「じゃあ、そろそろ遅いし。帰るよ。それ気にいったならあげるよ」

 「いいんですか?」

 「ナヴィさんとかとやるといいよ」

 「はい。特訓して、ジークお兄様といい勝負ができるようになります」

 最後の方はいい勝負をしていた気がするが………
 ソフィーの笑顔に癒され、俺は帰途についた。


 そして何日か経って、ソフィーの家に行くと、エリィ姉さんとソフィーがオセロをしている真っ最中だった。

 「ジークお兄様、ようこそいらっしゃいました」
 「あら、タヌキチじゃない」
 エリィ姉さんの俺の呼び方がひどいが、そこはスルーである。俺にはイケメンである兄と同じ血が流れている。何も心配することはあるまい。幼少期ちょっとぽっちゃりしてしまうのはよくある事である。

 「お久しぶりです。エリィ姉さん。今日はちょうどプリンを持ってきたんですよ。4つあるんで、皆で食べましょう」
 前の教訓を活かし、今日は手土産持参でソフィーの家に訪れていたのだ。2個ずつ用意していたので、一人一個食べても一つ余る計算だ。

 「そうなの。ではちょっと中断しましょうか。ソフィー」
 「はい。エリィお姉様」

 俺は二人にプリンの入った器を渡す。

 「はわわ~。プリンにあの白いクリームが乗ってます~」
 器にはプリン以外にも果物なんかも添えて、王族使用の食べ物になっている。

 エリィ姉さんは無言でスプーンを手に取り、クリームとプリンを掬い、口に運ぶ。
 目を見開いた後、ゆっくりとスプーンを動かし、優雅に口元へと再度運んだ。そして、その動作は規則正しく、器が空になるまで止まることはなかった。

 「美味しかったです~。流石ジークお兄様です~」
 「まぁ、なかなかだったわね」
 エリィ姉さんのなかなかという言葉は、美味しいということである。それは、最後の残った一つのプリンに注がれたもの欲しそうな視線でわかる。
 半分づつにするという提案も悪くないが、せっかくなので楽しく盛り上がりたい。

 「あと一つ残ったけど、どうしようか? オセロの勝負で勝った者が食べれるってことにする?」

 「い、いいですわ。ジークお兄様に勝ってみせます」
 ソフィーがやる気になっている。
 「う~ん。オセロはちょっと簡単すぎるから、もっと違うことの方がいいんじゃないかしら。そうだわ、【戦棋】なんてどうかしら?」
 俺は先ほどソフィーと打ち合って中断していたオセロの盤面をちらっと見る。エリィお姉さまは、ソフィーに圧倒的に負けているようである。お姉様………
 
 「【戦棋】とは?」
 聞きなれぬゲームに俺は聞き返した。

 「あら、知らないんですの、地形等が書かれたマスに、駒を置いてキングを取るというゲームですわ。歴史あるゲームで、軍の戦いのシミュレーションとしても使われたりするのですわ。よくお兄様とやっていましたの。いい機会ですし、二人に教えて差し上げますわ」

 説明を聞くと、チェスをもっと複雑にしたようなルールのゲームであった。マスも駒もチェスより多く、マス目自体にも効果がついていて、動きが限定されたりするようである。

 「う~ん………」
 ソフィーの頭から煙が出ているのが見える。

 「どうかしら? それで決着をつけましょうか」

 未知の遊びもいいが、ソフィーには難しいような気がする。そこで俺は、ポケットの中からチェスの紙を取り出した。

 「それに似た………【戦棋】を簡略化したゲームを実は作っていたんですが、こちらはどうですか?」
 
 「あら、何ですかそれは?」
 
 「遊び方を説明しますね」
 俺は2人にチェスのルールを説明した。

 「たしかに、【戦棋】に似てますわね」
 
 「【戦棋】よりルールがまだ分かりやすいです」

 「じゃあ、僕とエリィお姉様で一度してみましょう」

 「いいわ。お兄様と鍛えた【戦棋】の腕を見せてあげるわ」

 「ソフィーはやり方を見ておいて」

 「分かりました」

 そして、30分後。盤上を睨みつけて、震えているお姉様がそこにいた。

 「はわわ~。お姉様のキングの逃げ場所がないです~」

 「どうやら、負けのようね。なかなかやるじゃない。手加減はいらなかったみたいね。でもいいわ。私はお姉様だし、プリンはあなた達に譲るわ」
 
 めっちゃ悔しがっていたように見えたが、そこは触れてはいけないだろう。
 
 「はわわ~。流石です。お姉様~。じゃあ、次は私とです。ジークのお兄様!!」

 俺とソフィーが対戦している間、横で真剣な顔で観戦するエリィ姉さんの姿があった。はまってくれたのだろうか。
 ソフィーはエリィ姉さんよりも弱く、15分ほどで決着がついてしまった。

 「はわわ~。逃げ場所がないです~。負けました~」

 エリィ姉さんは真剣な顔で盤上を眺めている。

 「僕は家に帰ったら、まだあるし、2人で分けていいよ」

 特にプリンが食べたいわけでもないので、俺は戦利品を2人に差し出した。
 「いいんですか~?」

 「いいよ。ちょっと食事制限をして、痩せようかと考えてるしね」

 「そうですか。それなら仕方ありませんね。私達が協力してあげましょう」
 「お兄様は、そのままでも素敵です」
 ソフィーは優しい言葉をくれるが、これに甘えてはいかんのである。 
 「ソフィー、甘いことを言ってはいけませんよ。このままではオークになってしまいます。だから、これは私達で食べてあげないといけないんですわ」

 エリィ姉さんの厳しいお言葉が俺の胸にささる。

 「うう。わかりました」

 2人は美味しそうに最後のプリンを食べたあと、みんなでチェスを何回かやったらいつの間にやら帰宅の時間になっていた。

 「あっという間に過ぎちゃいました~」

 「ジークに一度も勝てないなんて………」
 あの後、俺が全戦全勝してしまったので、エリィ姉さんは放心状態だ。

 「これも、ここに置いておくね」
 チェスもソフィーの家に置いておいた方がいいだろう。皆が集まるのはだいたいソフィーの家だし、ソフィーとエリィ姉さんで特訓しておいてもらえれば、俺も今度やる時はいい勝負を楽しめるだろう。

 「はわわ~。いいんですか? ありがとうございます」

 「私にも欲しいんですが」
 
 意外にも、エリィ姉さんはかなりはまってしまった様子である。

 「分かりました。今度作って持ってきます」

 「分かりました。では次回に」

 俺とエリィ姉さんはソフィーの家を後にした。そして、帰路についている時に不意にどこからともなく声が聞こえてくる。

 「神の一手を究めんとす」
 そこには長い帽子を被り、手には扇を持った、中性的な男性が立っていた。その姿はどこか神秘的なオーラを纏った、この世の者ではない何かを感じさせた。

 「誰ですか?」

 「私か? 私は風の精霊ワムゥ。神の一手を探求するものだ」

 どうやら、光の精霊リンネと同じ類の何かがまた出現したようである…………
 

 
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