【完結】有能外交官はドアマット夫人の笑顔を守りたい

堀 和三盆

文字の大きさ
13 / 24

13 穏便に離婚する方法

しおりを挟む

 そうやって密かにサポートをする一方で、この状況を打破する方法についても調べ続けた。

 この国では運命の番がこれでもかというほど優遇されている。それは『一夫一婦制』という原則を歪めてしまうほどに根深いものだ。
 しかし、元凶とも言えるそこにこそ、何か解決の糸口があるのではないか。

 そうやって当たりを付けて調べているうちに気が付いた。

 獣人には必ず一人運命の番がいる。
 結婚後に出会った場合は特例として運命の番を第二の伴侶として迎えることが許される。けれど『保護』を目的として、既にいる伴侶を追い出すようなことは許されない。

 けれど――

 全ての獣人に運命の番がいるのならば、運命の番の出現により日陰に追いやられてしまった伴侶にも運命の番がいるのではないか。

 それに、番が必ず独身とは限らない。

 お互いに結婚している者同士が運命の番だと判明するケースだってあるはずだ。




 デュナミスは過去の事例を徹底的に調べて、ようやく答えに辿り着いた。やはり、運命の番による特例措置は『結婚』だけでなく、『離婚』についても存在していた。

 まず、運命の番がお互いに既婚者だった場合は特例での『重婚』が認められるが、離婚は認められない。配偶者保護の前提が変わらぬためだ。

 しかし――婚姻している夫婦の双方に運命の番が見つかった場合は配偶者を保護する必要が無くなったとして、『特例での離婚』が認められるのだ。
 過去には番の憂いを失くすために手間と金を惜しみなく使い、伴侶側の番を見つけ出して離婚にこぎつけたケースが数件残されていた。

 夫と妻の双方が自然に番と出会ったケースは見つけられなかったことから、この国でもそこまで番との遭遇率が高いわけでもないらしい。
 従って、この方法はあまり現実的ではない。

 そこで、重要となってくるのがもう一つの特例措置だ。

 これは国際交流が進む中で他種族の文化に配慮して定められたもので、人間については『求婚者』が現れれば『番に相当する』として、特例での離婚が認められるのだ。

 ただ、人間の暮らす地域はここから遠く離れているため、この組み合わせでの婚姻は政略絡みの貴族階級が多い。家同士の思惑が絡む以上、そう簡単に離婚はできないし、貴族は家の体面を慮って離婚・再婚を厭う傾向が強いので、貴族の間でこの特例措置が使われたことはない。だから、唯一の前例は平民だ。

 平民は貴族階級と違って戸籍の管理が厳密ではないため正式な記録には残りづらいのだが、藁をもつかむ思いでそちらについても細かく調査をしてみたところ、ある富裕層の商人がこの制度を利用した記録が見つかった。

 富豪の獣人商人は金にものを言わせて美しいと評判の人間女性を妻として迎え入れたものの、直後に自身の運命の番が現れてしまった。
 その女性には元々将来を誓い合った男がいて、相手が『求婚者』として名乗り出たために番に相当する者であると認められ、両者の間で離婚が成立したのだ。人間の男女は祖国に帰り幸せに暮らしているらしい。

 確認できたのはこの一件のみだったが、前例があるのは大きい。

 そして、伯爵夫人は人間である祖母の血を引いている。外見的にも非常に人間に近い。だからこの特例措置を使える可能性は十分にあるはずだ。


 そうなると――あと必要になるのは彼女への『求婚者』だ。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄していただき、誠にありがとうございます!

風見ゆうみ
恋愛
「ミレニア・エンブル侯爵令嬢、貴様は自分が劣っているからといって、自分の姉であるレニスに意地悪をして彼女の心を傷付けた! そのような女はオレの婚約者としてふさわしくない!」 「……っ、ジーギス様ぁ」  キュルルンという音が聞こえてきそうなくらい、体をくねらせながら甘ったるい声を出したお姉様は。ジーギス殿下にぴったりと体を寄せた。 「貴様は姉をいじめた罰として、我が愚息のロードの婚約者とする!」  お姉様にメロメロな国王陛下はジーギス様を叱ることなく加勢した。 「ご、ごめんなさい、ミレニアぁ」 22歳になる姉はポロポロと涙を流し、口元に拳をあてて言った。 甘ったれた姉を注意してもう10年以上になり、諦めていた私は逆らうことなく、元第2王子であり現在は公爵の元へと向かう。 そこで待ってくれていたのは、婚約者と大型犬と小型犬!? ※過去作品の改稿版です。 ※史実とは関係なく、設定もゆるく、ご都合主義です。 ※独特の世界観です。 ※法律、武器、食べ物など、その他諸々は現代風です。話を進めるにあたり、都合の良い世界観や話の流れとなっていますのでご了承ください。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。

愛しているからこそ、彼の望み通り婚約解消をしようと思います【完結済み】

皇 翼
恋愛
「俺は、お前の様な馬鹿な女と結婚などするつもりなどない。だからお前と婚約するのは、表面上だけだ。俺が22になり、王位を継承するその時にお前とは婚約を解消させてもらう。分かったな?」 お見合いの場。二人きりになった瞬間開口一番に言われた言葉がこれだった。 初対面の人間にこんな発言をする人間だ。好きになるわけない……そう思っていたのに、恋とはままならない。共に過ごして、彼の色んな表情を見ている内にいつの間にか私は彼を好きになってしまっていた――。 好き……いや、愛しているからこそ、彼を縛りたくない。だからこのまま潔く消えることで、婚約解消したいと思います。 ****** ・感想欄は完結してから開きます。

