魅了堕ち幽閉王子は努力の方向が間違っている

堀 和三盆

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238 大絶賛王子。

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「しまった、そっちも美味しそうだったな」


 受け取ったトレイを持って、目立つ王子をあまり目立たぬ一番奥の席に誘導して座り、さあいただきましょう……というところで。王子が速攻で自分の選択を悔やみ始めた。

 羨ましそうに、チーズがトロトロに溶けた私のハムチーズサンドを見ている。

 注文するのにあれだけ時間をかけておいて……とは思うものの、いくら写真が載っているとはいえ知らない食べ物を選ぶのは大変だろう。

 こうして実物を見ると気分もまた変わってくるだろうし。
 ほーら王子の卵サンドだって。



 ……しまった、そっちも美味しそうだったな。

 もう少し悩むべきだったか。とはいえ、自分の好きな定番メニューも外したくなかったし。


 じゃー次はそうすればいいよ…と出来ればいいのだろうけども、貧乏学生の身ではそう何度も連れて来てはあげられない。
 お行儀は悪いが、ここは後悔のないようにするべきだろう。

 ――と、いう訳で。


「それじゃ、こっちも食べればいいじゃない。私も、王子の卵サンドを食べてみたいし」

「いいな、ソレ! あれ? でも、それって、も、もしかして…………あーん、とかそういう………………?(ボソボソ)…………。いや、いいと思う!!」

 王子の同意も得られたのでカバンの中から携帯用のカトラリーセットを取り出し、サクッと自分のハムチーズサンドを半分に切り分けた。

 王子が何やらブツブツ言っていたけど、切るのに集中していたのでよく聞こえなかったな。何だろう?

 コレ、軽いし一通り入っているから便利なんだけど、金属じゃないから切るのにコツがいるんだよね。


「何? 王子、どうかした?」

「…………。……もしかして、君はカトラリーを持ち歩いているのか?」

「え? うん。お昼ごはん買った時に店員さんにつけ忘れられることあるし」


 基本、大学では学食を利用するんだけど、オカルト研究会にも顔を出すようになったので、最近は部室に行ってカップうどんでサクッと昼食を済ませることもある。
 部室には電気ケトルがあるからお茶も飲めるし、とっても便利! 金欠時の強い味方ですね。

 ただ、お店でお箸を入れ忘れられたりすると地味に面倒くさい。


 わざわざ買うのもお金が勿体ないし。
 お店まで戻るのは時間が勿体ないし。

 そんな時にコレですよ!


 そうじゃなくとも、最近は先輩がやたらスイーツを分けてくれようとしますからね。クッキーなんかの時はいいけれど、大福とか半分くれようとしたときは少し困った。


 嬉しいけど、あーんとかやられてもねえ……。
 粉がつくし、そもそもスイーツ系はお茶を飲みながらチビチビ食べるのが好きなので。

 ――そして、そんな時にもコレの出番です!

 サクッと切り分ければ粉でテーブルを汚すことも無いし、自分のペースで美味しくお裾分けスイーツが楽しめちゃいますよ☆




 ポカーン。。。


 何故か。最初、王子は私が大福を切り分けた時の先輩と同じような何とも言えない微妙な顔をしていたのだけれど。
 プレゼン風に先輩とのやり取りなんかをサクサクっと説明したら一転、笑顔になって


「それは素晴らしいな!!」


 ――と、大絶賛してくれた。

 おお、私にも少しはプレゼン能力があるようだ。将来、営業職とかいけるかな? なーんてね、うん、無理無理! 慣れた相手じゃないと、どうしても緊張しちゃうもん。

 共通の趣味でもあれば話せるんだけどねぇ。それでいくと、この王子に慣れるのは早かったな。まあ、こんな見た目だけど、コイツ召喚早々、速攻でゲーム機に食いついていたからな。

 オタ趣味は国境線と世界線をサクッと越えますね。ゲーム・漫画・アニメ好きと眼鏡に悪い人はいない。

 まあ、王子の眼鏡は後付けだけど! 私その辺は気にしないので。



 私のプレゼンの影響か、王子も携帯用カトラリーの便利さに魅了されたようなので、帰ったらペットボトルのおまけについてきた、お弁当用のお箸セットをあげるとしましょうか。

 子供用だけど、キャラクターものだから王子もきっと喜んでくれるはず。小さい分、入れ物ごと王子愛用の眼鏡ケース(空間魔法)に入るしね!





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