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317 大人になった偽王子(猫耳)
しおりを挟む「……って、あれ? な~んだ、よく見たら召喚主じゃん! こっちの世界にも獣人がいるのかとテンション爆上がりで、うっかりヤっちゃったり殺っちゃったりするトコだったぜ。危ない、危ない。ったく、春先にこういう紛らわしいことすんのやめろよなー」
あまりの衝撃に固まっていると、猫ちゃんは私の顔をジッと見つめて、心底ガッカリしたように肩を落とす。
いや、いや、いや、何でソコ二回言った!? 殺っちゃったり殺っちゃったりって、なんでそんなに攻撃的になってるの!?? メッチャ身の危険を感じるんですけど!!!!
確かに、これまでも偽王子(猫耳)には思い出したように度々命を狙われてきたけれど、ご飯をあげたり一緒にゲームをしたり、それなりに仲良くしてきたつもりだったのに。
さすがは気まぐれな猫ちゃん。ツンが過ぎる。
「あれ?」
ふと気がつけば。今回、私がイタズラに使った猫耳カチューシャがベッドの上に転がっていた。どうやら偽王子(猫耳)に押し倒された拍子に頭から外れてしまったようだ。
ああ、なるほど。そのおかげで猫ちゃんが正気に戻ったのか。助かった。
まあ、これって100円とは思えないほどによくできているしね。そのせいで同種族と思われて、猫ちゃんが激おこ状態になってしまったらしい。
考えてみれば飼い猫でも窓の外の猫を見て機嫌が悪くなったりするし、当然と言えば当然かもしれない。危ない、危ない。
これは猫ちゃん相手に変なイタズラを仕掛けた私が悪いですね。しっかりと反省しなくては。
それにしても……。
「…その……猫ちゃん……なんだよ、ね?」
先ほどから、私を押さえつけて見下ろしている猫ちゃん。その左右で色の違う神秘的な目と、柔らかそうな黒髪は記憶の中の偽王子(猫耳)そのもの……なんだけど。
大きさが違うと言うか、何と言うか。
面影をしっかりと残したまま、急に大人になっちゃった感じ。
出会った頃はどう見ても小中学生くらいの悪ガキだったのに、今の偽王子(猫耳)は立派な青年。猫ならではの魅惑的な気品まで加わって、王子(本物)と大差ないくらいの外見になっている。
いや、確かに久しぶりに会った猫ちゃんは体重も増えて大人サイズになっていたけれど。まさか、本体(?)の方までこんなに大きく育っているとは思わなかった。
その、あまりの変貌ぶりに正直落ち着かない。
「……はあ? 召喚主ってばなに言ってんの? オレの他にいったい誰がいるっていう……あ!! この前は気にもしてなかったけど……まさかお前、オレがちょっと謹慎食らっている間に浮気して、この部屋に他の猫を連れ込んだりしてたんじゃないだろうな? 誤魔化したって獣人は鼻がいいから匂いで判るんだからな? どれどれ、チェックしてやる」
スンスンスンスン……。
スンスンスンスン……。
急に不機嫌になった猫ちゃんは私の上に馬乗りになったまま、念入りに全身の匂いをチェックしてくる。
え。ちょ、やめて。
さっきお風呂入ったばっかとはいえ、そこまでされると流石に気になるんですけど……!
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