王族に転生した俺は堕落する

カグヤ

文字の大きさ
67 / 71

第67話 土類元素魔法

しおりを挟む
「我の声が聞こえるか?」

 再び頭の中で低い声が響く。
 俺はいつもリンネ達とやっているように頭の中で呼びかける。

『聞こえてます』
『!! よもや、我の声に反応するものが現れるとは。これは僥倖だ。貴様の名前は何というのだ?』

 凄い高圧的な声と態度である。

『ジークフリートです。貴方は?』

『我か、我はエウロの地より舞い降りし【ゼルシャ】という』

『エウロ?』

 聞いたことのない地名である。

『うむ。この地より遥か遠い空を旅してやってきたのだが、封印されてしまっていたのだ。我の【共鳴者】が現れるのを幾年と待っていたのだが、先ほど反応があったので、呼びかけてみたというわけだ』

 指輪に何かが封印されているというのか。だから【鎧換装】で収納できなかったということか。

『それで、何故指輪に封印されているのですか?』

『先住者が我の力を恐れてしまったのだ。まさか封印されるなどとは我も考えもしていなかったのだ。それにしても我は指輪に封印されているというのか?』

『外が見えないんですか』

『うむ。【共鳴者】である貴様と会話をするだけで精一杯だ。では、早速我の封印を解いてくれぬか? 我の私財が残っていれば、そこから十分な褒美は与えるぞ』

『どうやって? 指輪を壊すんですか?』

 お兄様からもらった指輪を壊すのはためらわれる。

『いやいや。そんなことをすれば、封印されし我も消えてしまうかもしれぬ。指輪型ということは【漆黒の牢獄】であろう。解錠する場所があるのではないか?』

『【漆黒の牢獄】ですか? 初めて聞く名前なんで、解錠する場所も知りませんが………』

『………地図は持っているか?』

『はい、持ってますけど』
『今すぐ広げるのだ。そして、南緯47°西経123°付近を見てみろ。そこはアッパド王国内にある【牢獄解放施設】があるはずだ』

 俺は部屋にある地図を引っ張り出し、言われる位置を探す。

『そこに行って、はまった指輪と一緒に手をつけば我の封印が解けるはずだ。我の知っているものであればな』

『……アッパド王国ですか? その付近は全て森になってますよ。他のところも見ていますけど、アッパド王国なんて国は存在しませんね』

『な、なんだと? では、南緯47°西経123°には何もないというのか?』

『いえ、シルベリアダンジョンがありますけど』

『ダンジョンだと? なんだそれは?』

『ダンジョンですか? 僕も言ったことはないんですけど。一言で言うと、この世界では手に入らないお宝を求めて冒険者たちが行くところですね。魔物なんかも、その中で生み出されているなんて話もあるんですが、全てはまだ解明されていない場所ですね』

『………何だそれは? アッパド王国が森になっているというのも気になる。我は、一体どのくらい封印されていたのだろうか………』

『分からないんですか?』

『最初のころは時間の感覚もあったのだが、無駄な事に気付いて考えるのをやめてしまっていたのだ。何か変化がある時以外は意識を切っていたのでな。ほんの数年のような気もするし、数千年のような気もするし。全く見当がつかぬ。しかし、もしアッパド王国が森になるほどの年月が経っていたのなら、最低でも数百年は経過しているのかもしれぬ。くそっ!! 忌々しい先住者め。叡智を授けてやったというのに、恩を仇で返されたわ!!』

 昔のことを思い出してゼルシャは呪詛を吐く。

『お気の毒なことです』
『まあいい。ひとまず、こうして【共鳴者】が現れたのは我にとっては幸運だった。早速シルベリアダンジョンとやらに向かってくれ。今はそれが唯一の手掛かりだからな』
『……いや、無理ですよ』
『何故だ。報酬か? 確かに、これだけの年月が経てば我の私財が残ってない可能性は高いが、必ず貴様に報いることを約束しよう』

