【完結】お前を愛することはないとも言い切れない――そう言われ続けたキープの番は本物を見限り国を出る

堀 和三盆

文字の大きさ
31 / 40

31 建国神話

しおりを挟む

 たった今聞いた話に。こうして目にしている物に。

 リベルタは信じられない思いでいっぱいだった。確かに、新獣人国にも魔道具というものは存在する。――が、それこそ骨董品扱い……というか、前世紀の遺物だ。

 それはもう作れるだけの技術も……発動させるだけの魔力を持つ者もほとんどいないから。

 母国で現存する魔道具も、新獣人国がまだ獣人国と呼ばれていた頃に作られた物なのだ。ただでさえ数が少ないのに、人間国連合との戦争で国が無くなってしまった時に、魔道具もその技術も大半が失われてしまったらしい。

 僅かに残っている魔道具も、魔力が多いと言われる王族ですらそのほとんどが発動できなかったりする。
 例外は番を得て本来の力を取り戻した初代の国王くらいだろうか。

 それが、短い距離とはいえ人間の魔力で発動できたとは。

 いったい、どれだけこの魔法陣の製作者は魔力が高かったのか。その疑問をリベルタが口に出せば、オネストも頷いた。そして、自らの見解を話す。


「僕はね、建国神話にヒントがあると思っている。リベルタはこの国の建国神話を知っている?」

「――ええ。もちろんよ。確か……」


 不思議な力を持つ――人間とは思えぬ美貌の女神がどこからともなく現れて。その不思議な力で奇跡を起こしながら、嘘ばかりで荒れた人心を掌握しながら、やがて王となる男と共に国を作りあげた――。


 この国の者ならば誰もが知っている建国神話だ。
 そして、リベルタもこの話に触れる機会が何度もあった。


『女神の再来だ!!』

 知恵で。魔法で。嘘を見抜く能力で。

 一つ一つ、国に蔓延る問題を解決していくたびに聞こえてくる、国民たちのそんな声。


 オネストと共にこの国を立て直しているうちに、リベルタは建国神話に出てくる女神と同一視されてしまったのだ。

 国民からソレを言われる度に、リベルタは申し訳がない気持ちでいっぱいだった。

 人間はリベルタを美人扱いしてくれるが、竜人としてはごく普通と言っていい外見なのはリベルタが一番よく分かっている。確かに竜人は容姿が美しく、昔から他種族には神々に譬えられることが多いけれど――。

 そこまで考えて。
 バラバラだったピースが奇麗に埋まっていく。


 人間離れした美貌(……かどうかは、ともかく)
 不思議な力(……魔法?)
 嘘にまみれた人心を掌握(……嘘を見抜く力を使った?)


「あ……れ? もしかして、王と共にこの国を創ったとされる女神様って――竜人?」




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

あなたの運命になりたかった

夕立悠理
恋愛
──あなたの、『運命』になりたかった。  コーデリアには、竜族の恋人ジャレッドがいる。竜族には、それぞれ、番という存在があり、それは運命で定められた結ばれるべき相手だ。けれど、コーデリアは、ジャレッドの番ではなかった。それでも、二人は愛し合い、ジャレッドは、コーデリアにプロポーズする。幸せの絶頂にいたコーデリア。しかし、その翌日、ジャレッドの番だという女性が現れて──。 ※一話あたりの文字数がとても少ないです。 ※小説家になろう様にも投稿しています

番?呪いの別名でしょうか?私には不要ですわ

紅子
恋愛
私は充分に幸せだったの。私はあなたの幸せをずっと祈っていたのに、あなたは幸せではなかったというの?もしそうだとしても、あなたと私の縁は、あのとき終わっているのよ。あなたのエゴにいつまで私を縛り付けるつもりですか? 何の因果か私は10歳~のときを何度も何度も繰り返す。いつ終わるとも知れない死に戻りの中で、あなたへの想いは消えてなくなった。あなたとの出会いは最早恐怖でしかない。終わらない生に疲れ果てた私を救ってくれたのは、あの時、私を救ってくれたあの人だった。 12話完結済み。毎日00:00に更新予定です。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

