Rasanz‼︎ーラザンツー

池代智美

文字の大きさ
86 / 133
花屋さんと雨 side

花屋さんと雨 side:ズズー

しおりを挟む

 今日は大福とシェルアさんが来るらしい。
 朝からグレが嬉しそうにぼくに言ってきた。
 外は生憎の雨だけど、お店の中は晴れだからあんまり関係ない。
 ぼくはのんびりしながら大福とシェルアさんを待った。
 大きな挨拶が聞こえて、声がした方に向かうと、大福とシェルアさんが来ていた。
 大福はグレに頭を撫でられて嬉しそうにしている。
 ぼくはなんだか面白くなくて、大福の背中に飛び乗った。
 大福の背中はやっぱり乗り心地がいい。
 乗っかったまま挨拶すると、グレに大福に乗ったら駄目だと怒られた。
確かに誰かを下敷きにするのは良くない事だけど、大福は別に嫌がってないんだから大目に見てほしい。言葉が通じないとこういう時不便だ。
だいたい、ぼくと大福は付き合いが長いのだ。背中に乗ったくらいで壊れる友情なんて持ち合わせていない。

 僕を大福の上から降ろそうとしていたグレは、シェルアさんに大丈夫じゃないかと言われて、ぼくを降ろすのをやめた。シェルアさんGJ。
 その後は何故かぼく達の体重の話になった。
人間はどうでもいい話をするのが好きな生き物である。
 大福の頭を軽く叩いて太ったか聞くと、ショックを受けたみたいでしょんもりしていた。

『丸い方が可愛いからいいじゃん。可愛がられるのだって三角より四角より丸だよ』

 そう言って励ましても大福は落ち込んだままだった。
 シェルアさんとグレが大福を心配すると、大福は気にしないでと首を横に振った。
 大福が太ったのは自業自得と言うと、大福がヤツハシにくるんでよと猛抗議してきた。

……ヤツハシってそもそも何?

 大福に聞くと、ヤツハシはJP区のお菓子で焼く前と焼いた後にどっちも食べられるお得なお菓子らしかった。
 突然出てきたお菓子のヤツハシの意味はよくわからなかったけど、食べ物の話をする大福は楽しそうだった。
 ふーんって感じで聞いていると、シェルアさんが写真を撮ってもいいか聞かれた。
 いいよと大福と一緒に返事をすると、シェルアさんは何枚か写真を撮ってぼく達にも見せてくれた。いい感じだ。
 大福は何を思ったのか、ぼく達アイドルになれるかなと聞いてきた。

 まあなれなくはないから、やぶさかではないと言っておいた。
すると大福はやぶさかの意味がわからなかったみたいで首を傾げた。

『使ってみたかっただけだから意味はわからない』
『そーなんだ』
 
 僕が答えると、大福は納得したような顔で返事をした。
 やぶさかの意味は物知りが多いから最下層なら誰かしら知っているはずだろう。 
 グレとシェルアさんはスマホという機械を手に持って何やら話をしている。
 グレは機械音痴だからシェルアさんに色々教わっているみたいだったけど、ちゃんと覚えたかどうかはわからなかった。

 話が長くなりそうなため、ぼくは大福に声をかけて店の奥へと移動した。
 グレは大福が来る時、いつもおやつを用意してくれるのだ。
 ぼく達は静かに今日はジャーキーを味わって食べ終えると、二人の所に戻った。
 美味しかったかとグレに聞かれて、大福がうんと答える。
 またくれと僕が言うと、シェルアさんはいつもありがとうとグレに御礼を言った。
 グレは屈んで大福の顎下を撫でている。
気持ち良さそうにする大福がちょっと羨ましくて、ぼくはまた大福の背中に飛び乗った。

