Rasanz‼︎ーラザンツー

池代智美

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酒の席の話 side

酒の席の話 side:メイナード

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 本業はバーのマスター、副業は美容整形の医者。
 たまに本業と副業が逆なんじゃないかと言われる事があるけど、誰が何と言おうと本業はバーのマスターだ。
 昔はアタシも優秀な医者として活躍していて、そんな自分が誇らしかった。
でもアタシは救えない患者の数とこの世界の現状に嫌気が差して、医者を辞めてしまった。
 XX区の外れにバーをオープンして、最初は好きな酒が好きな時に飲めるからと店を開けたい時だけ営業していたけど、数年経てばポツポツお客さんが増え始めて、今ではまあまあ人が通う店になった。
 しなびれたおっさんが多かった店が、今や若い子が多い日もあるほどだ。

 今日は比較的落ち着いていて、常連さんが帰った後は若い女の子が一人入って来た。
 挨拶を交わすと、女の子はカウンターの奥から三番目の席に座った。
 スマホの画面をじっと見る様子から、誰かと待ち合わせをしている事が窺えたけど、しばらくすると整った顔に影を落とした。

「メニュー表ってあります?」
「ああ、はい。どーぞ」
「ありがとうございます」

 メニュー表を渡して注文を待っていると、彼女はサングリアと生ハムを頼んだ。
 アタシは昨日の夜に仕込みで作った薔薇の花型に飾り付けた生ハムをテーブルに出すと、赤ワインでサングリアを作って隣に並べる。

「わ~ありがとうございます。美味しそう」
「召し上がれ~」

 彼女は生ハムを花びらの外側から一枚ずつ食べ始めた。
 ドアベルが鳴って、外のドアが開く。
 目だけそっちに向けるとブラッドちゃんがいた。
 ブラッドちゃんは酒の税率が上がった時に、シェルアちゃんに飲み切れない酒をこの店に回すように言ってくれた所謂出来る男である。
 シェルアちゃんがEMANONのボスという立場で色々貰い物があるのは知っていたけど、まさかあの量の酒を譲って貰えるとは思わなかった。
シェルアちゃん本人は横流しにするのにほんの少し罪悪感があるようだった。
しかし飲まないでそのまま置いているよりも飲んだ方が酒にとってもいいと熱弁すると定期便になった。
そもそも最初から好きな物や消費出来る物を贈ればわざわざ横流しする必要もないのだ。よく調べずに贈った奴が悪い。
 アタシはタダ酒が貰える事を素直に喜んだけど、何もしないのは性に合わないため何度か此処での支払いを奢った。   

 彼女は偶然にもブラッドちゃんの知り合いだったようで、ブラッドちゃんを見るなり顔を歪めた。
 アタシは修羅場になるのを想定したけど彼女は案外理性的で、酒を飲んだら帰ると口にした。
 なんとなく面白そうな予感がして引き止めると、彼女は驚いた顔をした。
 アタシの口調にびっくりしたらしい。
最近はアタシのキャラクターを知って来店する子が多かったから彼女の反応は新鮮だった。
 人をオカマだと言うブラッドちゃんにオネエと言えと反論すると、似たようなもんだろと気にする人が聞いたら炎上しそうな一言を言い放った。
 味はどうか彼女に聞くと、戸惑いながらも美味しいという言葉が返ってくる。
そのまま話を続けると、ブラッドちゃんがアタシを今もおっさんだと言ってきやがった。
 ヘッドロックをかけてやると、ブラッドちゃんは悲鳴を上げた。
 彼女はブラッドちゃんの悲鳴をスルーして酒を飲んでいる。
 営業トークで悩み相談もやっている事を話すと気のない返事を彼女はしたけど、ブラッドちゃんに相談するのやめた方がいいと冗談まじりに言うとそっちの方にはしっかり返事をしていた。
 彼女がブラッドちゃんに相談するのは未来永劫ないらしい。
 失礼だろと吠えるブラッドちゃんをよそに、彼女はまた悠々と酒を飲んだ。

