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3:ダンジョンクローラーになろう
351:龍脈の回廊、第八回猪蟹屋経営会議
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「では、第八回猪蟹屋経営会議を始めます」
リオレイニアが宣言する。
ココは猪蟹屋本店、つまり大通りに面した串焼きメインの店舗である。
閉められた扉の外には、『本日休業中』の札が下げられている。
〝オルコトリアさん砲弾事件〟を正式名称とした、旧ギルド屋舎倒壊事件につぐ大事件。
そして同日におきた〝テンプーラゴウ暴走事件〟。
この二つの事件により、昨夜予定されていた〝晩餐会の予行演習は一日延期された。
「よろしくニャア」「はぁーい♪」「おうよ」「ははは……はぁ」
答えるのは猪蟹屋関係者――だいたい、いつもの面々だ。
ネコアタマ青年、レイダ、ノヴァド工房長、そしてオルコトリア。
猫族の彼は猪蟹屋開店当初から、串揚げ業務に携わっている。
幼い少女は、オーナー冒険者シガミーと同等の権利を主張。その理由は、「友達だから」。
職人を束ねる工房長は、猪蟹屋が販売中の収納魔法具に携わっている。
板状の筐体デザインを、使いやすくデザインし直したり――
収納される調理道具一式(机・椅子・鍋など)を作成したりと――
猪蟹屋製品には、必要な人物だ。
オルコトリアはシガミーがこの世界に転生してからずっと、昼時に顔を出しては帰っていく程度の間柄。
ニゲルが男性の友人筆頭なら、彼女は元の(行儀が悪い方の)シガミーの――
女性の友人筆頭だろう。
猪蟹屋業務とは、ほとんど無関係だが、なぜかココに居る。
「どうしたんですか、オルコトリアさぁぁん?」
冷静な彼女にしては、含みのある口調。
その口元はかすかに、ほころんでいる。
ウマの合わない鬼の受付嬢への対応は――
ニゲル青年に対する塩対応ほどではないものの――
おざなりになってしまうようだ。
「どうしたもこうしたもないわよ。ギルドの仕事も山のように……それこそ倉庫一個分の書類仕事が残ってるのに――ぶつぶつぶつぶつ――ごきりっ!!」
焦り苛立つ感情のままに、二の腕が倍化。
しかし手近に、殴れる物がなかったからか――しゅるる、としぼんだ。
「それは仕方がないでしょう? 建てなおしたばかりのギルド会館を、また壊したのですから」
「そーだニャア♪ 首にならなかっただけ、良かったんじゃないのかニャア?」
二人とも悪気はない。気の知れた相手であるから、遠慮がないのだ。
「また壊すといけないから、大事を取って今日明日は……そうだな、人員をかり出された猪蟹屋の手伝いにでもまわってくれ――これはギルド長命令だよぉ」
子供が気取った様子で、そんなことを言い出した。
「ふふふ、さすが親子ですね♪」
「がははははっ――たしかにそっくりだなぁ!」
ちなみに〝オルコトリアさん砲弾事件〟の銃身担当責任を取るため、彼もこうして駆り出されているのは言うまでもない。
調子に乗ったレイダは、しきりに目の端を持ちあげてみせる。
父親の真似をして、掛けてもいない眼鏡をクイクイしているのだ。
「はぁぁ……似てる似てる、ほんとやめて――むぎゅ! ソレより本当にあたしが参加してもいいの? お店の行く末を決める会議なんでしょ?」
しきりに顔をよせてくる、ウザい子供の手をつかむ鬼の娘。
「構いません。猪蟹屋筆頭お味見役のイオノファラーさまから――」
コトリ。
取り出したのは――神々や、シガミーがよく使う黒い板。
ふぉん♪
『イオノ>会議参加者すべてに裁量権を与えますので、
シガミー不在の今だからこそ、逆に、
業績を伸ばすチャンスじゃね?』
「このように力強いお言葉を、頂いていますので、どうぞご心配なく」
鬼の顔を見つめるメイド。
もうその顔に、ゆるんだ様子はない。
「革新的なのか、ただただ雑なのか……判断に苦しむわね?」
黒板を見つめ、レイダの手を放してやる鬼の娘。
目のまえの皿から饅頭をひとつ――もぐり♪
色々と落ち込んでいても、オヤツに手は伸びる。
