俺をフッた女子に拉致されて、逃げ場のない同棲生活が始まりました

ちくわ食べます

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2話

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「はぁ……」

 私――一ノ瀬さくらは、トイレの個室で深いため息を吐いた。

 タイミング最悪! 本当に最悪!

 なんで今なの!? まったく!

 心の中で叫びながら、両手で額を押さえる。

 よりによって、限界のタイミングで。しかも、あんな真剣な声で。

 違うの……違うのに……

 告白されるのが嫌だったわけじゃないのに。
 
 ううん。むしろ……ずっと待ってた。頭が真っ白になるほど嬉しかったのに。

 でも夜風で冷えちゃって、もう限界で……と、トイレが我慢できなかっただけなの!

 好きだから、ちゃんと返事をしたかった。あのままじゃ中途半端な答えになっちゃうから……

 ――戻ったら、和真くんいるよね?
 
 トイレから戻って急いで席を見渡したけど、そこに和真くんの姿はなくて。

 さっきまでいた店の外にも、和真くんはいなかった。

「……もう。なんでよ」

 ズキズキする胸に、そっと手を当てる。

 逃げられちゃった……いや、違う。私が逃がしちゃったんだ。

 でも、まだ大丈夫……和真くんは私のことが好きに決まってる。
 
 あの目は、どう見ても私に告白するつもりだったもん。

 なら――

「囲い込めば、いいだけだよね」

 私はカバンからスマホを取り出して『ある人』に連絡する。

 ――私を置いていったことを後悔させてあげるわ。
 
 ◆
 
 あれから、3日。
 
 大学に行って講義を受けて、バイトをして、飯食って、寝る。
 
 いつも通りの生活を、いつものリズムでこなす。いわゆる自動運転モードだ。

 何日かすれば忘れるに決まっている、すぐに元気になると思っていたのに……どうしても胸の奥にあるモヤモヤが晴れない。

 あれからサークルには顔を出していない。っていうか出せない。
 
 飲み会の一件から、一ノ瀬さんに会うのが怖くなってしまった。

 どんな顔をして会えばいいんだろう。彼女となんて会話をすればいい?

『今はちょっと……』

 あのシーンが、何度も頭の中で再生される。

 完膚無きまでにフラれたのに、心のどこかでまだ整理がついていないんだろうか?
 
 実は、コンビニに寄ってビールを買ってきてある。

 彼女を早く忘れたい。今日はやけ酒だ『飲んで嫌なことを忘れよう作戦』を決行する。
 
 だけど俺のアパートがおかしい。正確には入口のドアなんだけど……

「……なにこれ?」

 ドアに、白い紙が貼られているのだ。

『退去済み・入居者募集中』

「……はあ!?」

 まったく意味が理解できない。

 俺まだ住んでますけど?

「とりあえず、中に入るか……っておい!」

 うそだろ、鍵が変わってる!

 見たこともないようなゴッツい電子ロックに付け替えられてて、鍵を差す場所すらない。

「ちょ、ちょっと待ってくれよ……」

 そうだ、大家さんに連絡しよう。

 俺がスマホを取り出した瞬間、タイミングを見計らったようにメッセージが届いた。

 差出人は、俺の父さん。

 なんだよこれ……嫌な予感しかしないんだけど!
 
『父さんの勤める会社が一ノ瀬グループに買収されてな。新会長から直々に「娘の警護を息子さんに」と頼まれた。異論は認めんそうだ。お前のアパートは解約し、荷物も運んである。仕送りは一旦ストップだ。和真は会長が用意したマンションに行ってくれ。家族の運命は和真に掛かっている。頼んだぞ』

「…………は?」
 
 まったく意味がわからない。なにこの悪い冗談。

 一ノ瀬グループってなんだ? 父さんはその会長と知り合いってことか?

 それに同居しろって? 俺が家族の運命をってなんだよ?

「ああ、くそっ!」

 よくわからないけど、家族を人質に取られたってことか?

「俺が一体なにをしたんだよ……」

 その時、低いエンジン音とともに1台の車が来てアパート前で止まった。
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