 アタシはブラッドちゃんの注文を受けると、ウイスキーのロックを提供した。
 彼女とブラッドちゃんの関係を聞くと、ただの同僚だと彼女は言った。
 どうやらブラッドちゃんと同じEMANONで働く従業員らしく、世間は狭かった。
 仲がいいと言うと、二人は口を揃えて仲良くないと不満げに返事をする。
 サービスでチーズの盛り合わせを二人に提供すると、エッシちゃんに頼んでないと不思議そうな顔をされた。
 EMANONには開店当時からお世話になっているのだ。
 あの頃は金が足りなくて、ロジェちゃんに壊れた椅子の修理をして貰ったり、シェルアちゃんに合わない帳簿を合わせて貰ったりしていた。
 生活力がないアタシにロジェちゃんは呆れていたけど、シェルアちゃんはまあまあと言ってアタシを擁護してくれた。
 御礼は勿論依頼料で返してはいる。
だがアタシは義理人情を大切にしたい人間のため、こうしてプラスでサービスを提供している。
 アタシはチーズはサービスだと説明すると、改めて自己紹介をした。
 メイちゃんと呼んでとウインクすると、エッシちゃんは丁寧にさん付けしてアタシの名前を呼んだ。
 誰も呼ばないと言うブラッドちゃんに、お黙りと言い返す。
するとエッシちゃんはアタシをじっと見つめてきた。
 見とれたかとからかって聞くと、エッシちゃんじゃなくてブラッドちゃんが好きな奴がいるからそれはないと言ってきた。
 誰かに恋するのは良い事だ。
 恋する乙女は最強だと口にするとオカマはと聞かれたから、時と場合によると返事をしておいた。

 エッシちゃんはブラッドちゃんの脇腹をつねりながら個人情報を教えるなと怒ると、反省していないブラッドちゃんの物言いに更に怒って鳩尾にパンチを入れた。
 常識のあるいい子だと思っていたけど、ブラッドちゃんに対してはちょっと暴力的なようだ。
 若者のアグレッシブさに驚いていると、二人は言い合いを始めて、エッシちゃんはブラッドちゃんの髪を引っ張った。
 ハゲると騒ぐブラッドちゃんが流石に可哀想になって、アタシはエッシちゃんに落ち着くよう声をかけた。
ついでにブラッドちゃんに人の秘密を勝手に喋ったら駄目よと注意すると、ブラッドちゃんはエッシちゃんが好きな人とくっつけば自分が好きな人と結ばれるとよくわからない事を言った。
アタシは思わずどういう計算だと突っ込んだ。

 ブラッドちゃん曰く、恋人になるならシェルアちゃんとロジェちゃんの二人だからその前にエッシちゃんがロジェちゃんとくっつけばあの幼馴染二人がくっつく可能性は半減するとの事だった。
馬鹿だと思ったけど、エッシちゃんが似たような事をブラッドちゃんに言ってくれた。
 罵倒されてもブラッドちゃんは年齢の壁をどうにかする方が先だと言っていて、エッシちゃんの部下としてしか見られていないという正論にもお前だって同じだろと言い返していた。
 エッシちゃんはブラッドちゃんの言い方にカチンと来たみたいで、酒を呷るようにして飲んでいる。
 アタシは二人にそれぞれ注意すると、それじゃ大人は振り向いてくれないと助言した。
 二人は心当たりがあるのかしばらく沈黙した。
でもブラッドちゃんは立ち直りが早くて、喧嘩腰にどうやったら大人が振り向いてくれるのだとアタシに聞いた。
 教えを乞われればそれなりの対応をするけど、態度の悪い奴に教えてやるほどアタシは心が広くない。
 追い払うような仕草をすると、エッシちゃんはヤカラだとブラッドちゃんを罵った。
 ブラッドちゃんは怒っていたけど、今のブラッドちゃんは何処からどう見ても柄の悪いチンピラである。
 まさか好きな人にもその態度なのかと聞くと、エッシちゃんからシェルアちゃんの前では猫を被っていると新情報を知った。
エッシちゃんも猫を被っているけど、ブラッドちゃんみたいにわかりやすくはないらしい。
 お互い仲悪そうに見えても、好きな人に自分をよく見せようとする所は同じなのかとアタシは苦笑した。
 アタシも昔は自分をよく見せようと頑張っていたけど、結局疲れてやめた身だ。
 若いな~と思っていると、エッシちゃんにEMANONと知り合った敬意を尋ねられた。
詳しく説明するのが面倒で端折って話すと、何故かエッシちゃんに物凄い顔をされた。
 おかしな事でも言ったか聞くとブラッドちゃんが返事をしたけど、途中でエッシちゃんの拳が綺麗に入った。
 何も言ってないというエッシちゃんの主張はかなり無理がある。
でも繊細な乙女心はわからないでもないから、気付かないふりをしてアタシは営業トークに戻った。
 此処で聞いた事は口外しないと伝えると、エッシちゃんは微妙な反応をした。
 疑り深い様子は初対面のブラッドちゃんに似ている。
そう言うとエッシちゃんは首を横に振って本気で嫌がった。
 どんだけ嫌なんだと笑っていると、ブラッドちゃんが客を笑うかと目を細めた。

