王族に転生した俺は堕落する

カグヤ

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第21話 帰還

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 お兄様が休みの日に帰ってきた。今までもたまに帰って来ていろいろとお土産をくれていたのだが、今回は俺が勉強に身が入っていないという報告を受けての帰還である。恐ろしす。

 リビングにあるテーブルで俺とヨハネス兄様は向かいあって座っている。そしてヨハネス兄様のすぐそばでメイド長のメリッサが立っている。

「ヨハネス様、ジークフリート様の勉強があまり身に入っていない様子なので、ヨハネス様からも仰っていただければと思いまして手紙で報告させていただきました」

 メリッサはヨハン兄様に俺の状況を週一くらいで報告しているらしい。どんな事を報告しているかは知らないけど、今まではその報告で怒られるようなことは一度もなかった。

「いつも報告ありがとう。メリッサ。そして、ジーク、勉強がついていけないのかい?」

「いえ、その、あの、納得のできない部分があって、なかなか頭に入ってこないというか………」

「ジークフリート様、まだそのようなことを……」

 メリッサの言動を、ヨハネス兄様は左手を挙げて制す。

「どんなことが納得できないんだい?」

「いろいろありますが、たとえばこの大地が平面であるという考え方は違っていると思うのです。実際は球体で、物質同士が引っ張りあっているのです。この大地が凄い大きいために全てのものは地面に引き付けられているのです」

「ふむ…………」

 静かにお兄様は考え込んだ。14歳になったお兄様はとんでもないイケメンに成長されている。考え込む姿は彫像のような黄金比を備えた佇まいでらっしゃる。
 お兄様の後ろにいるメリッサは何か言いたそうであるが、お兄様の思考を邪魔してはいけないと思っているのか何も言わずに控えている。

「その考えは面白いね。自分も最初に教わった時に、高いところから地平線の先にある場所はどうして見えないのか、疑問に思ったんだ。その時の家庭教師は明確な答えを返せなかったんだけど、自分でその後調べたら、他の国にある書物に地球は球体だと言ってるものが何冊かあったんだ。確かに球体である方が納得のできる事象も多いことが、いろいろな場所に行けば見ることができる。でも、そうなってくると球体の上で僕達がとどまっていられることに説明がつかなかったんだけど………ジークはあらゆる物質には他の物質を引き付ける力があるっていうんだね? この机も椅子も僕達にも」

「そうです」

「ヨハネス様?」

 分かってくれた!!というか、ヨハネス兄様もどうやら疑問に思っていたようである。考える優先事項が低かったから、そういうものだと片付けていたのだろう。お兄様は王族の継承権第一位だから、そんな事に時間を割いてる暇はないのだろう。
 対してメリッサは納得いってない様子。
 俺は何度も頷いた。

「新しい発想だ。一見するとこの椅子とテーブルは引き合ってはいないが、もっと大きなものだとその力が顕著になると………」

 お兄様は懐からノートのようなものを取り出すとペンで何かを書き始めた。
 俺もメリッサもお兄様が何かを書いているのを眺めた。

「しかし、これでは………」

 何かを悩んでいる様子のお兄様。

「どうしたんですか?」

 俺はお兄様の隣へ移動して、羊皮紙に書かれたものを覗き込んだ。
 F=GMm/r²
 F=mrw²
 T²=kr³

 ・・・・・

 何やら難解な数式が並んでいる。しかし、その何個かは前世の知識で見た事のある数式である。万有引力の法則に違いない。他はあっているかは分からないが、天才であるお兄様が間違っている筈がない

「引力の法則を数式化したんですか?」
「ジーク。わかるのかい?」
「少しですけど」

 俺は習って知っていただけだが、お兄様は無からどんどん数式を作り出していることを考えれば全然難易度が違う。

「そうか。いままで不思議だったことをジークの考えでまとめられるかと思ったんだけど、いくつか数値が合わないんだよね」
「どのあたりがですか?」
「天体の動きをこれを使えば割り出せるかと思ったんだけど、過去のデータと照らしてみたらあってないんだ」

