54 / 64
リリーside
20 繰り返される過ち
しおりを挟む「今日は私のために同窓会を開いてくれてありがとう! 会えてうれしいわ。でも――ごめんね、みんな! 私、真実の愛にようやく気付いたの。だから、さよならっ!」
「ちょ、待ってくれリリー! 約束が違う!」
同窓会当日。あちらに召喚された私は、クリスが現状を把握する前に逃げ出した。手荷物のカバンには現金も入っているから不安はない。後ろからクリスが追ってくる声が聞こえたけど振り返らなかった。
そして――私は無事、ユージと再会した。ドレス姿の私にユージはびっくりしていたけれど、とても喜んでくれた。特定の相手はいなかったようで、彼と私は再び結ばれた。
妊娠して、すぐに彼と結婚した。戸籍はどうにかなったみたい。偉い人が色々説明してくれたけど、要約すると――まあ、良くあることだそうだ。説明の場にいた黒ずくめの人を見たことがある気がしたけど思い出せなかった。
ああ、これで今度こそ幸せになれるのね。
もう間違えない、もう嘘はこりごりよ。
入籍して名前も変わって、生まれ変わったような気持ちで出産したのは――。
金色の髪に紫の目の、クリスそっくりの男の子だった。
「ほ……ほら、再会した時のユージそっくりだわ! 子供にもその影響が……」
目の前の、黒髪黒目のユージに私は言った。
彼と再会したとき……ユージは昔と同じように、金髪に染めて紫のカラコンをつけていた。今はやんちゃな様子はなりを潜め、妻と子供のために働くからと本来の色に戻している。
ああ、結局また私は嘘をついた。何度繰り返せば気が済むのだろう。もうだめだ。そう、思ったのに。
「本当だ。俺の、大好きな髪と目の色だから嬉しいな。素敵な赤ん坊をありがとう、ご苦労様」
そう言って、ユージは笑顔で私と子供を抱きしめた。
そこからは……信じられないくらい幸せだった。
ユーリと名付けた息子は――見た目はクリスそっくりだけど、中身は成長するたびユージによく似ていった。私はユージンのときのように罪の意識から息子の紫の目から視線をそらそうとしたけれど、ユージがそれを許さなかった。「リリー、ほら、ユーリの奇麗なおめめを見てあげて」そう言って、ユージはさりげなく私を誘導する。そんなことをしているうちに、ごく自然に、まるで普通の親子のように過ごせるようになっていた。
ユージはユーリをとても可愛がっているけれど、悪いことをしたらきちんと叱る。クリスのように何でも我が儘を聞いたりしない。時には親子で喧嘩もしたりするけれど、最後はちゃんと仲直り。何年もそんな普通の幸せが続いてそれが当たり前になって、私自身、自分の罪を忘れかけていた頃、それは起きた。
日々、元気をなくしていく息子。顔からは笑みが消えていき、口数も減っていく。学校から帰ってくると、何やら考え込むことが多くなった。
髪と目の色が原因で。
学校で、ユーリがいじめにあっていた。
ユーリは何も言ってこないが、そのせいで虐められていると、息子の幼馴染の女の子が教えてくれた。
小さい頃は疑問に思わなくても、ある程度成長すると、周囲との「違い」が目につくようになるのだろう。子供はときに残酷だから。
ああ、どうしよう。全ては私の軽率な行いのせいなのに。息子は何も悪くないのに。でも、怖い。真実を話してこの幸せが壊れるのが怖い。でも、このままでは――。
保身に走って何もできない私とは違い、ユージの行動は早かった。
息子の幼馴染から連絡を受け、ユーリがいじめられていることを知ったその日の夜には、彼は黒髪を金髪に染め、紫色のカラーコンタクトをつけていた。
私にとっては見慣れた姿だが、ユーリは黒髪黒目のユージしか知らない。紫色の目を白黒させて驚いていた。
「お父さん、その髪と目どうしたの?」
「昔に戻しただけだよ。ああ、そうか。ユーリは見たことなかったね」
