魅了堕ち幽閉王子は努力の方向が間違っている

堀 和三盆

文字の大きさ
317 / 364

317 大人になった偽王子(猫耳)

しおりを挟む

「……って、あれ? な~んだ、よく見たら召喚主じゃん! こっちの世界にも獣人がいるのかとテンション爆上がりで、うっかりヤっちゃったり殺っちゃったりするトコだったぜ。危ない、危ない。ったく、春先にこういう紛らわしいことすんのやめろよなー」


 あまりの衝撃に固まっていると、猫ちゃんは私の顔をジッと見つめて、心底ガッカリしたように肩を落とす。


 いや、いや、いや、何でソコ二回言った!? 殺っちゃったり殺っちゃったりって、なんでそんなに攻撃的になってるの!?? メッチャ身の危険を感じるんですけど!!!!

 確かに、これまでも偽王子(猫耳)には思い出したように度々命を狙われてきたけれど、ご飯をあげたり一緒にゲームをしたり、それなりに仲良くしてきたつもりだったのに。
 さすがは気まぐれな猫ちゃん。ツンが過ぎる。



「あれ?」

 ふと気がつけば。今回、私がイタズラに使った猫耳カチューシャがベッドの上に転がっていた。どうやら偽王子(猫耳)に押し倒された拍子に頭から外れてしまったようだ。

 ああ、なるほど。そのおかげで猫ちゃんが正気に戻ったのか。助かった。

 まあ、これって100円とは思えないほどによくできているしね。そのせいで同種族と思われて、猫ちゃんが激おこ状態になってしまったらしい。

 考えてみれば飼い猫でも窓の外の猫を見て機嫌が悪くなったりするし、当然と言えば当然かもしれない。危ない、危ない。

 これは猫ちゃん相手に変なイタズラを仕掛けた私が悪いですね。しっかりと反省しなくては。

 それにしても……。



「…その……猫ちゃん……なんだよ、ね?」



 先ほどから、私を押さえつけて見下ろしている猫ちゃん。その左右で色の違う神秘的な目と、柔らかそうな黒髪は記憶の中の偽王子(猫耳)そのもの……なんだけど。

 大きさが違うと言うか、何と言うか。
 面影をしっかりと残したまま、急に大人になっちゃった感じ。

 出会った頃はどう見ても小中学生くらいの悪ガキだったのに、今の偽王子(猫耳)は立派な青年。猫ならではの魅惑的な気品まで加わって、王子(本物)と大差ないくらいの外見になっている。

 いや、確かに久しぶりに会った猫ちゃんは体重も増えて大人サイズになっていたけれど。まさか、本体(?)の方までこんなに大きく育っているとは思わなかった。

 その、あまりの変貌ぶりに正直落ち着かない。


「……はあ? 召喚主ってばなに言ってんの? オレの他にいったい誰がいるっていう……あ!! この前は気にもしてなかったけど……まさかお前、オレがちょっと謹慎食らっている間に浮気して、この部屋に他の猫を連れ込んだりしてたんじゃないだろうな? 誤魔化したって獣人は鼻がいいから匂いで判るんだからな? どれどれ、チェックしてやる」


 スンスンスンスン……。
 スンスンスンスン……。


 急に不機嫌になった猫ちゃんは私の上に馬乗りになったまま、念入りに全身の匂いをチェックしてくる。


 え。ちょ、やめて。
 さっきお風呂入ったばっかとはいえ、そこまでされると流石に気になるんですけど……!




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冷遇された聖女の結末

菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。 本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。 カクヨムにも同じ作品を投稿しています。

【完結】愛されないと知った時、私は

yanako
恋愛
私は聞いてしまった。 彼の本心を。 私は小さな、けれど豊かな領地を持つ、男爵家の娘。 父が私の結婚相手を見つけてきた。 隣の領地の次男の彼。 幼馴染というほど親しくは無いけれど、素敵な人だと思っていた。 そう、思っていたのだ。

明日のために、昨日にサヨナラ(goodbye,hello)

松丹子
恋愛
スパダリな父、優しい長兄、愛想のいい次兄、チャラい従兄に囲まれて、男に抱く理想が高くなってしまった女子高生、橘礼奈。 平凡な自分に見合うフツーな高校生活をエンジョイしようと…思っているはずなのに、幼い頃から抱いていた淡い想いを自覚せざるを得なくなり…… 恋愛、家族愛、友情、部活に進路…… 緩やかでほんのり甘い青春模様。 *関連作品は下記の通りです。単体でお読みいただけるようにしているつもりです(が、ひたすらキャラクターが多いのであまりオススメできません…) ★展開の都合上、礼奈の誕生日は親世代の作品と齟齬があります。一種のパラレルワールドとしてご了承いただければ幸いです。 *関連作品 『神崎くんは残念なイケメン』(香子視点) 『モテ男とデキ女の奥手な恋』(政人視点)  上記二作を読めばキャラクターは押さえられると思います。 (以降、時系列順『物狂ほしや色と情』、『期待ハズレな吉田さん、自由人な前田くん』、『さくやこの』、『爆走織姫はやさぐれ彦星と結ばれたい』、『色ハくれなゐ 情ハ愛』、『初恋旅行に出かけます』)

番(つがい)と言われても愛せない

黒姫
恋愛
竜人族のつがい召喚で異世界に転移させられた2人の少女達の運命は?

誰も残らなかった物語

悠十
恋愛
 アリシアはこの国の王太子の婚約者である。  しかし、彼との間には愛は無く、将来この国を共に治める同士であった。  そんなある日、王太子は愛する人を見付けた。  アリシアはそれを支援するために奔走するが、上手くいかず、とうとう冤罪を掛けられた。 「嗚呼、可哀そうに……」  彼女の最後の呟きは、誰に向けてのものだったのか。  その呟きは、誰に聞かれる事も無く、断頭台の露へと消えた。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~

涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!

【完結】召喚された2人〜大聖女様はどっち?

咲雪
恋愛
日本の大学生、神代清良(かみしろきよら)は異世界に召喚された。同時に後輩と思われる黒髪黒目の美少女の高校生津島花恋(つしまかれん)も召喚された。花恋が大聖女として扱われた。放置された清良を見放せなかった聖騎士クリスフォード・ランディックは、清良を保護することにした。 ※番外編(後日談)含め、全23話完結、予約投稿済みです。 ※ヒロインとヒーローは純然たる善人ではないです。 ※騎士の上位が聖騎士という設定です。 ※下品かも知れません。 ※甘々(当社比) ※ご都合展開あり。

処理中です...