 ブラッドちゃんは黙っていれば顔がいいから女の子達によく声をかけられる。
それなのに同僚のエッシちゃんには嫌がられているのだから人はわからないものだ。
 エッシちゃんは話を聞くと、女の子達の趣味が悪いと引いていた。
 ブラッドちゃんは苛ついた様子でそれなりにモテると豪語して酒を飲み干すと、乱暴にグラスをテーブルに置いた。
 好きな人にはモテないわよねと事実を言うと、ブラッドちゃんはそれを認めた上で泣いた。
 強がっても正論はキツかったらしい。
 ブラッドちゃんの頭をつついても反応はなかった。
 エッシちゃんは、ブラッドちゃんが遊び人だから信用がないと言う。
アタシは初めて知るブラッドちゃんの情報に半信半疑でいたけど、ブラッドちゃんは色んな女の子と寝ているようだった。

……一途と言っていたけど、やる事はやってるのか。

 まあ若いからそんなもんかと話を聞き流して刺されないようにと忠告すると、エッシちゃんがいっそ刺されろと吐き捨てるように言った。
 ブラッドちゃんはお金を払ってるんだから刺されないと平然とした態度でいる。
別にそういうサービスを使う事自体は否定しないけど、大っぴらに言う事ではない。
 アタシは慌ててそういうのは公言するなとブラッドちゃんに耳打ちした。
しかしブラッドちゃんは不思議そうに添い寝だけだと口にした。
 聞き返すと性行為は一切していないと言う。
 ブラッドちゃんの言い分を聞くと、本当に不眠症で眠れないからそういうサービスを使っているらしかった。
 最低だとエッシちゃんが言ったのを皮切りに、二人の口喧嘩が始まる。
 手が出そうなエッシちゃんをやんわり手で制すと、アタシは二人の仲裁に入った。
 ブラッドちゃんに改めて不眠症なのかと聞くと同じ答えが返ってきて、エッシちゃんは病院に行けと正論を言った。
 ブラッドちゃんはシェルアちゃんが心配するから病院には行きたくないらしい。
 アタシは呆れて溜息をついた。
だってどちらにせよシェルアちゃんが心配するのには変わりないのだ。
やましい事はしていなくても、誤解されるおそれがある。
 エッシちゃんが誤解されるのはいいのかと聞くと、ブラッドちゃんはやましい事はしていないと開き直って酒を飲んだ。
その態度がなんだか妙で、アタシはもしやシェルアちゃんに嫉妬でもして貰おうと思っているのかと揶揄って聞いた。
するとブラッドちゃんは飲んでいたウイスキーを吐き出して咽せた。図星のようだった。
 あまりにお粗末なブラッドちゃんの思考回路に、エッシちゃんのキショイという鋭利な言葉が刺さる。
ブラッドちゃんはめげなかったけど、試し行為は人によっては地雷を踏む事になるからやめた方がいいとアタシは助言した。
 シェルアちゃんは優しいからきっと許してくれるだろう。でも普通の人にやったらアウト寄りのアウトである。
 エッシちゃんに同意を求めると、頷いて縁切り対象だとはっきり言った。
 ブラッドちゃんは否定的な意見に驚きを隠せないようだったけど、シェルアちゃんが心配して病院に連れて行くというエッシちゃんの発言に喜んでいた。
ブラッドちゃんの様子にエッシちゃんはどん引きしている。
 いつもなら若い子にキャアキャア言われているのに珍しい光景だ。
 ちなみにエッシちゃんはロジェちゃんが心配したら嬉しさよりも罪悪感の方が勝つらしかった。
 少し影のある表情を見せたエッシちゃんにこの子も何かあるんだろうなと思いつつ、アタシはブラッドちゃんにいっそ告白すればと提案した。
 ブラッドちゃんは絶対無理だと弱気な返事をした。
一方でエッシちゃんはこちらが嬉しくなるくらい、美味しそうな顔をしてチーズを食べている。
 取り寄せで昨日届いたばかりだと話していると、エッシちゃんのグラスが空になりかけていたため、アタシは白のサングリアを勧めた。
 ブラッドちゃんと二人で飲みたくないという理由でエッシちゃんは二杯目を断ろうとしたけど、ブラッドちゃんの奢りだと言うと手のひらを返した。
 アタシは怒るブラッドちゃんを宥めると、短気は損気だと忠告してブラッドちゃんのグラスを下げた。
 新しいボトルを開けて自分のグラスに注いでいく。
 乾杯した後に白のサングリアを作って新人ちゃんの話を追及すると、ブラッドちゃんはいじめてないと言い切った。
 過去にルイスちゃんにウザ絡みして嫌がられていた事を指摘すると、今もだとエッシちゃんが代わりに答えた。 
 巷でEMANONの番犬と呼ばれている事を話すと、番犬は自分ではなく大福ちゃんとよもぎちゃんだとブラッドちゃんは天然発言をした。
そういう話じゃないとすぐエッシちゃんがツッコミを入れる。
 空のグラスを下げてさっき作った白のサングリアを提供すると、エッシちゃんは一口飲んで気に入ったようだった。
 他の飲み方も教えると、エッシちゃんは嬉しそうに御礼を言った。
 アタシは今度は味わってワインを飲んだ。
 辛口だから後味がスッキリしていて飲みやすい。