ユージはそう言って、アルバムを引っ張り出して息子に見せていた。「わあ、僕と同じだ。あ、お母さんもいる」初めて見る親の姿に、息子は興味津々だった。ユージとユーリは顔はあまり似ていないが、そもそも息子の顔立ちはどことなく母親である私に似ているし、髪と目の色さえ同じならさほど違いは目立たない。
「でも、何で黒髪にしたの?」
「本当は金髪のままでいたかったけど、結婚して子供が出来たから、就職するときにケジメとして元の黒髪に戻したんだ」
「じゃあ、僕も結婚して子供が出来たら黒髪にするの?」
「ユーリは元々が金髪なんだから、そのままでいいんだよ。せっかく、お父さんが染めてまでなりたかった金髪なんだから。その、奇麗な紫の目もね」
「でも……学校で言われるんだ。僕だけ髪の色も目の色もおかしいって。僕はお父さんに似てないって」
「別にお前がお父さんに似てなくたって、お父さんがお前に似ればいいじゃないか。親子なんだから。ほら、そっくりだ」
仕草も、しゃべり方も。ユーリはユージによく似てる。だから鏡を前に並んでみれば、本当に親子にしか見えなかった。
この日から、息子は元気を取り戻した。
ユージのお父様は再び髪を染めだした彼を見て最初は怒っていたが、徐々に何も言わなくなった。
ユージは結婚を機に父親と和解していた。黒髪にし、父親が経営する企業の子会社で働いていた。せっかく真面目になったと評価されていたのに、私のせいでまた迷惑をかけてしまった。本当は彼には何の関係もないのに。私が嘘をつき続けているせいなのに。
罪悪感に押しつぶされそうになり耐えられなくなった私は――ユージに真実を告白した。
結婚していたこと。恐らくユーリはその人との子供であること。妊娠には気付いていなかったこと。産んですぐに気が付いたけど、言えなくてつい、嘘をついてしまったこと――。
ユージは黙って話を聞いていた。
私の話が終わると、分かっていた、と言った。
33
あなたにおすすめの小説
出来損ないの私がお姉様の婚約者だった王子の呪いを解いてみた結果→
AK
恋愛
「ねえミディア。王子様と結婚してみたくはないかしら?」
ある日、意地の悪い笑顔を浮かべながらお姉様は言った。
お姉様は地味な私と違って公爵家の優秀な長女として、次期国王の最有力候補であった第一王子様と婚約を結んでいた。
しかしその王子様はある日突然不治の病に倒れ、それ以降彼に触れた人は石化して死んでしまう呪いに身を侵されてしまう。
そんは王子様を押し付けるように婚約させられた私だけど、私は光の魔力を有して生まれた聖女だったので、彼のことを救うことができるかもしれないと思った。
お姉様は厄介者と化した王子を押し付けたいだけかもしれないけれど、残念ながらお姉様の思い通りの展開にはさせない。
運命に勝てない当て馬令嬢の幕引き。
ぽんぽこ狸
恋愛
気高き公爵家令嬢オリヴィアの護衛騎士であるテオは、ある日、主に天啓を受けたと打ち明けられた。
その内容は運命の女神の聖女として召喚されたマイという少女と、オリヴィアの婚約者であるカルステンをめぐって死闘を繰り広げ命を失うというものだったらしい。
だからこそ、オリヴィアはもう何も望まない。テオは立場を失うオリヴィアの事は忘れて、自らの道を歩むようにと言われてしまう。
しかし、そんなことは出来るはずもなく、テオも将来の王妃をめぐる運命の争いの中に巻き込まれていくのだった。
五万文字いかない程度のお話です。さくっと終わりますので読者様の暇つぶしになればと思います。
『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています
六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。
しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。
「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!
