婚約破棄、ありがとうございます

奈井

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グレン様の方を見上げると、私ではなく湖をまっすぐ見ていられました。

そのお顔はさっきまでの私をからかう目ではありません。

「私にもあなたの様な無邪気で可愛らしい妹が欲しかった。だから、とてもアルが羨ましかった。…私には2人も妹がいますが、とても生意気なんですよ。剣の腕も私より立つので、今は皇太子妃の護衛をしています。」

まるでお手上げとでも言うかのように両手をあげたグレン様は、自慢というよりお困りのご様子。

「すごいですね!女性で護衛のお仕事をされるなんて。」

この国では貴族の女性が仕事を持つと言ったら、侍女になって王宮に上がり、結婚相手を探すときの箔を付ける意味合いが多い。

能力を認められ、しかも重要な役に就けるのはとてもすごい事。

グレン様より剣の腕が立つなんて、きっとご謙遜だと思いますが、護衛のお仕事を与えられるほど腕がおありなのは本当のことでしょう。

少し興奮気味に、そして驚きと尊敬で声を大きくしてしまって、少し恥ずかしくなりました。

これでは昔の私から成長がないですもの、からかわれてもしかたがない。

「ですから、私の家は3人も結婚適齢期の子供がいるのに、それぞれ忙しくて、誰も将来の伴侶を探す気がない。父は好きにすればいい、と言ってくれますが、母に会えば挨拶代わりにいろいろな方を紹介されて…。」

そうでしょうね。

お兄様もよくお母様からお小言を言われてますもの。

「…その中にグレン様の御眼鏡に適うお嬢様がいらしたのではないですか?」

昨日、正式ではないものの結婚の申し込みをされた身としましてはこのような話題は失礼に当たるのではないか、と思い遠慮がちに伺いました。

特に気にされるご様子も無くグレン様はスラスラとお話を続けられます。

「何度か断りきれなくて、お会いした事はありました。私もそのまま流されてもいいか、と思う時もありました。綺麗で控えめな貴族としての振る舞いもすばらしい方ばかりで…でも、それだけでした。」

さっきまで湖を見ていた目は伏せられ、悲しそうな声のグレン様。

「それだけ?…充分ではないですか?」

貴族同士の結婚の条件は満たされているように思えます。

私だって、幼い頃からお互いを知っている仲ですが、親の言うとおりに流されて婚約までしました…この結果ですけど。






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