王族に転生した俺は堕落する

カグヤ

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第69話 ダニー不動産

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「これは、これは、ようこそお越しくださいました。私、ここの代表を勤めさせて頂いているダニーと申します。王都でも名の聞こえるラズエルデ様にお越しいただけるとは、このダニー、感無量でございます。して、今回はどういったご用件でしょうか?」

 俺とラズエルデ先生は王都にある、不動産を扱っている場所を訪れた。受付で名前を名乗ると、応接室に通されて、代表を名乗る人が出てきた。ラズエルデ先生はなかなか名前が売れているいるようである。先生が優秀な冒険者であることを再確認した。

「うむ。今回はこちらのグリフィスの要望に叶う物件を探しに来たんじゃ」
「こちらの子供ですか?」

 ダニーさんは懐疑的な目を俺に向ける。先生には俺をグリフィスとして紹介してもらえるようにあらかじめ伝えていた。王族の子供が不動産物件を見に来ているのがばれると、どこからか親の耳に入って俺が王都に繰り出しているのがばれてしまう。

「そうじゃ。グリフィスよ。希望を言うのじゃ」
「そうですね。6,7部屋があるような物件がいいんですけど、どれくらいしますかね」
「6,7部屋ですか………その大きさになりますと、王城の近くの貴族街の物件になりますが、あいにく空きがない状態ですねぇ。今は不祥事を起こした貴族様も出ていないので、こちらに回ってくる物件も少ないんですよ」
「ちなみに空きがあったとして、どれくらいの値段になりますか?」
「王城付近はそれなりのお値段がしますね。その規模ですと、賃貸で月金貨5枚、購入で金貨3000枚が目安になりますね」

 賃貸で月500万円、購入だと30億円か。高すぎるな。

「王城から離れた場所だと、安くなるんですか?」
「そうですね。王城から離れた方が安くはなるのですが、その大きさの物件はなかなかないですからね」
 
 漫画を描く人の作業部屋兼出版社として借りようと思ったが、流石に30億は高すぎる。

「そうじゃ。これはつまらないものなんじゃが」

 ラズエルデ先生は持って来ていた袋をダニーさんに手渡す。

「こ、これは………まさか、幻の……ゴクリ」
「口に合えばいいんじゃが」
「いえいえ、【キングオブイモ】の二つ名を持つラズエルデ様の持ってきたエルフ印のサツマイモ、これを目にすることができるとは」
「それで、いい条件に合う物件は本当にないのかのぅ」
「う~む、そうですね。王立学園周りは今貴族向けに開発が進んでいますので、その中であれば、条件に合うものがあるかもしれませんが……」

 まさかのイモで円滑な情報提供が可能だとは。どれだけ【キングオブイモ】の名は広まっているというのか。恐るべし【キングオブイモ】。ありがとう【キングオブイモ】。優秀な冒険者としてではなく【キングオブイモ】として知れ渡ってる、なんてことはないだろうな………

「ちなみに、その周りですとおいくらくらいなのですか?」
「そうですね。こちらは、学生向けとして賃貸を委託されているのと王城からは離れているために、少しお安くなっております。月金貨1枚程度で賃貸が可能になっております。また、この辺りは購入に制限がかけられているので、不可能になっております」

 金貨1枚くらいなら、払えない額ではない。漫画という娯楽を発展させる投資だと思えば安いものである。

「ただしかし………この辺りの物件は基本的に学生向けにしか貸し出せないようになっておりまして………しかし、これを受け取ったからには………」

 なるほど、それで最初は出してこなかったのか。こちらとしては、危ない橋を渡るつもりはないので、その近辺は保留だな。何か芋の力で危ない橋を渡ろうとしている人がいるが、そこまでするつもりはない。となると………俺は置かれた資料をぱらぱらとめくる。

 そうすると、俺は気になる物件を見つけた。

「あのここって? この値段で購入できるんですか?」
「ここですか? ここは中心街から大きく外れておりますので、その値段で大丈夫なのですが。そこは部屋数は条件に合いますが、住むのには適していませんよ。もともと、宿屋を経営なさっている御夫婦が、王都を離れて余生を過ごせればということで、売りに出しているところなんですよ。そのため、この物件の場合一括で購入していただく必要もあります」

 いや、確かに住むためには部屋の間取りが一列になっているのでおかしいが、漫画を描く作業場と考えればかなりいい物件なんではなかろうか。購入でも金貨50枚という俺の持ち金でもなんとかなる金額である。5000万円相当がなんとかなるっていうのも、金銭感覚がバグっている気もするが、ここは早めに購入を決めたいところである。

