魅了堕ち幽閉王子は努力の方向が間違っている

堀 和三盆

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100 魅了堕ち幽閉王子は思いつく(王子視点)

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 夜。ベッドに入って今日のことを考える。

 この島国は王国の庇護下にあって、魔物排除の結界魔法により魔物の被害からは守られている。しかし、話を聞くに、一部の魔物とは平和的な交流があるようだ。

 なるほど……と思った。魔物は排除されてしかるべきだが、中にはこうして人間に受け入れられ、討伐対象外となっている魔物もいる。

 人間側にメリットがある場合は特に受け入れられやすいようだ。この場合もそれだな。

 それにしても魅了魔法を利用しての、釣り竿への船酔い防止に入れ食いの付与か。セイレーンの特性を活かした見事な商売だ。考えたな。

 対価として島周辺海域での居住の許可と、生活する為に必要な金品を手に入れているそうだ。完全に人間の貨幣制度に組み込まれている。人型の魔物では割と多いが、仲良く共存しているところが素晴らしい。

 これも島国ならではの大らかさか。本国ではサクッと処分されちゃう場合の方が多いからな。でも、こういうのは嫌いじゃない。共存できるならすればいいし、利用出来る技術は利用するべきだ。

 僕も王太子として公務を行っていた頃は船に乗る機会もあったが、揺れに弱いらしく船酔いが酷かった。

 スローライフゲームで釣りにも興味が出たし、沖に出ての船釣りもやってみたい。僕も一本作ってもらおうかな。

 そんな風に思ったが、考えてみれば療養中の今でこそ自由に出歩かせてもらっているが、塔へと戻れば幽閉中の僕にそんな機会はないだろう。酔い止め付与の釣り竿なんて意味がない。

 不意に孤独を感じて、召喚主から貸し出し中のクマを抱きしめる――ふう、落ち着いた。

 うんうん。早くお前を返しに行かなきゃな。

 僕に残された自由は、異世界へと召喚してもらっての気ままなゲーム生活だけなのだから。


 ゲームの中でも釣りはできる。
 一時間で3D酔いしちゃうけど。


 ……って、待てよ。



 セイレーンの魅了魔法で船酔い防止の釣り竿が作れるのなら……。

 もしかして、ゲームの3D酔い防止の何かも作れるのではないだろうか?




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