 べージをめくると天体のデータのようなものが記載されていた。お兄様はいろいろとデータをとって日ごろから考察しているらしい。

「そもそも天体の動きの概念が違うのではないでしょうか?」
「というと?」
「光を照らすソリスがこの大地の周りを回っていると考えられていますが、この大地こそがソリスの周りを回っているんじゃないでしょうか? ちょっと借りてもいいですか?」
 俺はお兄様の持ったペンを借りて羊皮紙の上に恒星の周りに回る惑星を複数個、そしてその先にも同じような図を描いた。
「このようにソリスの周りにこの大地が周っていて、夜に輝いている星は、遠いところにあるソリスと同じものじゃないでしょうか?」
「そんなはずはありません」
 たまらずメリッサが俺の考え方に反論を示した
「………実に面白い」
「え?!」

 しかし、お兄様は俺の考え方に非常に興味がひかれた様子。

「素晴らしい発想だ!! 確かに、そう考えるとこの辺りの数値がかなり近似値になる。ジークはやはり天才だ。教育方針を考えなきゃならないね。ジークには枠にはまった王国の教育ではない方がいいだろう」

 うーむ。天才だと言われると少し嬉しいが、全て前世の知識で知っていたことなので、素晴らしい発想だと思われると今後のプレッシャーがきつい。

「ヨハネス様?」

 メリッサは驚いている様子。そりゃあ、勉強に力を入れるように言ってもらう筈が俺のことをべた褒めし始めたのだ。困惑するのも当然である。

「いや、社交や歴史等の知識は今まで通り必要だが、それ以外の面では………よし、ジークの教育は僕に任せてくれ。メリッサ達は王族の嗜みや歴史を教えておいてくれ。家庭教師は僕の知り合いに依頼することにするよ」
「………分かりました」

 お兄様に言われてはメリッサも納得するしかない。

「よし、それじゃあ。今日はお母様もいないし、庭で焼き肉でもしよう。いいお肉をとって来たんだ」
「焼き肉ですか? それは素晴らしい。じゅるり」
 お兄様が御土産に持って帰ってくるものは独特な味のするものが多いのだ。いつも夢中になって食べてしまうから恐ろしい。我儘ボディーになってしまったのも、お兄様が甘やかしていろいろな食べ物を持ってきてくれるからかもしれない。ということにしよう。そうしよう。
「はは、ジークは本当に食べることが好きだな。今はいっぱい食べて大きく成長するんだ」
「はい!!ジークお兄様!!」

「ジーク!! 食べているかい!!」
「はい!!」
「どうだ? 美味しいかい!!」
「はい!!スパイシーな味がします。今まで食べた事がありません。お兄様は食べないんですか?」
「そこは貴重な部位で、それだけしかないんだ。でも気にせず食べてくれ。ほら、こっちの肉も貴重なものなんだ。市場で出回らないものなんだよ。手に入れるのにかなり苦労した一品なんだ」

 何て優しいお兄様だろうか、貴重な部位や市場に出回らない肉を優先して俺に食わせてくれるなんて。お兄様は焼く係に徹して、全てを俺に食わせてくれる。
 ここは甘えるしかない。天才で優しいお兄様、万歳!!
 そうして、いつものように貴重なお土産を平らげてしまった。

「すいません!!あまりにも美味しかったもので」
「いいんだ。ジークのために手に入れたものだったんだから。今日のところは帰って先ほどの考えをまとめる事にするよ。もし発表する事があれば共同研究ということにしようと思うんだがいいかい?」

 ほとんどお兄様の手柄で俺は知っている知識を披露しただけなので共同研究じゃなくてもいい気がした。

「いや、自分は何もしてないので、お兄様の一人の研究として発表してもらってもいいですよ」
「そんなことはしないよ。ジークの発想があればこそなんだから、ジークももう少し大きくなれば、きっと自分で同じ数式を作れたはずだよ。じゃあ、新しい家庭教師を呼ぶことにするから勉強頑張るんだよ」
「………はい」

 ううう、なんか勉強のハードルが上がった気がするのだが………
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