「この物件凄く気にいりました。購入します!!」
「!!」
「!!」

 俺が購入を決定し、鞄から金貨を取り出し、机にぶちまけると、2人は驚愕の表情を見せる。

 「馬鹿者!! 実物を見ずに決めるやつがあるか!! というかそんなにも金貨を持ち歩いておったのか?!」

 たしかに、間取りと値段だけで決めてしまうとは、少々即決すぎたか。ダニーさんは金貨の山を見つめて呆然としている。

「この物件に興味があるんですけど、実際に見に行くことはできますか?」
「………では、これから見にいかれますか? わ、私が案内しますけど」
「是非お願いします」
 
 俺達はダニーさんの案内で、件の物件へと連れて行ってもらう。かなり王都の中心からは外れたところではあるが、建物はレンガ造りのしっかりしたものである。

「ここが、その【時の歯車亭】になります。1階が住居兼食堂になっておりまして、2階には宿泊できる部屋が8部屋あります」
「中に入っても?」
「少々お待ちください。聞いてまいります」

 ダニーさんは宿に入って、すぐに戻ってきた。

「大丈夫なようです。2階の部屋も空いてるところがあるので、ご案内できそうです」
「それはありがたいです。是非お願いします」

 俺達は1階に入る。食堂はお昼を過ぎているので客は一人も入っていない。白髪混じりのおじいさんがダニーさんに話しかけてくる。

「こちらの方々が購入を希望されているのですか?」
「そうです。こちらの方が興味を持たれています」
「この子供さんが、ですか?」

 やはり、俺みたいな子供が購入するとは思っていないのだろう。少し落胆の表情を見せる。

「そうですね。かなり気に入っていただいているので、一括で購入するという条件も問題ないそうですよ」
「おお、そうですか!! 年季の入った宿ですが、まだまだ補修を施せば、繁盛する宿にできると思いますよ。是非2階の宿泊部屋も見てください。一部屋の宿泊部屋ですが、ベッドを置いてもまだくつろぐスペースがありますから」
 
 おじいさんは2階へと俺達を連れて行く。2階は廊下を挟んで、左右に4部屋づつある間取りになっていた。

「こちらが今空いています」

 中にはベッドが窓際に置いてあり、鏡付きの化粧台がそのそばの壁際に置かれていた。トイレや風呂などは設置されておらず、1階に共用のトイレがあるようである。
 
 ベッドを置いたままでも、作業部屋として使うスペースが十分にありそうな広さである。

「いいですね」
「!! そうですか。気に入ってもらえましたか。もし良ければ、2階の家具類は格安でお譲りしますよ
。私達はもう使いませんから」
「家具ですか………いや、宿屋をやるわけではないんで、大丈夫です」
「宿屋をするわけではないんですか?」
「そうですね。もしかして、宿屋をしないと購入できなかったりしますか?」
「いえ、そんなことはないですけど。間取り的に住居とするには、あまり良くはないと思いましたので。そうですか………宿屋を継続しないのですか………」
 
 おじいさんはどこか歯切れが悪い感じがする。

「何かあるんですか?」
「いえ、奥の部屋にいるお客様なのですが、かれこれ2年ほど利用していただいてますので、出て行ってもらわないとならないなと思いまして」

 そんなに泊るくらいなら、どこかに家を借りるか、購入した方がいいような気もするが、言えば他の宿屋に移ってくれるだろう。

「それは大丈夫でしょう。自分はこの物件が気にいりましたので、購入したいですね。いつから譲渡可能なんですか」
「そうですか!! ありがとうございます!! 引っ越しの準備等もありますけど、来週には明け渡せるかと思います」
 かなりスピーディーだな。
「気に入っていただけて良かったです。諸々の手続きは事務所に帰って行いましょう。ダナ爺さん、いらない家具類は私どもが購入させていただきますので、持っていくものと、売却するものをわけておいてください」
「分かりました。いろいろとありがとうございました」
「いえいえ、一括で購入してくれる人が現れてくれて本当に良かったですね」

 宿屋の爺さんはお礼を言って俺に頭を下げた。

 俺はこの後、不動産で手続きを済ませて、この物件のオーナーとなることに成功した。必要な家具もダニーさんから格安で購入して、一週間後、新しくここを【時の歯車亭】改め【トキワ亭】に屋号を変えて、漫画への道の第一歩を踏み出したのだった。

 早速、俺は取り掛かることにした。漫画への第一歩を。

 奥の部屋を不法占拠している冒険者を追い出すという仕事を………


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