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188 チョコレートとおまじない
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「これは美味しい!! 温かいなー。冷たいなー」
チョコレートをたっぷりかけて。出来立てあつあつホットケーキを味わう王子様。切り分けたホットケーキに添えたアイスをのせながら楽しんでいる。
王子の食事は城から幽閉中の塔へと運んでいる為、冷めた状態というか、常温での提供が多いようだ。だから、温かい食事を喜ぶし、逆にアイスみたいな手をかけて冷やした物にも惹かれるのだろう。おまけでのせたバナナも、チョコレートをたっぷりとつけて楽しんでいる。
「チョコバナナだ!」
――と、ご機嫌だ。
あー、そういえば、去年お祭りで買ったチョコバナナを持ち帰って食べさせたっけ。よく覚えているな。
大学祭は無理だけど、地域のお祭りは活動可能範囲内にあるから、連れて行ってあげられる。ただ、今年は離宮に送られている間に終わっちゃったんだよねえ。間が悪い。
王子は割と何でも食べるから、来年は食べ歩き目的で連れて行ってあげるのもいいかもしれない。そんなことを話したら、とてつもなくゴキゲンになった。
そんなにチョコバナナが気に入ったのかな? まあ、お祭りと言えば……の定番だしねえ。
とりあえずおやつで機嫌は治ったようだ。よかったよかった、と美味しそうにホットケーキを頬張る王子を見ていたら。
「君は食べないのか?」
――と、聞いてきた。あーうん。美味しそうなんだけどねえ。材料だってまだあるけどねえ。
ぶっちゃけムリ。
あれだけ昼からアレコレ食べさせられちゃうと、消化が追いつかないせいかお腹が苦しい。ちょっと胸焼けもしてる。
エンドレスで口に放りこまれるお菓子で完全に限界を超えてしまったようだ。
昼間、付き合いでやけ食いしたことを話せば。
「あー。それでか。なんか、召喚主に妙な魔力が絡みついてる。胸焼けしているのはおそらくそのせいだ」
「え? 学食で提供されている物しか食べていないわよ? あーあと、市販のお菓子もだらだら食べた……ってか、食べさせられたけど」
あれ? もしかしてこれ、純粋に食べ過ぎなんじゃ…。
食べた量とカロリーを考えると恐ろしい。体調不良も当たり前かも。
「食べ物にも魔力はあるぞ。そうでなくともあとから付与できるし。何にしても大量に食べるうちに、あまり君に合わない魔力を取り入れてしまったんだろうな。別の魔力を使ってかけ流してやればすぐに治まるだろうが――」
「え? 本当? ソレどうやってやるの? 難しい??」
「いや、全然。僕の魔力は君と相性がいいみたいだから、悪夢を祓うおまじないの要領で僕の魔力をドバっと注げばすぐに」
「やって!」
「え」
「サクッとお願いします。実はちょっと苦しくて」
なんか痛かったり苦しかったりするならあれだけど、たったそれだけでこの体調不良が良くなるなら是非ともお願いしたい。何か……心なしか頭も少しぼーっとするんだよね。
「わ……分かった。いくぞ」
……ぷちゅ☆
……っとした感覚と共に。おでこから何かが入り込み、押し出されるように他の何かが体の外へと抜けていく。
「あ」
おでこから口を離した王子が何かに気付いたように小さな声を上げた。真っ赤になって、慌てて机の上に常備していたウエットテッシュに手を伸ばし、私のおでこを優しくこする。
わざわざ消毒なんてしないでいいのに律儀だなあ……と思ったら。
「わっ、悪い。チョコレートがベチョっと君のおでこに……」
――あ、それは拭いてもらって正解ですね。
チョコレートをたっぷりかけて。出来立てあつあつホットケーキを味わう王子様。切り分けたホットケーキに添えたアイスをのせながら楽しんでいる。
王子の食事は城から幽閉中の塔へと運んでいる為、冷めた状態というか、常温での提供が多いようだ。だから、温かい食事を喜ぶし、逆にアイスみたいな手をかけて冷やした物にも惹かれるのだろう。おまけでのせたバナナも、チョコレートをたっぷりとつけて楽しんでいる。
「チョコバナナだ!」
――と、ご機嫌だ。
あー、そういえば、去年お祭りで買ったチョコバナナを持ち帰って食べさせたっけ。よく覚えているな。
大学祭は無理だけど、地域のお祭りは活動可能範囲内にあるから、連れて行ってあげられる。ただ、今年は離宮に送られている間に終わっちゃったんだよねえ。間が悪い。
王子は割と何でも食べるから、来年は食べ歩き目的で連れて行ってあげるのもいいかもしれない。そんなことを話したら、とてつもなくゴキゲンになった。
そんなにチョコバナナが気に入ったのかな? まあ、お祭りと言えば……の定番だしねえ。
とりあえずおやつで機嫌は治ったようだ。よかったよかった、と美味しそうにホットケーキを頬張る王子を見ていたら。
「君は食べないのか?」
――と、聞いてきた。あーうん。美味しそうなんだけどねえ。材料だってまだあるけどねえ。
ぶっちゃけムリ。
あれだけ昼からアレコレ食べさせられちゃうと、消化が追いつかないせいかお腹が苦しい。ちょっと胸焼けもしてる。
エンドレスで口に放りこまれるお菓子で完全に限界を超えてしまったようだ。
昼間、付き合いでやけ食いしたことを話せば。
「あー。それでか。なんか、召喚主に妙な魔力が絡みついてる。胸焼けしているのはおそらくそのせいだ」
「え? 学食で提供されている物しか食べていないわよ? あーあと、市販のお菓子もだらだら食べた……ってか、食べさせられたけど」
あれ? もしかしてこれ、純粋に食べ過ぎなんじゃ…。
食べた量とカロリーを考えると恐ろしい。体調不良も当たり前かも。
「食べ物にも魔力はあるぞ。そうでなくともあとから付与できるし。何にしても大量に食べるうちに、あまり君に合わない魔力を取り入れてしまったんだろうな。別の魔力を使ってかけ流してやればすぐに治まるだろうが――」
「え? 本当? ソレどうやってやるの? 難しい??」
「いや、全然。僕の魔力は君と相性がいいみたいだから、悪夢を祓うおまじないの要領で僕の魔力をドバっと注げばすぐに」
「やって!」
「え」
「サクッとお願いします。実はちょっと苦しくて」
なんか痛かったり苦しかったりするならあれだけど、たったそれだけでこの体調不良が良くなるなら是非ともお願いしたい。何か……心なしか頭も少しぼーっとするんだよね。
「わ……分かった。いくぞ」
……ぷちゅ☆
……っとした感覚と共に。おでこから何かが入り込み、押し出されるように他の何かが体の外へと抜けていく。
「あ」
おでこから口を離した王子が何かに気付いたように小さな声を上げた。真っ赤になって、慌てて机の上に常備していたウエットテッシュに手を伸ばし、私のおでこを優しくこする。
わざわざ消毒なんてしないでいいのに律儀だなあ……と思ったら。
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――あ、それは拭いてもらって正解ですね。
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