【完結】悪役令嬢と自称ヒロインが召喚されてきたけど自称ヒロインの評判がとんでもなく悪い

堀 和三盆

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リリーside

20 繰り返される過ち

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「今日は私のために同窓会を開いてくれてありがとう! 会えてうれしいわ。でも――ごめんね、みんな! 私、真実の愛にようやく気付いたの。だから、さよならっ!」

「ちょ、待ってくれリリー! 約束が違う!」

 同窓会当日。あちらに召喚された私は、クリスが現状を把握する前に逃げ出した。手荷物のカバンには現金も入っているから不安はない。後ろからクリスが追ってくる声が聞こえたけど振り返らなかった。

 そして――私は無事、ユージと再会した。ドレス姿の私にユージはびっくりしていたけれど、とても喜んでくれた。特定の相手はいなかったようで、彼と私は再び結ばれた。

 妊娠して、すぐに彼と結婚した。戸籍はどうにかなったみたい。偉い人が色々説明してくれたけど、要約すると――まあ、良くあることだそうだ。説明の場にいた黒ずくめの人を見たことがある気がしたけど思い出せなかった。

 ああ、これで今度こそ幸せになれるのね。
 もう間違えない、もう嘘はこりごりよ。

 入籍して名前も変わって、生まれ変わったような気持ちで出産したのは――。

 金色の髪に紫の目の、クリスそっくりの男の子だった。


「ほ……ほら、再会した時のユージそっくりだわ! 子供にもその影響が……」

 目の前の、黒髪黒目のユージに私は言った。

 彼と再会したとき……ユージは昔と同じように、金髪に染めて紫のカラコンをつけていた。今はやんちゃな様子はなりを潜め、妻と子供のために働くからと本来の色に戻している。

 ああ、結局また私は嘘をついた。何度繰り返せば気が済むのだろう。もうだめだ。そう、思ったのに。

「本当だ。俺の、大好きな髪と目の色だから嬉しいな。素敵な赤ん坊をありがとう、ご苦労様」

 そう言って、ユージは笑顔で私と子供を抱きしめた。


 そこからは……信じられないくらい幸せだった。
 ユーリと名付けた息子は――見た目はクリスそっくりだけど、中身は成長するたびユージによく似ていった。私はユージンのときのように罪の意識から息子の紫の目から視線をそらそうとしたけれど、ユージがそれを許さなかった。「リリー、ほら、ユーリの奇麗なおめめを見てあげて」そう言って、ユージはさりげなく私を誘導する。そんなことをしているうちに、ごく自然に、まるで普通の親子のように過ごせるようになっていた。
 ユージはユーリをとても可愛がっているけれど、悪いことをしたらきちんと叱る。クリスのように何でも我が儘を聞いたりしない。時には親子で喧嘩もしたりするけれど、最後はちゃんと仲直り。何年もそんな普通の幸せが続いてそれが当たり前になって、私自身、自分の罪を忘れかけていた頃、それは起きた。

 日々、元気をなくしていく息子。顔からは笑みが消えていき、口数も減っていく。学校から帰ってくると、何やら考え込むことが多くなった。

 髪と目の色が原因で。
 学校で、ユーリがいじめにあっていた。

 ユーリは何も言ってこないが、そのせいで虐められていると、息子の幼馴染の女の子が教えてくれた。

 小さい頃は疑問に思わなくても、ある程度成長すると、周囲との「違い」が目につくようになるのだろう。子供はときに残酷だから。

 ああ、どうしよう。全ては私の軽率な行いのせいなのに。息子は何も悪くないのに。でも、怖い。真実を話してこの幸せが壊れるのが怖い。でも、このままでは――。

 保身に走って何もできない私とは違い、ユージの行動は早かった。

 息子の幼馴染から連絡を受け、ユーリがいじめられていることを知ったその日の夜には、彼は黒髪を金髪に染め、紫色のカラーコンタクトをつけていた。

 私にとっては見慣れた姿だが、ユーリは黒髪黒目のユージしか知らない。紫色の目を白黒させて驚いていた。

「お父さん、その髪と目どうしたの?」

「昔に戻しただけだよ。ああ、そうか。ユーリは見たことなかったね」

 ユージはそう言って、アルバムを引っ張り出して息子に見せていた。「わあ、僕と同じだ。あ、お母さんもいる」初めて見る親の姿に、息子は興味津々だった。ユージとユーリは顔はあまり似ていないが、そもそも息子の顔立ちはどことなく母親である私に似ているし、髪と目の色さえ同じならさほど違いは目立たない。

「でも、何で黒髪にしたの?」
「本当は金髪のままでいたかったけど、結婚して子供が出来たから、就職するときにケジメとして元の黒髪に戻したんだ」
「じゃあ、僕も結婚して子供が出来たら黒髪にするの?」
「ユーリは元々が金髪なんだから、そのままでいいんだよ。せっかく、お父さんが染めてまでなりたかった金髪なんだから。その、奇麗な紫の目もね」

「でも……学校で言われるんだ。僕だけ髪の色も目の色もおかしいって。僕はお父さんに似てないって」
「別にお前がお父さんに似てなくたって、お父さんがお前に似ればいいじゃないか。親子なんだから。ほら、そっくりだ」

 仕草も、しゃべり方も。ユーリはユージによく似てる。だから鏡を前に並んでみれば、本当に親子にしか見えなかった。

 この日から、息子は元気を取り戻した。


 ユージのお父様は再び髪を染めだした彼を見て最初は怒っていたが、徐々に何も言わなくなった。

 ユージは結婚を機に父親と和解していた。黒髪にし、父親が経営する企業の子会社で働いていた。せっかく真面目になったと評価されていたのに、私のせいでまた迷惑をかけてしまった。本当は彼には何の関係もないのに。私が嘘をつき続けているせいなのに。

 罪悪感に押しつぶされそうになり耐えられなくなった私は――ユージに真実を告白した。


 結婚していたこと。恐らくユーリはその人との子供であること。妊娠には気付いていなかったこと。産んですぐに気が付いたけど、言えなくてつい、嘘をついてしまったこと――。

 ユージは黙って話を聞いていた。


 私の話が終わると、分かっていた、と言った。



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