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1話
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世界が終わった日の話をしよう。
あれは大学のサークルの打ち上げの日だった……
サークルの飲み会っていうと、だいたい安~い居酒屋になるものと相場が決まっている。
そして大学生の大好物である『唐揚げとポテト』は外せない。
あとは、女子が好きそうな名前のサラダを頼めば完璧だ。
悪ノリした誰かが突然コールを始めたり、意味不明なゲームを始めたり、毎度のことながら騒がしい。
そんな中で、俺――佐藤和真(さとうかずま)はジョッキを握りしめたまま、ずっとある女性をチラチラ見ていた。
一ノ瀬さくら――さん。
彼女はサークルの中だけじゃなく、大学でも目立つほどかわいくて……いるだけで場が華やいで見えるほどだ。
そんな一ノ瀬さんが笑おうものなら、どんな男だってノックアウトされるに決まっている。
女子からだって人気があって、俺みたいな普通を絵に描いたような男とは住む世界が違うと思ってたんだ。
――でも。
新歓の準備で一緒に残った夜。
資料を片付けながら、どうでもいい話で笑い合った夕暮れのキャンパス。
終電を逃して、駅前で缶コーヒーを飲んだあの時間……
――勘違いかもしれないけど、信じたくなっちゃうんだって。
「やほ~和真くん、飲んでる?」
不意に一ノ瀬さんから声をかけられて、ビクッとしてしまう。
「えっと……あ、うん! 飲んでる」
ダサっ! こんなんじゃ、意識してるのバレバレじゃんか……
持っていたジョッキの中身は、いつの間にか半分以上なくなっていた。
正直、一ノ瀬さんを盗み見しながらチビチビ飲んでいたせいか、どれくらい飲んだのかよく覚えていなかったりする。
一ノ瀬さんは俺の向かいに座って、少しだけ身を乗り出してくる。
「ねえねえ……今日さ、人数多くて盛り上がってるね」
「まあ……そうだね。いつもよりは多いかも」
「だよね。ちょっと外、出ない? 新鮮な空気吸いたいし」
マジ? 一ノ瀬さんと2人っきりの時間?
――チャンスだ。今日こそ俺は告白する。
彼女について店の外に出ると、夜風が涼しくて心地良かった。
「ごめんね、付き合わせて」
「いやいや、大丈夫だよ」
狭い場所にギュウギュウに閉じ込められていたから、ちょっと暑かったしな。
一ノ瀬さんの提案は逆にちょうど良かったくらいで……。
「でね……こないだなんか陽毬が――」
「へえ~、そうなんだ」
優しい一ノ瀬さんは、俺が退屈しないようにいろいろな話題を振ってきてくれて……俺みたいな平凡な男でも、彼氏になれるんじゃないかって本気で思ってしまう。
でもさ……告白する絶好のタイミングなのに、動けない俺ってどうなの?
頭の中で何度も告白の言葉を練習してきたのに、いざとなると言えねえ~!
だめだ……逃げるな。言うって決めたんだろ?
「一ノ瀬さん」
ヤバい、真面目な感じ出ちゃったかも。
「ん? なに?」
それなのに彼女は、ちゃんと俺の目を見てくれる。
なんていい子なんだ……って違う! 告白するんだ!
ああ、もうっ! 頭の中が爆発しそうだ!
「えっと、俺……」
言うぞ――ここで言わなきゃ、俺は男になれない気がする。
「一ノ瀬さんのことが――」
「……あ、ごめん」
彼女の眉が下がり、少し困った顔になっていた。
片手で口元を押さえて、申し訳なさそうに俺から視線をそらす。
「その、今はちょっと……」
見事な玉砕だった。
その言葉を最後に、彼女は小走りで店の中へ戻っていく。
つまり『爆死した俺、ひとりで取り残されるの図』が完成したのである。
「今日は、やけに冷えるな……」
夜風が、ポッカリと空いた胸の穴に染み入ってくる。
『今はちょっと』
勇気を振り絞った告白は、テンプレどおりに断られた。
まったく、俺は何を期待してたんだろう。
わかってたことじゃないか……それなのに……体に力が入らない。
しばらく店に戻れそうもない。賑やかなあの場所に行くのが辛いから。
気がついたら家に帰っていた。どうやって帰ったのかも覚えていない。
天井を見つめながら、さっきの光景を何度も思い返してしまう。
困った顔の一ノ瀬さんが「今はちょっと……」というシーン。
ダメだった……俺は完全にフラれた。
あれは大学のサークルの打ち上げの日だった……
サークルの飲み会っていうと、だいたい安~い居酒屋になるものと相場が決まっている。
そして大学生の大好物である『唐揚げとポテト』は外せない。
あとは、女子が好きそうな名前のサラダを頼めば完璧だ。
悪ノリした誰かが突然コールを始めたり、意味不明なゲームを始めたり、毎度のことながら騒がしい。
そんな中で、俺――佐藤和真(さとうかずま)はジョッキを握りしめたまま、ずっとある女性をチラチラ見ていた。
一ノ瀬さくら――さん。
彼女はサークルの中だけじゃなく、大学でも目立つほどかわいくて……いるだけで場が華やいで見えるほどだ。
そんな一ノ瀬さんが笑おうものなら、どんな男だってノックアウトされるに決まっている。
女子からだって人気があって、俺みたいな普通を絵に描いたような男とは住む世界が違うと思ってたんだ。
――でも。
新歓の準備で一緒に残った夜。
資料を片付けながら、どうでもいい話で笑い合った夕暮れのキャンパス。
終電を逃して、駅前で缶コーヒーを飲んだあの時間……
――勘違いかもしれないけど、信じたくなっちゃうんだって。
「やほ~和真くん、飲んでる?」
不意に一ノ瀬さんから声をかけられて、ビクッとしてしまう。
「えっと……あ、うん! 飲んでる」
ダサっ! こんなんじゃ、意識してるのバレバレじゃんか……
持っていたジョッキの中身は、いつの間にか半分以上なくなっていた。
正直、一ノ瀬さんを盗み見しながらチビチビ飲んでいたせいか、どれくらい飲んだのかよく覚えていなかったりする。
一ノ瀬さんは俺の向かいに座って、少しだけ身を乗り出してくる。
「ねえねえ……今日さ、人数多くて盛り上がってるね」
「まあ……そうだね。いつもよりは多いかも」
「だよね。ちょっと外、出ない? 新鮮な空気吸いたいし」
マジ? 一ノ瀬さんと2人っきりの時間?
――チャンスだ。今日こそ俺は告白する。
彼女について店の外に出ると、夜風が涼しくて心地良かった。
「ごめんね、付き合わせて」
「いやいや、大丈夫だよ」
狭い場所にギュウギュウに閉じ込められていたから、ちょっと暑かったしな。
一ノ瀬さんの提案は逆にちょうど良かったくらいで……。
「でね……こないだなんか陽毬が――」
「へえ~、そうなんだ」
優しい一ノ瀬さんは、俺が退屈しないようにいろいろな話題を振ってきてくれて……俺みたいな平凡な男でも、彼氏になれるんじゃないかって本気で思ってしまう。
でもさ……告白する絶好のタイミングなのに、動けない俺ってどうなの?
頭の中で何度も告白の言葉を練習してきたのに、いざとなると言えねえ~!
だめだ……逃げるな。言うって決めたんだろ?
「一ノ瀬さん」
ヤバい、真面目な感じ出ちゃったかも。
「ん? なに?」
それなのに彼女は、ちゃんと俺の目を見てくれる。
なんていい子なんだ……って違う! 告白するんだ!
ああ、もうっ! 頭の中が爆発しそうだ!
「えっと、俺……」
言うぞ――ここで言わなきゃ、俺は男になれない気がする。
「一ノ瀬さんのことが――」
「……あ、ごめん」
彼女の眉が下がり、少し困った顔になっていた。
片手で口元を押さえて、申し訳なさそうに俺から視線をそらす。
「その、今はちょっと……」
見事な玉砕だった。
その言葉を最後に、彼女は小走りで店の中へ戻っていく。
つまり『爆死した俺、ひとりで取り残されるの図』が完成したのである。
「今日は、やけに冷えるな……」
夜風が、ポッカリと空いた胸の穴に染み入ってくる。
『今はちょっと』
勇気を振り絞った告白は、テンプレどおりに断られた。
まったく、俺は何を期待してたんだろう。
わかってたことじゃないか……それなのに……体に力が入らない。
しばらく店に戻れそうもない。賑やかなあの場所に行くのが辛いから。
気がついたら家に帰っていた。どうやって帰ったのかも覚えていない。
天井を見つめながら、さっきの光景を何度も思い返してしまう。
困った顔の一ノ瀬さんが「今はちょっと……」というシーン。
ダメだった……俺は完全にフラれた。
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