「――私としては、明日の〝ミノタウロースお披露目会〟のほうが気がかりです……ふぅ」
仮面の上から目頭を押さえる、元侍女長にしてガムラン財政にも参画する才女。
「ソッチの心配はいらねぇんじゃねぇか? 必要な道具や金物、食器に台座や舞台は、ウチの連中があらかた仕上げて、さっき納めてきたしよ」
酒瓶でも探してるのか――鍛冶方の長が店内を見わたしている。
「ええ、ざっと私も確認しましたが、お行儀の良いシガミー……カヤノヒメさまは実に優秀です。お任せしておけば子細滞りなく、準備が整うでしょう」
「なら、何が心配なんだ?」
工房長の手が、饅頭がのった皿をひきよせた。
「……そうですねココに居る面々なら、ちょうど良いかも知れません。のちほど議題にしますので、そのときお話しします」
立ちあがり、壁の大黒板に黒筆で『本日の議題はふたつ』などと書き込んでいく給仕服。
「あれ? 私のお菓子がないよ?」
レイダが目のまえの皿をみつめて、訴えた。
「あら? さっきちゃんと用意したはずですが? オルコトリアさん、いけませんよ。腹いせに子供のオヤツをぶんどっては」
コトリと自分の皿を、まるごと与えるリオレイニア。
「いいの? ありがとう♪」
「ちょっと、人聞きの悪いこと言わないで――コトリ」
皿にのこった饅頭は二個。それを子供に差し出す一本角の鬼。
「じゃあ、俺のもやるぞ――コトリ」
一個手に取り、のこりを差しだす工房長。
レイダの前の饅頭は――7個。
山積みのそれが――ぴょこん♪
皿から一個、飛び出した。
「「「「ぅわぎゃっ!?」」」」
おどろく面々。
飛び出した饅頭が――ぱす。
空気を食むような音をたて、たちどころに消えた。
皿からまた別の饅頭が、飛びだし――ばらばららら。
バランスを崩した饅頭が、テーブルに転がった。
ころがる饅頭の一個が、ジタバタともがく。
それはまるで、饅頭を食べた透明な何かが――
饅頭の下敷きに、なったようにも見えた。
「「「「な、なんか居る!?」」」」
椅子に跳びあがるレイダと、オルコトリアとリオレイニア。
ガチャン――――ゴゴォン!
巨大な鉄塊。金槌と呼ぶには無骨すぎる、武器をかまえる工房長!
もがいていた饅頭がテーブルを走りぬけ――
ぽとがちゃと、床に落ちた。
リオレイニアが宣言する。
ココは猪蟹屋本店、つまり大通りに面した串焼きメインの店舗である。
閉められた扉の外には、『本日休業中』の札が下げられている。
〝オルコトリアさん砲弾事件〟を正式名称とした、旧ギルド屋舎倒壊事件につぐ大事件。
そして同日におきた〝テンプーラゴウ暴走事件〟。
この二つの事件により、昨夜予定されていた〝晩餐会の予行演習は一日延期された。
「よろしくニャア」「はぁーい♪」「おうよ」「ははは……はぁ」
答えるのは猪蟹屋関係者――だいたい、いつもの面々だ。
ネコアタマ青年、レイダ、ノヴァド工房長、そしてオルコトリア。
猫族の彼は猪蟹屋開店当初から、串揚げ業務に携わっている。
幼い少女は、オーナー冒険者シガミーと同等の権利を主張。その理由は、「友達だから」。
職人を束ねる工房長は、猪蟹屋が販売中の収納魔法具に携わっている。
板状の筐体デザインを、使いやすくデザインし直したり――
収納される調理道具一式(机・椅子・鍋など)を作成したりと――
猪蟹屋製品には、必要な人物だ。
オルコトリアはシガミーがこの世界に転生してからずっと、昼時に顔を出しては帰っていく程度の間柄。
ニゲルが男性の友人筆頭なら、彼女は元の(行儀が悪い方の)シガミーの――
女性の友人筆頭だろう。
猪蟹屋業務とは、ほとんど無関係だが、なぜかココに居る。
「どうしたんですか、オルコトリアさぁぁん?」
冷静な彼女にしては、含みのある口調。
その口元はかすかに、ほころんでいる。
ウマの合わない鬼の受付嬢への対応は――
ニゲル青年に対する塩対応ほどではないものの――
おざなりになってしまうようだ。
「どうしたもこうしたもないわよ。ギルドの仕事も山のように……それこそ倉庫一個分の書類仕事が残ってるのに――ぶつぶつぶつぶつ――ごきりっ!!」
焦り苛立つ感情のままに、二の腕が倍化。
しかし手近に、殴れる物がなかったからか――しゅるる、としぼんだ。