 ブラッドちゃんが女はカクテルが好きだと言うと、エッシちゃんは偏見だと注意した。
 カクテルは甘いものが多くて飲みやすいから酒が苦手な人や初心者向けだ。
 ブラッドちゃんはコーヒーが飲めないでしょと言うと、途端に焦った顔をした。
 エッシちゃんが言うにはシェルアちゃんとロジェちゃん、サンちゃん以外はブラッドちゃんがコーヒーが飲めないのを知っているらしい。
 あの二人なら知っていても知らないフリをしてそうだと言うと、エッシちゃんにわかると頷かれた。
 ブラッドちゃんはロジェちゃんは自分に雑だと不満を洩らすと、ウイスキーに口をつけた。

……そりゃこんな問題児がいたら雑にもなるだろう。
 
 ブラッドちゃんはアタシに問題児呼ばわりされてご立腹だったけど、エッシちゃんに同じ事を言われるとルイスちゃんを例に出した。
 真面目なルイスちゃんを問題児は無理がある。
 エッシちゃんはロジェちゃんに迷惑をかけるなとブラッドちゃんに忠告した。
 仲は良くないけど好きな人を気にする辺り、似た者同士らしい。
 ブラッドちゃんがロジェちゃんに仕事を増やすなと嫌味を言われた事を話すと、エッシちゃんは驚きながらも本当に本人が言ったのかと疑った。
 如何にもロジェちゃん本人が言いそうな発言なのにエッシちゃんにとっては違うようで、エッシちゃんはロジェちゃんのイメージを力強く話した。
 間違ってはいないけど、だいぶ偏っている。
 ブラッドちゃんもアタシと同じ事を思ったのか引いていた。

 アタシはまた喧嘩を始めそうな二人を宥めると、エッシちゃんにロジェちゃんの認識を改めるよう助言した。
 あの子は皮肉屋な所があるけど、アレで結構優しい人間なのだ。
例としてロジェちゃんが猫好きだという話を持ち出すと、二人は驚きの声を上げた。
 いつかの話でロジェちゃん自身は猫好きを否定していたけど、シェルアちゃんの話では怪我をした野良猫を保護して、文句を言いながらも面倒を見ていたと聞いている。
本人の性格的に猫好きだと公言するような人間ではないし、本人も柄じゃないから言わないのだろうとアタシの勝手な見解を話すと、あんなに疑っていたエッシちゃんはなるほどと納得する姿勢を見せた。
 ブラッドちゃんはそんなロジェちゃんをアマノジャクだと評したけど、アンタもでしょとアタシが言うと、ブーメランが自分に刺さったらしく無言になっていた。
 苦し紛れにブラッドちゃんが、ロジェちゃんは完璧じゃないと口にする。
するとエッシちゃんは僻みかとすぐ聞き返した。
 ブラッドちゃんは事実だと反論する。
 職業がコメディアンかと思うほどのテンポの良さに笑っていると、エッシちゃんがじっとアタシを見てきた。
 エッシちゃんはアタシがブラッドちゃんから余計な情報を仕入れていると思ったようで、ロジェちゃんとそういう関係になる気はないとアタシに話した。
 ブラッドちゃんはさっきの仕返しも兼ねて予防線かとエッシちゃんをからかう。
それが逆鱗に触れてインテリアの三角フラスコをを投げ付けられそうになっていたけど、ウチの店で殺人事件が起きるのは困るからやるなら外でと言っておいた。
 新しいワインを楽しんでいると、いつの間にかエッシちゃんはブラッドちゃんを殴るのを諦めたようだった。
 上司に頼んで殴って貰えばと言うと、エッシちゃんはロジェちゃんが大変だからと健気な発言をした。
 ブラッドちゃんは俺の方が大変だと言っていたけど、元はといえばエッシちゃんにデリカシーのない発言をしたブラッドちゃんのせいである。
 アタシは半分呆れて、空になったブラッドちゃんのグラスを下げてウイスキーを注いだ。
 ここで話を蒸し返すのもと思ったけど、好奇心の方が勝ったアタシは、エッシちゃんにロジェちゃんの恋人になる気はないとはどういう意味か聞いた。
 エッシちゃんは言い難そうにそのままの意味だと答える。
 アタシはあえて空気を読まずに、直球でシェルアちゃんがいるからかと疑問を口にした。
 エッシちゃんは言葉を失っていたけど、アタシは構わず新しいウイスキーをブラッドちゃんに提供した。