冤罪で処刑されたら死に戻り、前世の記憶が戻った悪役令嬢は、元の世界に帰る方法を探す為に婚約破棄と追放を受け入れたら、伯爵子息様に拾われました
ゆうき
恋愛
ワガママ三昧な生活を送っていた悪役令嬢のミシェルは、自分の婚約者と、長年に渡っていじめていた聖女によって冤罪をでっちあげられ、処刑されてしまう。
その後、ミシェルは不思議な夢を見た。不思議な既視感を感じる夢の中で、とある女性の死を見せられたミシェルは、目を覚ますと自分が処刑される半年前の時間に戻っていた。
それと同時に、先程見た夢が自分の前世の記憶で、自分が異世界に転生したことを知る。
記憶が戻ったことで、前世のような優しい性格を取り戻したミシェルは、前世の世界に残してきてしまった、幼い家族の元に帰る術を探すため、ミシェルは婚約者からの婚約破棄と、父から宣告された追放も素直に受け入れ、貴族という肩書きを隠し、一人外の世界に飛び出した。
初めての外の世界で、仕事と住む場所を見つけて懸命に生きるミシェルはある日、仕事先の常連の美しい男性――とある伯爵家の令息であるアランに屋敷に招待され、自分の正体を見破られてしまったミシェルは、思わぬ提案を受ける。
それは、魔法の研究をしている自分の専属の使用人兼、研究の助手をしてほしいというものだった。
だが、その提案の真の目的は、社交界でも有名だった悪役令嬢の性格が豹変し、一人で外の世界で生きていることを不審に思い、自分の監視下におくためだった。
変に断って怪しまれ、未来で起こる処刑に繋がらないようにするために、そして優しいアランなら信用できると思ったミシェルは、その提案を受け入れた。
最初はミシェルのことを疑っていたアランだったが、徐々にミシェルの優しさや純粋さに惹かれていく。同時に、ミシェルもアランの魅力に惹かれていくことに……。
これは死に戻った元悪役令嬢が、元の世界に帰るために、伯爵子息と共に奮闘し、互いに惹かれて幸せになる物語。
⭐︎小説家になろう様にも投稿しています。全話予約投稿済です⭐︎
婚約破棄で、おひとり様になれるはずだったのに!?
パリパリかぷちーの
恋愛
主人公ルシアン・ヴァイオレットは、「悪役令嬢」として振る舞う孤独愛好家の公爵令嬢。念願だった第一王子アランとの婚約破棄を言い渡されると、内心では歓喜し、大都会の喧騒から逃れて森の奥の廃墟同然の別荘へと引きこもる。ルシアンの目的は、誰にも邪魔されない至高の静寂ライフを満喫することだった。
しかし、彼女の理想郷にはすでに先客がいた。それは、無口で無愛想だがハイスペックな謎の男、キース。実は彼は、王国の裏社会を統べる『影の英雄』と呼ばれる辺境伯であり、ルシアンの孤高の姿に心奪われた重度の隠れファンだった。
9回巻き戻った公爵令嬢ですが、10回目の人生はどうやらご褒美モードのようです
志野田みかん
恋愛
アリーシア・グランツ公爵令嬢は、異世界から落ちてきた聖女ミアに婚約者を奪われ、断罪されて処刑された。殺されるたびに人生が巻き戻り、そのたびに王太子マクシミリアンはミアに心奪われ、アリーシアは処刑、処刑、処刑!
10回目の人生にして、ようやく貧乏男爵令嬢アリーに生まれ変わった。
もう王太子や聖女には関わらない!と心に決めたのに、病弱な弟のために王宮の侍女として働くことに。するとなぜか、王太子マクシミリアンは聖女ミアには目もくれず、男爵令嬢アリーを溺愛し始めて……。
(頭を空っぽにして笑えることを目指したコメディです。2020年に執筆した作品です。本作を読みたいというお声があったため再掲します)
王太子が悪役令嬢ののろけ話ばかりするのでヒロインは困惑した
葉柚
恋愛
とある乙女ゲームの世界に転生してしまった乙女ゲームのヒロイン、アリーチェ。
メインヒーローの王太子を攻略しようとするんだけど………。
なんかこの王太子おかしい。
婚約者である悪役令嬢ののろけ話しかしないんだけど。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる