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31 建国神話
しおりを挟むたった今聞いた話に。こうして目にしている物に。
リベルタは信じられない思いでいっぱいだった。確かに、新獣人国にも魔道具というものは存在する。――が、それこそ骨董品扱い……というか、前世紀の遺物だ。
それはもう作れるだけの技術も……発動させるだけの魔力を持つ者もほとんどいないから。
母国で現存する魔道具も、新獣人国がまだ獣人国と呼ばれていた頃に作られた物なのだ。ただでさえ数が少ないのに、人間国連合との戦争で国が無くなってしまった時に、魔道具もその技術も大半が失われてしまったらしい。
僅かに残っている魔道具も、魔力が多いと言われる王族ですらそのほとんどが発動できなかったりする。
例外は番を得て本来の力を取り戻した初代の国王くらいだろうか。
それが、短い距離とはいえ人間の魔力で発動できたとは。
いったい、どれだけこの魔法陣の製作者は魔力が高かったのか。その疑問をリベルタが口に出せば、オネストも頷いた。そして、自らの見解を話す。
「僕はね、建国神話にヒントがあると思っている。リベルタはこの国の建国神話を知っている?」
「――ええ。もちろんよ。確か……」
不思議な力を持つ――人間とは思えぬ美貌の女神がどこからともなく現れて。その不思議な力で奇跡を起こしながら、嘘ばかりで荒れた人心を掌握しながら、やがて王となる男と共に国を作りあげた――。
この国の者ならば誰もが知っている建国神話だ。
そして、リベルタもこの話に触れる機会が何度もあった。
『女神の再来だ!!』
知恵で。魔法で。嘘を見抜く能力で。
一つ一つ、国に蔓延る問題を解決していくたびに聞こえてくる、国民たちのそんな声。
オネストと共にこの国を立て直しているうちに、リベルタは建国神話に出てくる女神と同一視されてしまったのだ。
国民からソレを言われる度に、リベルタは申し訳がない気持ちでいっぱいだった。
人間はリベルタを美人扱いしてくれるが、竜人としてはごく普通と言っていい外見なのはリベルタが一番よく分かっている。確かに竜人は容姿が美しく、昔から他種族には神々に譬えられることが多いけれど――。
そこまで考えて。
バラバラだったピースが奇麗に埋まっていく。
人間離れした美貌(……かどうかは、ともかく)
不思議な力(……魔法?)
嘘にまみれた人心を掌握(……嘘を見抜く力を使った?)
「あ……れ? もしかして、王と共にこの国を創ったとされる女神様って――竜人?」
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