 おそらくあの二人は恋愛関係にはならないだろう。
 幼馴染だから独特の雰囲気はあるものの、色っぽいアレがあるのかと問われれば確実にないと言い切れる。
 どちらかと言うとあの二人の関係は家族に近い。
 見たままの自分の感想を述べると、ブラッドちゃんは恋愛関連で二人から何か聞いてないのかと情報提供を求められた。
それに関してはこっちが話題を振っても曖昧な態度ではぐらかされてしまうため、答えようがない。
 その手の情報は仕入れていないと言うと、ブラッドちゃんはやっぱりといった顔をした。
反対にエッシちゃんはかなり戸惑っている。
 アタシは話していいか迷ったけど、あの二人にもう一人の幼馴染がいたという情報を提供した。
 情報元はロジェちゃんである。
 子供の頃、雨の日にその幼馴染に誘われてよく三人でゲームをしていたらしかった。
 ロジェちゃんの口から皮肉以外の人の評価が聞けると思っていなかったから、いい奴だと聞いた時はかなりビックリした。
 どんな人かとソワソワする若者二人は、見ていて微笑ましい。
しかし勘のいいエッシちゃんは、アタシの言った言葉を振り返ってその幼馴染がいない事を察してしまった。
 詳しく話を聞く勇気はなかったからその辺りの情報はわからないと言うと、話が聞けないとブラッドちゃんは怒り出した。
そんな事言われても知らないものは知らないし、わからないものはわからないのだ。
 アタシは軽く流すと、グラスのワインを飲み干した。

 ブラッドちゃんはシェルアちゃんの幼少期を知りたかったらしく、恨みがましく愚痴を溢した。
 ロジェちゃんに聞けばと言うと、ロジェちゃんに聞いたら引かれた挙句仕事しろと言われるらしかった。
 エッシちゃんはブラッドちゃんに、小さい頃が知りたいならシェルアちゃんの家に行けばと言った。
でもブラッドちゃんには好きな人の家に上がるのはハードルが高いようで、お前はロジェちゃんの家に行けるのかとエッシちゃんに言い返していた。
 エッシちゃんも好きな人の家に上がるのは無理なようで、アタシは似た者同士の二人を笑った。
 息ぴったりだと言うとエッシちゃんは気を悪くしたみたいで、仲が悪いと訂正を入れた。
 笑ったお詫びも兼ねて小さなパフェを提供すると、エッシちゃんは苦笑しながらもOKのハンドサインをくれた。
 ブラッドちゃんにはタダ酒を提供した。

 二人は職場や、最近身の回りで起きた事を話してくれた。
 色々話している内に酔いが回ったようで、最終的に話題は恋愛になった。
 酔っ払いは泣いたり笑ったり忙しい。
 怒って暴力に出ないだけマシかとアタシは静観していたけど、エッシちゃんが泣いた時は慌ててしまった。多分ブラッドちゃんも慌てていたと思う。
 ブラッドちゃんはエッシちゃんが寝ると、赤ら顔で席を立った。

「あー、コイツ送ってくわ」
「大丈夫? 送り狼にならないでよ」
「コイツ相手にならねェよ! んじゃ金置いとくから」

 多めに置かれた代金を見て、帰るブラッドちゃんを引き止めようとすると、二人分だと口パクで言われた。
 エッシちゃんが知ったら嫌がりそうな光景である。
 アタシはブラッドちゃんの背中に手を振った。
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