「それは仕方がないでしょう? 建てなおしたばかりのギルド会館を、また壊したのですから」
「そーだニャア♪ 首にならなかっただけ、良かったんじゃないのかニャア?」
二人とも悪気はない。気の知れた相手であるから、遠慮がないのだ。
「また壊すといけないから、大事を取って今日明日は……そうだな、人員をかり出された猪蟹屋の手伝いにでもまわってくれ――これはギルド長命令だよぉ」
子供が気取った様子で、そんなことを言い出した。
「ふふふ、さすが親子ですね♪」
「がははははっ――たしかにそっくりだなぁ!」
ちなみに〝オルコトリアさん砲弾事件〟の銃身担当責任を取るため、彼もこうして駆り出されているのは言うまでもない。
調子に乗ったレイダは、しきりに目の端を持ちあげてみせる。
父親の真似をして、掛けてもいない眼鏡をクイクイしているのだ。
「はぁぁ……似てる似てる、ほんとやめて――むぎゅ! ソレより本当にあたしが参加してもいいの? お店の行く末を決める会議なんでしょ?」
しきりに顔をよせてくる、ウザい子供の手をつかむ鬼の娘。
「構いません。猪蟹屋筆頭お味見役のイオノファラーさまから――」
コトリ。
取り出したのは――神々や、シガミーがよく使う黒い板。
ふぉん♪
『イオノ>会議参加者すべてに裁量権を与えますので、
シガミー不在の今だからこそ、逆に、
業績を伸ばすチャンスじゃね?』
「このように力強いお言葉を、頂いていますので、どうぞご心配なく」
鬼の顔を見つめるメイド。
もうその顔に、ゆるんだ様子はない。
「革新的なのか、ただただ雑なのか……判断に苦しむわね?」
黒板を見つめ、レイダの手を放してやる鬼の娘。
目のまえの皿から饅頭をひとつ――もぐり♪
色々と落ち込んでいても、オヤツに手は伸びる。
「――私としては、明日の〝ミノタウロースお披露目会〟のほうが気がかりです……ふぅ」
仮面の上から目頭を押さえる、元侍女長にしてガムラン財政にも参画する才女。
「ソッチの心配はいらねぇんじゃねぇか? 必要な道具や金物、食器に台座や舞台は、ウチの連中があらかた仕上げて、さっき納めてきたしよ」
酒瓶でも探してるのか――鍛冶方の長が店内を見わたしている。
「ええ、ざっと私も確認しましたが、お行儀の良いシガミー……カヤノヒメさまは実に優秀です。お任せしておけば子細滞りなく、準備が整うでしょう」
「なら、何が心配なんだ?」
工房長の手が、饅頭がのった皿をひきよせた。
「……そうですねココに居る面々なら、ちょうど良いかも知れません。のちほど議題にしますので、そのときお話しします」
立ちあがり、壁の大黒板に黒筆で『本日の議題はふたつ』などと書き込んでいく給仕服。
「あれ? 私のお菓子がないよ?」
レイダが目のまえの皿をみつめて、訴えた。
「あら? さっきちゃんと用意したはずですが? オルコトリアさん、いけませんよ。腹いせに子供のオヤツをぶんどっては」
コトリと自分の皿を、まるごと与えるリオレイニア。
「いいの? ありがとう♪」
「ちょっと、人聞きの悪いこと言わないで――コトリ」
皿にのこった饅頭は二個。それを子供に差し出す一本角の鬼。
「じゃあ、俺のもやるぞ――コトリ」
一個手に取り、のこりを差しだす工房長。
レイダの前の饅頭は――7個。
山積みのそれが――ぴょこん♪
皿から一個、飛び出した。
「「「「ぅわぎゃっ!?」」」」
おどろく面々。
飛び出した饅頭が――ぱす。
空気を食むような音をたて、たちどころに消えた。
皿からまた別の饅頭が、飛びだし――ばらばららら。
バランスを崩した饅頭が、テーブルに転がった。
ころがる饅頭の一個が、ジタバタともがく。
それはまるで、饅頭を食べた透明な何かが――
饅頭の下敷きに、なったようにも見えた。
「「「「な、なんか居る!?」」」」
椅子に跳びあがるレイダと、オルコトリアとリオレイニア。
ガチャン――――ゴゴォン!
巨大な鉄塊。金槌と呼ぶには無骨すぎる、武器をかまえる工房長!
もがいていた饅頭がテーブルを走りぬけ――
ぽとがちゃと、床に落ちた。
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