魅了堕ち幽閉王子は努力の方向が間違っている

堀 和三盆

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219 今日のおやつは

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 王子もそうだけど、育ちのいい人はふとした拍子にソレが出る。王子は動作一つをとっても王子だし、先輩も先輩で育ちの良さがにじみ出ている。

 やはり日々の積み重ねというか……緊急時にこそ、その人の日常の行動が出ると思うのだ。

 今の一連の行動から、先輩が日頃からどれだけ眼鏡を大事にしているのかがよく分かる。

 なので、つい――心の声が漏れてしまった。



「前からすごいすごいと思ってはいたけれど、やっぱり先輩はすごいです。私、先輩のこと心から尊敬します……」

「!!!???」



 いつもなら。

 先輩は私のお腹がいっぱいになるまでスイーツを食べさせて。もう無理、限界……ってなってから先輩が残りをサクッと平らげてようやく解放されるのだけど。

 何かこの日は急に、もう無理、限界。胸がいっぱい……とか何とか言って先輩は席を立ち、残りのクッキーは全部お土産にと私に持たせてくれた。


 やった、ラッキー☆ 
 何かよく分からないけど、召喚用のおやつゲット!!


 しかし、真っ赤な顔してフラフラと学食から出て行ったけど、先輩大丈夫なのだろうか。


 苦しそうに胸の所を抑えていたし、胸焼けでも起こしたのかも――って、ああ、胸がいっぱいってそういうことか。

 ほっそりした体型のわりによく食べる先輩は今日もボリューム満点の定食をペロリだったからな。
 最近、やたらスイーツ系を食べさせてもらう機会が多かったけど、先輩は残った分を完食しているから私以上に食べているし。

 しかも、先輩がくれるスイーツって、やたら高そうなのが多いんだよね。カロリー的にもお値段的にも。


 そうだ! いつも貰ってばかりもあれなんで、たまには先輩に健康志向のおやつでも差し入れしようかな?
 何か、負担にならなそうな低いやつ。……カロリー的にもお値段的にも。


 王子も毎日のように高カロリーなおやつで召喚をしているから、ちょうどその辺のことは気になっていたんだよね。

 最初の頃より格段に召喚回数が増えている上に、王子ってば太りやすいし。

 しかも、娯楽を求めて異世界来るほどアグレッシブなくせに、王子はゲームにハマるとすぐ私の部屋に引きこもる。
 だからまめにお散歩にも連れ出さないといけない。

 体調不良やら体型の変化やらで、異世界召喚があっちの人に見つかったら笑えない。召喚バレが深刻なのって私以上に王子の方なのに、あのゲーム依存王子ってばイマイチ危機感が足りないんだよな。

 いいですか、既に王家の影さん達にはバレているんですよー。そんでもって、他にバレないように偽王子さん達が留守番してくれたりしているんですよー。
 ……物理的に王子には言えないけれど。

 何だかんだこっちの世界に呼び出しちゃった責任は私にもあるし、出来ることはしてあげないと。

 おやつと召喚と健康。

 なんとか全てを両立させてみせますよ。そんでもっていいおやつを見つけて、先輩に日頃の恩を返せれば一石二鳥だし。


 ――とまあ、あれこれ考えてはみたけれど、今日はせっかく先輩から高品質、高評価、高価格、高カロリーのお高い尽くしのクッキーを貰えたんだから、難しいことを考えるのも健康志向もダイエットも明日から☆


 とりあえず今日は何も考えず、美味しいクッキーを王子と一緒に有難くいただこうと思う。


 そうだ、おやつ代が浮く分でクッキーに合いそうなお茶でも買おうかな☆ (家計のダイエットも明日から、ってことで♡)
 うーん、楽しみ!!




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