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30 宝物の正体
しおりを挟むカーペットに織り込まれていたのは、古い……古い文字。
新獣人国が獣人国と呼ばれていた頃の古い文字だ。もう使われていない……が、リベルタの母国では貴族の教養として習うことがある。
それと、オネストの国へと来てから覚えた、こちらの古い文字。その二つが混ざり合い、模様のようになっている。その両方を知っていないと解読するのは難しいかもしれない。
「ああ、やっぱりそうやって読めるよね! 良かった、僕の予想したとおりだ」
そう言って、オネストから語られたのは驚くべき内容だった。
オネストがまだ小さかったころ。父親の愛妾に命を狙われ、真冬の宝物庫へと閉じ込められたことがあるらしい。そこで、寒さに凍えたオネストがくるまっていたのがこの古いカーペット。命の危機を感じた時に、何故か宝物庫の外へと出ることが出来たそうだ。
「小さい頃は僕も魔力があったからさ、一瞬だけコレを発動することができたんだ。もっとも持っている魔力が少なすぎて、ほんの数メートル移動できただけだけどね」
それでも閉鎖空間から脱出するには十分だった。
その後、オネストの周囲は警備が固められたが、オネストは誰にも魔法陣のことは言わなかった。
……再び同じようなことが起きる可能性があったから。
そのため、彼を閉じ込めた愛妾もなぜオネストが宝物庫から脱出できたのか不思議がっていたそうだ。
オネストはカーペットの存在を気にかけてはいたが、彼の魔力はその件を最後に完全に消えてしまい、魔法陣の効果をもう一度確かめることはできなかった。
そして大人へと成長したものの、冤罪をかけられ結局は追放されてしまった。
オネスト自身も幼かったころの記憶なので魔法陣については半信半疑ではあったが、魔法を使えるリベルタと出会い、お互いの出身国のことを話すうちになんとなく事の真相に気が付いたそうだ。
あれは。ただの骨董品の類ではなく、魔道具と呼ばれる物なのではないか――と。
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