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花屋さんと雨 side
花屋さんと雨 side:ズズー
しおりを挟む今日は大福とシェルアさんが来るらしい。
朝からグレが嬉しそうにぼくに言ってきた。
外は生憎の雨だけど、お店の中は晴れだからあんまり関係ない。
ぼくはのんびりしながら大福とシェルアさんを待った。
大きな挨拶が聞こえて、声がした方に向かうと、大福とシェルアさんが来ていた。
大福はグレに頭を撫でられて嬉しそうにしている。
ぼくはなんだか面白くなくて、大福の背中に飛び乗った。
大福の背中はやっぱり乗り心地がいい。
乗っかったまま挨拶すると、グレに大福に乗ったら駄目だと怒られた。
確かに誰かを下敷きにするのは良くない事だけど、大福は別に嫌がってないんだから大目に見てほしい。言葉が通じないとこういう時不便だ。
だいたい、ぼくと大福は付き合いが長いのだ。背中に乗ったくらいで壊れる友情なんて持ち合わせていない。
僕を大福の上から降ろそうとしていたグレは、シェルアさんに大丈夫じゃないかと言われて、ぼくを降ろすのをやめた。シェルアさんGJ。
その後は何故かぼく達の体重の話になった。
人間はどうでもいい話をするのが好きな生き物である。
大福の頭を軽く叩いて太ったか聞くと、ショックを受けたみたいでしょんもりしていた。
『丸い方が可愛いからいいじゃん。可愛がられるのだって三角より四角より丸だよ』
そう言って励ましても大福は落ち込んだままだった。
シェルアさんとグレが大福を心配すると、大福は気にしないでと首を横に振った。
大福が太ったのは自業自得と言うと、大福がヤツハシにくるんでよと猛抗議してきた。
……ヤツハシってそもそも何?
大福に聞くと、ヤツハシはJP区のお菓子で焼く前と焼いた後にどっちも食べられるお得なお菓子らしかった。
突然出てきたお菓子のヤツハシの意味はよくわからなかったけど、食べ物の話をする大福は楽しそうだった。
ふーんって感じで聞いていると、シェルアさんが写真を撮ってもいいか聞かれた。
いいよと大福と一緒に返事をすると、シェルアさんは何枚か写真を撮ってぼく達にも見せてくれた。いい感じだ。
大福は何を思ったのか、ぼく達アイドルになれるかなと聞いてきた。
まあなれなくはないから、やぶさかではないと言っておいた。
すると大福はやぶさかの意味がわからなかったみたいで首を傾げた。
『使ってみたかっただけだから意味はわからない』
『そーなんだ』
僕が答えると、大福は納得したような顔で返事をした。
やぶさかの意味は物知りが多いから最下層なら誰かしら知っているはずだろう。
グレとシェルアさんはスマホという機械を手に持って何やら話をしている。
グレは機械音痴だからシェルアさんに色々教わっているみたいだったけど、ちゃんと覚えたかどうかはわからなかった。
話が長くなりそうなため、ぼくは大福に声をかけて店の奥へと移動した。
グレは大福が来る時、いつもおやつを用意してくれるのだ。
ぼく達は静かに今日はジャーキーを味わって食べ終えると、二人の所に戻った。
美味しかったかとグレに聞かれて、大福がうんと答える。
またくれと僕が言うと、シェルアさんはいつもありがとうとグレに御礼を言った。
グレは屈んで大福の顎下を撫でている。
気持ち良さそうにする大福がちょっと羨ましくて、ぼくはまた大福の背中に飛び乗った。
『ウグッ』
大福が短い悲鳴を上げたけど、知らないフリをした。
のしのし大福の背中を踏んでいると、シェルアさんにグレを独占してごめんと謝られた。
ぼくは気にしないでと言いながら前足を伸ばした。
シェルアさんは優しく抱っこしてくれて、気持ちが良かった。
擦り寄って身体をくっつけていると、グレがぼくを甘えただと言った。
余計な事は言わないでほしい。しかも大福まで一緒になって頷くからイラッとした。
『今度よもぎちゃんに会ったら、大福が女の子は柔らかいし優しいし可愛いって言ってたのバラしてやる』
ボソッと呟くと、大福にやめてと懇願された。
鼻で笑ってシェルアさんの胸に頭を擦り付ける。
シェルアさんはしばらくぼくを撫でると、ゆっくりとぼくを床に下ろした。
御礼を言うと、笑顔が返ってきた。
グレはシェルアさんに商品の花を渡すと、お母さんの事を話していた。
大福は大福で紙袋を見ていて、お菓子じゃないよとシェルアさんに言われていた。
相変わらず食い意地が張っている犬だ。
大福はシェルアさんから家のおやつを減らすと言われて、またしょんもりしていた。なんだか面白かった。
そしてどういう訳か、大福はダイエットを頑張ると宣言した。
急な心変わりを不思議に思っていると、グレがぼくを散歩させた方がいいのかなとシェルアさんに言っていた。
——絶対に嫌だ。
ぼくはたまに家の周りを散歩しているし、運動不足なんて医者にも言われていない。
標準体型だからダイエットはいらないのだと言うと、大福に適度な運動は必要なんじゃないのと正論を言われた。
ぼくは大福に体当たりをした。
いくら正論でもぽちゃぽちゃの大福には言われたくなかった。
グレとシェルアさんはぼくを見て笑っていた。
最終的にシェルアさんがぼくがしたい時に散歩をさせるのがいいと言ってくれたから、連れ回される心配はなくなった。
野次を飛ばすと大福がまた正論を言ってきたため、もう一度体当たりをお見舞いした。
別れの挨拶を交わすと、グレはよもぎちゃんも連れてきてねと言った。
またねと言う大福に、またねと返事をする。
ついでに今度お土産持ってきてねとお願いしておいた。
雨の中帰るのは憂鬱なのが一般的だけど、大福はレインコートを着て楽しそうだった。
これが猫と犬の種族の違いって奴なのだろう。
「ズズー、今日もありがとね」
『ハイハイ、ぼくもありがと』
いつもの場所で丸まりながら返事をすると、グレは楽しそうに笑った。
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