魅了堕ち幽閉王子は努力の方向が間違っている

１１３ 共同検証！ 触れ合いながらゲームをしよう

「このくらいが限界かしらねっ！」
「げ……限界だ…………っ」


　朗報！　３Ｄ酔い防止の眼鏡は私にも効果があることが判明しました☆


　あれから。

　私が３Ｄ酔い防止機能付き眼鏡の恩恵を受けるには、王子との「直接的な接触」が重要なカギになっているに違いない――そうあたりをつけた私は王子と共に様々な実験を行った。

　とりあえず時間が時間だったので一度王子を塔へと帰し、昼食を食べてからの二度目の召喚。ちなみに王子はここ数日、午後は少し昼寝がしたいから、とか何とか理由をつけて監視を遠ざけ、昼食後にはこっちに来るという小技を身につけたので召喚時間がかなり伸びている。

　塔での管理体制がどうなっているのかは知らないけれど、３Ｄ酔いが酷かった時期の体調不良があったからか、割とすんなり午後のお昼寝タイム導入は受け入れてもらえたそうだ。
　まあ、今だけだけどね。私も大学が始まったらそうそうフライング召喚はしてあげられないし。

　あと、あんまり勝手なことをしているといい加減、本格的にバレると思う。現に、偽王子さんたちにはバレてるし。


　と、いう訳で。午後はめいっぱい時間をかけて。王子には検証作業に付き合ってもらった。


　検証方法としては、王子の持つ鑑定魔法で『セイレーンの３Ｄ酔い防止機能付き魅了眼鏡』の有効時間が見られるらしいのでソレを利用することにした。

　ちなみに、王子が使用した場合は時間は無制限。まあ、数年で効果は薄れるらしいけど、それは今は考えないことにして。

　私が王子の眼鏡を借りてかけてみても、そのままでは効果はなかった。有効時間は０：００！

　これは、私に魔力がないせいらしい。まあ、そこまでは予想通り。王子が召喚再開早々に修正箇所のチェックを始めた時も隣で見ていて酔っちゃったし。

　――で、私が眼鏡をかけた状態で王子と手を繋いでゲームをしてみたら……やっぱり、効果があった！　有効時間３：００（三時間）！

　やはり、王子との接触がカギとなるようだ。

　いちいち鑑定魔法で確かめてもらわないといけないのが面倒だったけど、コレはやるべき価値がある。王子もそういうところ凝り性だから、しっかりと協力をしてくれた。


　――で、検証の結果面白いことが分かった。

　手を繋いでのゲームは効果が高かったが、片手でのゲームはやりづらい。なので、午前中、王子にゲーム内の離宮見学をさせられていた時みたいに腕を組みながらゲームをしてみたのだが。

　王子との接触面は確実に増えている筈なのに、なぜか眼鏡の効果時間が少し短かった。有効時間２：００（二時間）。

　腕を組んでのゲームと、手を繋いでのゲームの違い。

　もしや、素肌の接触率だろうか？　そう思ってノースリーブの服に着替えて王子と腕を組んでゲームをしてみたらこれがビンゴ！　どうやら眼鏡の効果時間は素肌の接触率によるところが大きいらしい。


　王子曰く

「これは……僕の魔力が発動のカギになっているのかも」


　どうやら私を通して、王子の魔力が眼鏡に注がれている状態らしい。魔力の成分は人によって違うから、その辺で出来る、出来ない、はあるらしいけど、そもそも私には魔力がないのでそこはまったく問題ないそうだ。

　うーん。いいんだか、悪いんだか。
　まあ、王子にくっついていれば便利な眼鏡が使えるんだからどうでもいいか。


　あと、どうやら魔力というものは香りと同じで人や物に移ったり残ったりするそうだ。それを聞き、王子と共に離宮に行っていたクマちゃんを抱っこしつつゲームをしてみたら……これも効果あり！　有効時間１：００（一時間）。

　なるほどなるほど。王子の魔力がしっかりと移っているのね。

　しかし、きっかり一時間か。王子があっちで作ったっていう充電システムと一緒だな。この世界と魔法との相性とかもあるのかもしれない。

　クマちゃん、魔力の充電池状態ですね。供給元は王子。

　これは眼鏡さえ貸し出してもらえれば、王子が居なくても苦手な３Ｄゲームを酔い知らずで楽しめるということ。体質のせいで諦めていたゲームもあるから、コレは嬉しい。

　時間制限はあるけれど、なかなかに便利そうだ。


　これからもしっかり充電お願いします！　という意味を込めて。

　とりあえずクマちゃんを王子に押し付けた。