番認定された王女は愛さない

青葉めいこ
恋愛
世界最強の帝国の統治者、竜帝は、よりによって爬虫類が生理的に駄目な弱小国の王女リーヴァを番認定し求婚してきた。 人間であるリーヴァには番という概念がなく相愛の婚約者シグルズもいる。何より、本性が爬虫類もどきの竜帝を絶対に愛せない。 けれど、リーヴァの本心を無視して竜帝との結婚を決められてしまう。 竜帝と結婚するくらいなら死を選ぼうとするリーヴァにシグルスはある提案をしてきた。 番を否定する意図はありません。 小説家になろうにも投稿しています。

君は僕の番じゃないから

椎名さえら
恋愛
男女に番がいる、番同士は否応なしに惹かれ合う世界。 「君は僕の番じゃないから」 エリーゼは隣人のアーヴィンが子供の頃から好きだったが エリーゼは彼の番ではなかったため、フラれてしまった。 すると 「君こそ俺の番だ!」と突然接近してくる イケメンが登場してーーー!? ___________________________ 動機。 暗い話を書くと反動で明るい話が書きたくなります なので明るい話になります← 深く考えて読む話ではありません ※マーク編:3話+エピローグ ※超絶短編です ※さくっと読めるはず ※番の設定はゆるゆるです ※世界観としては割と近代チック ※ルーカス編思ったより明るくなかったごめんなさい ※マーク編は明るいです

ドレスが似合わないと言われて婚約解消したら、いつの間にか殿下に囲われていた件

ぽぽよ
恋愛
似合わないドレスばかりを送りつけてくる婚約者に嫌気がさした令嬢シンシアは、婚約を解消し、ドレスを捨てて男装の道を選んだ。 スラックス姿で生きる彼女は、以前よりも自然体で、王宮でも次第に評価を上げていく。 しかしその裏で、爽やかな笑顔を張り付けた王太子が、密かにシンシアへの執着を深めていた。 一方のシンシアは極度の鈍感で、王太子の好意をすべて「親切」「仕事」と受け取ってしまう。 「一生お仕えします」という言葉の意味を、まったく違う方向で受け取った二人。 これは、男装令嬢と爽やか策士王太子による、勘違いから始まる婚約(包囲)物語。

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

番が逃げました、ただ今修羅場中〜羊獣人リノの執着と婚約破壊劇〜

く〜いっ
恋愛
「私の本当の番は、 君だ!」 今まさに、 結婚式が始まろうとしていた 静まり返った会場に響くフォン・ガラッド・ミナ公爵令息の宣言。 壇上から真っ直ぐ指差す先にいたのは、わたくしの義弟リノ。 「わたくし、結婚式の直前で振られたの?」 番の勘違いから始まった甘く狂気が混じる物語り。でもギャグ強め。 狼獣人の令嬢クラリーチェは、幼い頃に家族から捨てられた羊獣人の 少年リノを弟として家に連れ帰る。 天然でツンデレなクラリーチェと、こじらせヤンデレなリノ。 夢見がち勘違い男のガラッド(当て馬)が主な登場人物。

私のことが大好きな守護竜様は、どうやら私をあきらめたらしい

鷹凪きら
恋愛
不本意だけど、竜族の男を拾った。 家の前に倒れていたので、本当に仕方なく。 そしたらなんと、わたしは前世からその人のつがいとやらで、生まれ変わる度に探されていたらしい。 いきなり連れて帰りたいなんて言われても、無理ですから。 そんなふうに優しくしたってダメですよ? ほんの少しだけ、心が揺らいだりなんて―― ……あれ? 本当に私をおいて、ひとりで帰ったんですか? ※タイトル変更しました。 旧題「家の前で倒れていた竜を拾ったら、わたしのつがいだと言いだしたので、全力で拒否してみた」

処理中です...