『ウグッ』

 大福が短い悲鳴を上げたけど、知らないフリをした。
 のしのし大福の背中を踏んでいると、シェルアさんにグレを独占してごめんと謝られた。
 ぼくは気にしないでと言いながら前足を伸ばした。
 シェルアさんは優しく抱っこしてくれて、気持ちが良かった。
 擦り寄って身体をくっつけていると、グレがぼくを甘えただと言った。
 余計な事は言わないでほしい。しかも大福まで一緒になって頷くからイラッとした。

『今度よもぎちゃんに会ったら、大福が女の子は柔らかいし優しいし可愛いって言ってたのバラしてやる』

 ボソッと呟くと、大福にやめてと懇願された。
 鼻で笑ってシェルアさんの胸に頭を擦り付ける。
 シェルアさんはしばらくぼくを撫でると、ゆっくりとぼくを床に下ろした。
 御礼を言うと、笑顔が返ってきた。
 グレはシェルアさんに商品の花を渡すと、お母さんの事を話していた。
 大福は大福で紙袋を見ていて、お菓子じゃないよとシェルアさんに言われていた。
 相変わらず食い意地が張っている犬だ。

 大福はシェルアさんから家のおやつを減らすと言われて、またしょんもりしていた。なんだか面白かった。
そしてどういう訳か、大福はダイエットを頑張ると宣言した。
急な心変わりを不思議に思っていると、グレがぼくを散歩させた方がいいのかなとシェルアさんに言っていた。

——絶対に嫌だ。
   
 ぼくはたまに家の周りを散歩しているし、運動不足なんて医者にも言われていない。
 標準体型だからダイエットはいらないのだと言うと、大福に適度な運動は必要なんじゃないのと正論を言われた。
 ぼくは大福に体当たりをした。
いくら正論でもぽちゃぽちゃの大福には言われたくなかった。
 グレとシェルアさんはぼくを見て笑っていた。
 最終的にシェルアさんがぼくがしたい時に散歩をさせるのがいいと言ってくれたから、連れ回される心配はなくなった。
 野次を飛ばすと大福がまた正論を言ってきたため、もう一度体当たりをお見舞いした。

 別れの挨拶を交わすと、グレはよもぎちゃんも連れてきてねと言った。
 またねと言う大福に、またねと返事をする。
ついでに今度お土産持ってきてねとお願いしておいた。
 雨の中帰るのは憂鬱なのが一般的だけど、大福はレインコートを着て楽しそうだった。
 これが猫と犬の種族の違いって奴なのだろう。

「ズズー、今日もありがとね」
『ハイハイ、ぼくもありがと』

 いつもの場所で丸まりながら返事をすると、グレは楽しそうに笑った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

神木さんちのお兄ちゃん!

雪桜 あやめ
キャラ文芸
✨ キャラ文芸ランキング週間・月間1位&累計250万pt突破、ありがとうございます! 神木家の双子の妹弟・華と蓮には"絶世の美男子"と言われるほどの金髪碧眼な『兄』がいる。 美人でカッコよくて、その上優しいお兄ちゃんは、常にみんなの人気者! だけど、そんな兄には、何故か彼女がいなかった。 幼い頃に母を亡くし、いつも母親代わりだったお兄ちゃん。もしかして、お兄ちゃんが彼女が作らないのは自分達のせい?! そう思った華と蓮は、兄のためにも自立することを決意する。 だけど、このお兄ちゃん。実は、家族しか愛せない超拗らせた兄だった! これは、モテまくってるくせに家族しか愛せない美人すぎるお兄ちゃんと、兄離れしたいけど、なかなか出来ない双子の妹弟が繰り広げる、甘くて優しくて、ちょっぴり切ない愛と絆のハートフルラブ(家族愛)コメディ。 果たして、家族しか愛せないお兄ちゃんに、恋人ができる日はくるのか? これは、美人すぎるお兄ちゃんがいる神木一家の、波乱万丈な日々を綴った物語である。 *** イラストは、全て自作です。 カクヨムにて、先行連載中。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

処理中です...