魅了堕ち幽閉王子は努力の方向が間違っている

堀 和三盆

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222 2人で使おう! ハイブリッドローブ☆

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「あれ? あっ、もしかして暑すぎる!?」

 そういえば。このローブは使用者に合わせた温度になるように設定されているらしいけど、それって二人で使う時にはどうなるんだろう? やっぱり、本来の持ち主である私優先? なのだろうか。

 私にとってはやや暖かいくらいで快適だけど、もしかして王子にとっては暑すぎるのだろうか。

 実家でエアコンを使う時ですら、お兄ちゃん達と暑い、寒い、の意見の違いってあるもんね。

 ローブに関しては謎技術すごいとは思うけど、明確な温度調整方法がない分、どうやって操作したらいいのか分からないし、微調整が難しい。
 そうなるとコレに頼るのは厳しいかもしれない。


「うーん。お金かからないしローブ暖房はなかなかいいと思ったんだけど、王子に合わないなら仕方ないか。コレはやめて大人しく暖房を付け「いいや、コレはいい! 暖かいし素晴らしいと思う」」

「え? でも、無理しなくても「コレでいい! いや、むしろコレがいい!!」」


 何故か食い気味に言ってくる王子様。圧がすごい。

 そして。


「あれだ! 何だっけ、よく聞くエコ何とか……。エコエコあ……ああ、そうそうエコロジー!! いいか、コレの動力は魔力だ。魔力はこちらでは使われていないから自然環境にまったく影響はない。素晴らしいな!? それにエネルギーの節約にもなるしいいと思う。さっきも言ったが、僕も使っていない塔の適温魔法はこまめにオフにして魔法陣への魔力の供給に努めているから、節約には興味があるんだ。勉強になるな!? それに、コレならば暖房と違ってまったく音がしないから召喚主がいつも気にしている壁ドン☆ 対策にも効果があると思うのだが、さあ、どうだ!」


 ドーン!!

 何か、営業マンのセールストークのようなテンションでまくし立てる王子様。

 ――あ、いつの間にかインベントリから眼鏡取り出してかけ替えてますね。ほほぅ、黒縁ですか。中々いいチョイスです。ついつい、眼鏡に――じゃなかった、話に引き込まれちゃいますね。

 いや、いや、っていうか何でそんなに必死なの?

 多少の胡散臭さを感じるものの……最後のひと言にはグッと心を鷲掴まれた。


 壁・ド・ン・☆・対・策……!!


 何そのパワーワード。驚異のセールストーク。
 王子ってばそっち方面、営業の才能あるんじゃないの? 

 塔に引きこもっているのが惜しいくらいだ、ああ、いやいや。幽閉されているんだった、そうだった。

 いやいや、それはどうでもいいとして。


「それ!! そうだよね。暖房も夜中だと結構響いてうるさいし。あーもー、何で今までソコを気にしていなかったんだろ!! 迂闊だったわ。そして、危なかった。ありがとう、王子!! うんうん。そうよ、王子の言う通りよ。コレなら暖かいし、エコだし、電気代かからないし、壁ドン☆ 回避で、静かでいいと思う」

「いやいや。召喚主がいいモノを持っていただけだ」


 ……と、いうわけで。しばらくの間、冬の暖房はコレで乗り切ることになった。


 しかし――そっか。これも魔力とやらを使っているのか。


 言われてみれば。王子に刺繍を入れてもらった時に、謎技術ローブは既に魔改造されてたんだよね。すっかり忘れていた。


 先輩のくれたオカ研ローブは相変わらず何がどうなっているのか謎だけど――家がお金持ちの先輩のことだ。私の知らない超最先端の科学技術が使われていたのだろうと思われる。王子によって、魔(力)改造されちゃったけど。

 王子お得意のこちらとあちらの融合。科学技術と魔法のハイブリッド。


 ハイブリッド耳栓(完全防音・王子の鼻歌機能付き)
 ハイブリッド白ワンピース(品質保持・カレーうどん用)
 ハイブリッドオカ研ローブ(冷暖房費節約)


 ……って。なんか、次々と妙なハイブリッド製品が出来ていくな。まあ――どれも便利に使えているんだから問題ないか。


 王子はこのローブ暖房をえらく気に入ったらしく、こちらへ来るたびに嬉しそうに使用している。
 たまに、あちらへとお持ち帰りしているほどだ。あっちで使いたいんだって。

 あれだろうなぁ……塔の適温魔法とやらを切って、魔法陣用の魔力に私的流用してるんだろうなぁ……。そんで、自分はちゃっかり借用ローブを着込んで、暖かく過ごす――と。
 いちいち確かめなくても分かるわぁ……分かりやすいもんね、うちの王子様。

 持って帰られちゃうと私が使えないんだけど……まぁ、考えてみたら去年まではまったく使わずに生活していたし。
 バイトで朝が早いから、王子を元の世界にかえした後は、ご飯食べてお風呂に入って寝ちゃうだけだし。

 それに、お布団をかぶっちゃえばそれだけで結構暖かいんだよね。

 しかもあまり温かすぎても眠れない――ってことで、王子に頼まれた時には気軽にローブの貸し出しには応じている。

 せっかくの謎技術。より必要としている人に使ってもらった方がいいもんね。


 ダンジョンからの隙間風が寒いって言っていたから、それ対策もあるのかもしれないし。



 ――とはいえ。

 流石にそろそろ暖房付けても――ってくらいに寒くなっても相変わらず暖房は使わずに私と一緒に楽しそうにローブにくるまっているので、意外に王子は寒さには強いのかもしれない。


 ローブ暖房は二人で使うとより暖かい。なので、召喚中はローブ暖房を使うことが多い。貸し出し中でも召喚時は毎回律儀に持ってかえってきてくれるので特に問題はない。

 もちろん、手元にある時はちゃんと自分でも使用している。


 ――という訳で。
 魔改造オカ研ローブのお陰で今年の冬はあまり暖房代を気にしなくてすみそうだ。

 ハイブリッドって素晴らしい!!




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