『いや、ダンジョンは危険なんで、そんなところは行きませんよ』

 お兄様と危険なことはしないと約束したところである。ダンジョンなんて危険のある最たるところではないだろうか。

『ふむ………それなら我の力をお主に授けよう。【漆黒の牢獄】でつながっているのであれば、貴様に我の能力を使えるようにしてやろう』

『どんな能力です?』
『土類元素魔法というものだ』
『土類元素魔法?? ……もしかして、炭素、ケイ素それに鉛とかを操れるとかですか?』

 土類金属はたしか第14族の元素のことだったが、そのことだろうか。

『ケイ素は合っているが、それ以外が違う。ケイ素、アルミニウム、鉄を操ることができる魔法のことだ』

 アルミニウムと鉄は土類金属ではなかったはずである。ゼルシャは続ける。

『土魔法に含まれる元素のうち、主要な元素を抽出し、それのみを操ることを可能にした魔法だ。我は3元素まで操ることができる』

 なんだか凄そうな魔法だな。
『それを覚えれば土魔法も使うことができるのですか?』
『土魔法とは違うが同じようなことはできるし、金属も操ることができるかから、こちらの方が上位の魔法となる。それゆえ貴様がダンジョンとやらに赴いても、なんら危険など生じることはないだろう』
『どうやれば覚えられるのですか?』
『我と【漆黒の牢獄】を媒介にして【同期シンクロ】するのよ』
『【同期シンクロ】?』
『そうだ。目をつぶって、集中するのだ。こちらから干渉するゆえに、暗闇の中に一本の光の線が揺蕩ってくるはずだ。それを己の身体の中に引きこんでいくイメージを持つのだ。貴様の器が耐えうるならば、おのずと我の能力がリンクされるだろう』 

 俺は目をつぶり、集中する。暗闇の中に見えた光を身体の中心に持ってくるイメージをする。

『そうだ!! そのまま一気に行くぞ!! ………よしっ!! 【同期シンクロ】は成功だ。これで能力が使えるはずだ。使ってみるといい。元素構造を最小単位で頭に描きながら魔力を込めて、それを集めて立体構造を創造していくのだ。そうすれば望みの物質が作られよう』

 俺は半信半疑で、鉄の分子を頭に思い描きながら魔力を込める。そして、それを集めながら5本の細い鎖をイメージしていく。
 すると、それぞれの指輪から細い鎖が現れて、床へと音を立てて落ちていく。
 おお、いきなり成功したぞ。しかも鎖を俺の意思で動かすこともできる。
 もう、これはあれか。『絶対時間エンペラータイム』発動しちゃっていいっすか?
 

『むう、早速成功させるとは。最小単位のイメージが難しいはずなのだが………まあいい、この能力があれば危険にさらされるということはあるまい。早速ダンジョンとやらに向かうことにするぞ!!』

『………いや、今すぐには無理ですよ』

『何故だ?! 約束を反故にする気か!!』

『いや、そんなつもりはありませんけど。自分はまだ子供なので、そんな場所に一人で行くことはできないですよ。場所的に往復で1カ月はかかりそうなので、そんなに外出できません』

『こ、子供、だと? ではいつダンジョンへと向かうことができるのだ。来月か? それとも来年か?』

『………王立学校を卒業するまで無理ですから10年ちょっとはかかります………』

『………』

 ゼルシャは絶句した。






しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

ファンタジーは知らないけれど、何やら規格外みたいです 神から貰ったお詫びギフトは、無限に進化するチートスキルでした

渡琉兎
ファンタジー
『第3回次世代ファンタジーカップ』にて【優秀賞】を受賞! 2024/02/21(水)1巻発売! 2024/07/22(月)2巻発売!(コミカライズ企画進行中発表!) 2024/12/16(月)3巻発売! 2025/04/14(月)4巻発売! 応援してくださった皆様、誠にありがとうございます!! 刊行情報が出たことに合わせて02/01にて改題しました! 旧題『ファンタジーを知らないおじさんの異世界スローライフ ~見た目は子供で中身は三十路のギルド専属鑑定士は、何やら規格外みたいです~』 ===== 車に轢かれて死んでしまった佐鳥冬夜は、自分の死が女神の手違いだと知り涙する。 そんな女神からの提案で異世界へ転生することになったのだが、冬夜はファンタジー世界について全く知識を持たないおじさんだった。 女神から与えられるスキルも遠慮して鑑定スキルの上位ではなく、下位の鑑定眼を選択してしまう始末。 それでも冬夜は与えられた二度目の人生を、自分なりに生きていこうと転生先の世界――スフィアイズで自由を謳歌する。 ※05/12(金)21:00更新時にHOTランキング1位達成!ありがとうございます!

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

転生幼子は生きのびたい

えぞぎんぎつね
ファンタジー
 大貴族の次男として生まれたノエルは、生後八か月で誘拐されて、凶悪な魔物が跋扈する死の山に捨てられてしまった。  だが、ノエルには前世の記憶がある。それに優れた魔法の才能も。  神獣の猫シルヴァに拾われたノエルは、親を亡くした赤ちゃんの聖獣犬と一緒に、神獣のお乳を飲んで大きくなる。  たくましく育ったノエルはでかい赤ちゃん犬と一緒に、元気に楽しく暮らしていくのだった。  一方、ノエルの生存を信じている両親はノエルを救出するために様々な手段を講じていくのだった。 ※ネオページ、カクヨムにも掲載しています

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

処理中です...