『愛に狂う香り、愛を選ぶ香り ――離婚から始まる私の香り』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
三年の結婚生活を終え、 クリスティンはついに自分の意志で離婚した。 失ったものは何もない。 あるのは、これから自分で選べる未来だけ。 祖母が遺した香りの工房、 自分だけが扱える“特別な香り”、 そして、かつて心を揺らした人たちとの再会。 香りは人を狂わせることもあれば、救うこともある。 けれどクリスティンはもう知っている。 ――どの香りをまとって生きるか決めるのは、自分。 離婚から始まるのは、 奪われない「私の香り」の旅。

記憶喪失の婚約者は私を侍女だと思ってる

きまま
恋愛
王家に仕える名門ラングフォード家の令嬢セレナは王太子サフィルと婚約を結んだばかりだった。 穏やかで優しい彼との未来を疑いもしなかった。 ——あの日までは。 突如として王都を揺るがした 「王太子サフィル、重傷」の報せ。 駆けつけた医務室でセレナを待っていたのは、彼女を“知らない”婚約者の姿だった。

理想の妻とやらと結婚できるといいですね。

ふまさ
恋愛
※以前短編で投稿したものを、長編に書き直したものです。  それは、突然のことだった。少なくともエミリアには、そう思えた。 「手、随分と荒れてるね。ちゃんとケアしてる?」  ある夕食の日。夫のアンガスが、エミリアの手をじっと見ていたかと思うと、そんなことを口にした。心配そうな声音ではなく、不快そうに眉を歪めていたので、エミリアは数秒、固まってしまった。 「えと……そう、ね。家事は水仕事も多いし、どうしたって荒れてしまうから。気をつけないといけないわね」 「なんだいそれ、言い訳? 女としての自覚、少し足りないんじゃない?」  エミリアは目を見張った。こんな嫌味なことを面と向かってアンガスに言われたのははじめてだったから。  どうしたらいいのかわからず、ただ哀しくて、エミリアは、ごめんなさいと謝ることしかできなかった。  それがいけなかったのか。アンガスの嫌味や小言は、日を追うごとに増していった。 「化粧してるの? いくらここが家だからって、ぼくがいること忘れてない?」 「お弁当、手抜きすぎじゃない? あまりに貧相で、みんなの前で食べられなかったよ」 「髪も肌も艶がないし、きみ、いくつ? まだ二十歳前だよね?」  などなど。  あまりに哀しく、腹が立ったので「わたしなりに頑張っているのに、どうしてそんな酷いこと言うの?」と、反論したエミリアに、アンガスは。 「ぼくを愛しているなら、もっと頑張れるはずだろ?」  と、呆れたように言い捨てた。

「君以外を愛する気は無い」と婚約者様が溺愛し始めたので、異世界から聖女が来ても大丈夫なようです。

海空里和
恋愛
婚約者のアシュリー第二王子にべた惚れなステラは、彼のために努力を重ね、剣も魔法もトップクラス。彼にも隠すことなく、重い恋心をぶつけてきた。 アシュリーも、そんなステラの愛を静かに受け止めていた。 しかし、この国は20年に一度聖女を召喚し、皇太子と結婚をする。アシュリーは、この国の皇太子。 「たとえ聖女様にだって、アシュリー様は渡さない!」 聖女と勝負してでも彼を渡さないと思う一方、ステラはアシュリーに切り捨てられる覚悟をしていた。そんなステラに、彼が告げたのは意外な言葉で………。 ※本編は全7話で完結します。 ※こんなお話が書いてみたくて、勢いで書き上げたので、設定が緩めです。

とある伯爵の憂鬱

如月圭
恋愛
マリアはスチュワート伯爵家の一人娘で、今年、十八才の王立高等学校三年生である。マリアの婚約者は、近衛騎士団の副団長のジル=コーナー伯爵で金髪碧眼の美丈夫で二十五才の大人だった。そんなジルは、国王の第二王女のアイリーン王女殿下に気に入られて、王女の護衛騎士の任務をしてた。そのせいで、婚約者のマリアにそのしわ寄せが来て……。

離婚寸前で人生をやり直したら、冷徹だったはずの夫が私を溺愛し始めています

腐ったバナナ
恋愛
侯爵夫人セシルは、冷徹な夫アークライトとの愛のない契約結婚に疲れ果て、離婚を決意した矢先に孤独な死を迎えた。 「もしやり直せるなら、二度と愛のない人生は選ばない」 そう願って目覚めると、そこは結婚直前の18歳の自分だった! 今世こそ平穏な人生を歩もうとするセシルだったが、なぜか夫の「感情の色」が見えるようになった。 冷徹だと思っていた夫の無表情の下に、深い孤独と不器用で一途な愛が隠されていたことを知る。 彼の愛をすべて誤解していたと気づいたセシルは、今度こそ彼の愛を掴むと決意。積極的に寄り添い、感情をぶつけると――

処理中です...