Rasanz‼︎ーラザンツー

池代智美

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ある日の午後 side

ある日の午後 side:シェルア

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 今日の依頼はドッグカフェの感想を依頼人に連絡するという内容のものだ。
 依頼人のパウラさんは初めての場所は緊張するため、私達に下見に行ってほしいとの事だった。
 一緒に行く事も提案したが、パウラさんの方のスケジュールが合わなかった。
 同行者はサンと大福とよもぎである。
 大福は外出にはしゃいでいる様子だった。

 このドッグカフェは犬を連れていない人も利用出来る上に、店の売上の一部を保護施設に寄付しているらしい。
 カフェの内装はシンプルで、木目調が落ち着いた雰囲気を醸し出していた。
 持ち帰りは勿論、イートインは屋内か屋外かを選択出来るようだ。
 今回は天気がいいから屋外のイートインにした。
 メニューは人間用と犬用、どちらも豊富で目移りしそうな品揃えだった。
 私は先にサンの飲み物と軽食を注文すると、犬用のメニューの中から低カロリーのクッキーを選んだ。

 注文した物を受け取って外に出ると、大福が角のテラス席へと走っていった。
 よもぎも大福の後を追いかけて走る。
 私とサンは二匹について行った。
 止まった大福に此処の席がいいのか聞くと、元気な鳴き声で返事をされた。
 風通しが良かったから気に入ったのかもと言うサンに同意して、椅子に腰掛ける。
 大福とよもぎはテーブルの下に潜ると、行儀良く座った。
 サンに何を選んだのか聞かれて、カロリー控えめのクッキーだと答えると、サンは大福のかと納得していた。
 私はクッキーの入った皿を大福とよもぎの側に置くと、サンにウェットティッシュを渡した。
 両手を拭きながら大福とよもぎに先に食べるよう目で促すと、二匹は美味しそうにクッキーを食べ始めた。

 最近困っている事はないかサンに聞いたが、皆良くしてくれるから困っている事はないらしかった。
 ルイス達が信頼されていて嬉しい半面、遠慮しているのではと少し心配になった。
 この話を掘り下げてもサンを困らせるだけな気がして、私はサンドイッチを口にした。
 チーズ多めがこのサンドイッチの売りらしいが、若い子向けの味付けだと思った。でも味は美味しかった。

 テーブルの下では大福とよもぎが静かにクッキーを食べている音が聞こえる。
 周りの客層は広く、各々が愛犬との時間を過ごしていた。
 ふとサンが小さく声を洩らした。
 サンの視線の先にはエッシらしき人物がいて、その近くには友人らしき女の子がいた。
 適当に言葉を返すと、エッシに声をかけないのか不思議がられた。

……何か誤解を生じた気がする。

 私はサンに、声をかけないのはエッシがプライベートの時間だからだと丁寧に説明した。
 休日に苦手な上司の顔を見るのはエッシも避けたいだろう。
 仲が悪い訳ではないと改めて言うと、私はコーヒーを飲んで一息ついた。
 
 最近のサンの評判について話すと、サンはいやいやそんなと謙遜した。
 私は個人的に動物に好かれる人間に、悪い人間はいないと思っている。
サンに懐いていないように見えるよもぎだって、本能的な部分ではサンを悪意のない人間だと認めているはずだ。
 もっと仲良くなれたらと言うサンに、よもぎは本当に嫌なら近付かないと教えておいた。

 動物が好きか聞くと、サンは好きだと言った。
 最下層では熊を飼っている人間がいる事を教えると、サンはかなり驚いていた。
 犬や猫等と違って、熊と一緒に暮らすには色々と条件がある。
 昔、本物の熊がほしいと言ってロジェに本気で止められたのを思い出した。
そしてサンとの会話で、地上には地下と同じ種類の犬や猫の動物がいた事を知った。
 私が地上にいた頃は、ほとんど家にいたから動物に触れ合う機会もそれほどなかったのである。
 唯一触れ合ったのは小鳥くらいだ。
 他者に危害を加えなければどんな動物でもある程度は飼育が出来るとサンに教えておいた。
  
 突然大福がエッシの方へと走り出した。
 追いかけようとしたが、それより先にサンが動いたため任せる事にした。
 テーブルの下にいたよもぎが靴の先を引っ掻く。
 抱き上げて膝に乗せると、よもぎは大福が走っていった方向を見つめた。
 サン達の方に何気なく目を向けた時、ちょうどエッシとと目が合ったような気がして、軽く手を振った。

「元気だねぇ、大福は」
「アンッ」

 毛並みに沿って撫でると、よもぎは気持ち良さそうに目を瞑った。
 大福は相変わらず女の子に愛でられている。
 サンはエッシとエッシの友人と話をして盛り上がっているようだった。
 私は甘えてくるよもぎを撫でながら、サンと大福が戻ってくるのを待った。

 十分ほどでサンと大福が戻ってきた。
 よもぎは少し怒っていて、大福に犬パンチをお見舞いしていたが、大福は完全に遊びだと思ってじゃれていた。
 サンに大福を連れ戻してくれた御礼を言うと、大福はわかってエッシの所に行ったみたいだと言われた。
 大福に急に走り出した事を注意すると、わかりやすく尻尾を垂らして反省の様子を見せた。
 大福を咎めるようによもぎが鳴く。
 多分懲りないだろうが、少しの間なら約束も守ってくれるだろう。

 事務所に帰ると、サンに大量の郵便物の仕分けを手伝って貰った。
 サンはとても手際が良く、予想していたより作業が早く終わった。

「今日はサンの好きな物を夕食のメニューにするよ。何がいい?」
「えっ! いいんですか?」
「うん。家に着くまで考えておいて」

 大福が羨ましそうにサンを見ていたが、私は気付かないふりをして目を逸らした。
 帰り道、鼻歌でも歌い出しそうなサンは、大福と同じでわかりやすくて可愛らしかった。




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