お腹を空かせた双子の怪獣との春夏秋冬

ユーリ

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プロローグ

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「腹へった」
「腹へった」
同じ顔同じ声同じトーンで頭上から迫られ「ひーっ!」と山下風華(やました・ふうか)は叫んだ。
「待って待って! もうごはんできるから!」
「もう待てん。腹へって気持ち悪い」
「シキくんさっき僕が作ったスコーン食べたの見たんだよ!?」
「俺も腹へった」
「トキくんだってさっき僕が作り置きしたおにぎり食べたの見たんだからね!? なのになんで二人ともそんなお腹空いてんの!?」
しかし二人は同時に「成長期だからな」と平然な顔をして言ってくる。
「まだメシができてねえんなら仕方ねえよなあ」
「風華を食べるしかねえよなあ」
そう言って勢いよく両肩を噛まれた風華は「ひーっ!!」と再び叫び声を上げた。
「もうごはんできるから僕を食べないでーっ!!」





風華は高校全滅だった。
母子家庭なので負担はかけられないと滑り止めの私立は受けずに挑んだ受験、残された道は二次募集だと思っていたところに、幼馴染である折節色(おりふし・しき)時(とき)の双子の父親がこんな提案をしてきた。
『ウチの双子の面倒を見てくれたら、高校卒業の資格をあげる』
双子の父親はいくつもの学校を運営しているらしく、息子の幼馴染がピンチなので情けでそんなことを言ってくれるのかと思ったら事態は違った。
『あのね…私にあの怪獣共の面倒は見切れん…。私はメシ炊きで人生終わらせるつもりはないんだよ…』
双子は非常にヤンチャでとんでもない胃袋の持ち主で、父子家庭では育て切れないと判断したらしい。
家政婦という選択肢もあると伝えてみたが、双子が嫌だと駄々を捏ねた挙句、同い年の幼馴染である風華だったらいいと言われたからこの交渉らしい。
風華は迷わなかった。
だって勉強が大嫌いである。高校卒業の資格をくれるなら絶対こっちの方がいい! と飛びついた。
元々双子たちが住んでいた一軒家に住み、住み込みという形で双子の主に食事の面倒を見ていた。
相手は幼馴染だし基本的に土日は好きにしていいし、しかもかなりのお小遣いをもらえる。とんでもなく素晴らしいバイトだと初めは思ったけれど、しかし現実は思ったより甘くなかった。
新学期が始まって一ヶ月と少しが過ぎようとした頃、風華は早くも挫折一歩寸前だった。
「風華ー、腹へったー」
「なー、腹へったんですけどー」
大柄な体躯の二人にぎゅむぎゅむと抱きしめられては料理が進まない!
「ちょっ! キッチンでは危ないから!」
「お、風華のつむじかわいいな。噛んでやろう」
「風華の耳のここんところ、ちっちゃいほくろあるんだよなー。かわいい。噛んでやろう」
「痛い痛いいたいっ! なんでマジ噛みしてるの!?」
びっくりして上を向くと、ちゅ、とそれぞれ額と頬にキスをされる。
そして同じ顔同じ声のトーンで「かわいいから」とワケのわからないことを言ってくる。
味噌汁をかき混ぜながら、はあああ、とため息を吐いた。
「…ホントは今日のおやつ用にと思ってたホットドッグ作ってあるから食べる? おやつはまた別でおにぎり作ってあげるから…ていうかごはん炊けるまであと十分だけど…」
「食う」
「食う」
双子がいそいそと巨大な冷蔵庫を開けて作り置きの風華特製手作りホットドッグをパクついている。
ーーあと十分でごはんが炊けるのにホットドッグ食べてるよこの二人…。あ、三つ目…。
恐ろしいほどの食欲である。そりゃあ双子の父親も食事作りを投げ出したくなるのもわかる。
炊飯器が音を告げるまで残り五分を切ったときだった。
「うまかった!」
双子が手を合わせてぺこりと頭を下げるもの、なぜか舌なめずりをした。
「おやつ欲しいよなあ」
「あまーいおやつ欲しいよなあ」
そう言って風華の手にするお玉を取り上げ、エプロンを剥ぎ取られソファーへ投げつけられた。
「ちょっ! シキくんトキくん!? だから、ちょっ、んっ、んっ」
色にキスされすぐさま舌が入ってくる。ぬるりと唇を割って侵入し、ぢゅ、ぢゅ、と風華の舌を引っ張るように吸われてしまってはとろんと目が落ちてしまう。
「ふ、あ…、ん、っん」
キスが気持ちよくてぼーっとしていると、その隙に時に勢いよくズボンと下着を脱ぎ取られ、すでに半勃ち状態の風華自身がぷるんと現れる。抵抗する暇もなく時の口に収められた。
「あっ、ああっ、ふ、うう…んんっ」
口の中でじゅぷじゅぷと上下に擦られ、全身に甘い震えが起きる。
「なあ、風華」
喉元を甘噛みしながら色が喋る。
「な、に…んっ、んっ」
「今日の朝メシって何? ちゃんと肉あるか?」
「ある、よ…は、あ…っ、豚肉、焼いて…あっ、あっ」
「お、いいねえ。やっぱ肉食わねえとな」
こんな風に、と強めに喉を噛みつかれ「んんっ」と風華から甘い声が上がる。
今度は時が、風華自身の先っぽをぺろぺろ舐めながら喋った。
「味噌汁の具はなんだ?」
「んっ、油揚げ、と…ぅあっ、あっ…ん、だい、こん……んっ」
「お、やった油揚げだ。俺好きー」
「えー、俺豆腐がよかった。明日は豆腐の作ってくれるか?」
先端からとろとろと溢れる蜜を舌先で掬い、塗りつけるようにしゃぶられると我慢なんて到底できず、風華はビクビクと体を震わせながら時の口の中に射精した。
すると時が「お裾分け」と言いながら風華にキスをして精液を口移しで飲ませる。抵抗してもどうせ無駄だとわかっているので、風華は赤い顔で睨みつけながらごくりと喉を動かした。
「自分の飲むってエロいなあ」
「…トキくんのせいでしょ」
「じゃあ俺で口直し」
「ん…」
どういう意味の口直しかわからないが、抵抗してもやっぱり無駄なので目を閉じて色のキスを受け入れていると腰を持ち上げられ「ん?」と眉間に皺を寄せる。
「え、あの、朝から…するの?」
「あ? この状況でしないとでも?」
「…えっちなことしてたら学校遅れるよ?」
そう言うと色が頬を撫でながら不思議そうに首を傾いだ。
「クソ親父が経営してる学校だろ、いくらでも出席日数改ざんさせてやるよ」
「…すっごく迷惑だからやめようね?」
「いいからお前は喘いでりゃいいんだよ」
「風華、さっさと口開けろ」
二人がズボンを脱ごうとしたところで、ぐううう、と二人同時に腹が鳴り、これまた二人同時に舌打ちした。
「腹へったな…さっきのホットドッグ小せえんだよ」
「次作るときはもっとでかいのか数を用意しろ」
そう言って鳴る腹を押さえながら何事もなかったかのように食卓に着き「早くメシを用意しろ」とダンダンとテーブルを叩き始めた。
風華はノロノロと下着を履きながら真っ赤な顔で「この怪獣共め…」と呟いた。




「…ねえホントにこれだけの量を食べてるの?」
「当たり前だろ」
「むしろ足りねえ」
「普通のお弁当に早弁用のお弁当におやつ用にサンドイッチ…え、怖いんだけど。これ全部食べるのかなり怖いんだけど。まあ用意してるの僕だけど…」
「いつも腹空かせてんだよこっちは」
「倍出されても食べ切る自信あるぞ」
「…シキくんもトキくんも部活してなくてよかったね。じゃないと今頃恐ろしいことになってるよ。ていうか何か買って食べてもいいんじゃないの? お小遣いいっぱい貰ってるでしょ?」
「風華の手作りがいい」
「風華の手作りがいい」
そう言われては風華は顔を赤くして頬を押さえた。
(そんなこと言われるといくらでも作りそうな自分が一番怖い…っ)
母子家庭で育った風華は、唯一の趣味が料理だった。

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