前世の祖母に強い憧れを持ったまま生まれ変わったら、家族と婚約者に嫌われましたが、思いがけない面々から物凄く好かれているようです

珠宮さくら

文字の大きさ
89 / 99
第3章

19

しおりを挟む

そんな風にフィオレンティーナが、日に日に悲しそうで、寂しそうにするのに妖精たちも、蔦も気づいていて元気がなくなっていた。

もはやフィオレンティーナの気分の浮き沈みで、この国の雰囲気が決まるかのようになり始めてすらいたが、フィオレンティーナはそんなことになっていることに気づいていなかった。

オギュストは、以前から動かなければ、兄がやりたくないことには及び腰で、やらずに済むならいくらでも知らぬ存ぜぬをし続けるのをよく知っていたというのに。兄だからと義理立てして、こんなことになってしまったのだ。

妹であるリディアーヌも、それをどれほど見てきたことか。それで、兄であるオギュストの方が王になれば、この国のためになるとすら、散々言われていたし、妹以外にも言われていたが、それがここまでになるとは思いもしなかった。

まぁ、そちらよりも、フィオレンティーナの扱い方だ。このままでいいはずがない。そのため、とあることを計画した。リディアーヌの娘のキャトリンヌとその婚約者のジョスランの両親とリディアーヌの夫とも話してある。

リディアーヌは、今回のことを話した時から、怒り心頭だった。兄であるこの国の王が、花の守り手に未だに挨拶を済ませていないことに。オギュストは見たことないほどの怒りっぷりだった。それも、無理はないが。

そして、オギュストが未だにフィオレンティーナのしたいことをやらせずに兄である国王に義理立てして放置していることにも、物凄く怒っていた。それは恐ろしかった。それも、無理もない。妻にすら、そのことで怒られているのだ。それは、妻の方が妹を怒らせるよりも、大した事はなかった。

フィオレンティーナは、何やら顔色を悪くしているオギュストを心配していたが、それにすら彼は気づく余裕はなかった。

そんなことを考えていたが、フィオレンティーナの方は別のことで余裕がなくなっていたが、それに気づくこともできなかった。

全ては、やりたいことを止めたせいだと思ってはいたが、どれほどまでにその気持ちを止めているかをオギュストは、まだわかっていなかった。

それは、クラリスたちも同じようなものだったが。


「あの、動くっていうのは、どういう意味ですか?」
「国王は、あなたの婚約者が、自分の目をかけている者から出るのを待っているようなのです」
「? でも、リュシアン様は、ご子息なのですよね?」
「あの子は、私に懐いているので、気に入らないのですよ」
「……」


弟に懐いているから、何だというのか。身分の低い母を亡くして、頼りにならない父より伯父を頼って何が悪いというのか。フィオレンティーナには、さっぱりわからなかった。わからなかったが、1つわかった。


(ここの国王って、物凄く器が小さそうに聞こえるのは、私の気のせいかな?)


どうにかして、フィオレンティーナの婚約者に息のかかった者の息子をあてがいたいのにそれができていないようだ。

そうこうしているうちに婚約者が2人となり、フィオレンティーナの側に寄れる者もすっかり限られてしまっているため、益々困難になっているようだ。

そんなことになるとは思わなかったオギュストが、兄に義理立てしたことで、更にとんでもないことになっている。まぁ、それで何もかも放置せざるおえなくなっているのだ。


「……あの、それって、国王陛下も、私に会えないってことないですか?」
「「え?」」


ふと、フィオレンティーナは、そんなことを思ってしまったが、養父母たちが何とも言えない顔をしたので、そんなわけないかと誤魔化した。


「ないですよね」
「……いや、あるかもしれない」
「え?」
「そうですわ。そちらの方がありえそうです。もしかして、試してみて来れなかったとか?」
「いや、来るなら、そう知らせてくる。目立つことが好きだから、こっそりとなんて動かない」
「……」


それを聞いて、益々王が小物に思えてしまったフィオレンティーナだが、そのことは口にしなかった。

そんなこんなで、オギュストたちは他の者たちを呼んで、フィオレンティーナのところにたどりつけないから挨拶できていないという噂を密かに流した。

それで、色々言われれば、流石の王も動くと思ったのだ。

そんな噂がまことしやかに流れて、王は嘘をつかれてはたまったものではないとフィオレンティーナに元に挨拶に行くことにした。

そうは言っても、とっくに挨拶していると思っていた国民は、その噂のあとには花の守り手のところに王が挨拶に出向くと知らせが回ってきて、それに失望していた。色々と払拭したいのもあったようで、代々的にしすぎたことで、色んなことが台無しになっていたが、王はその辺をあまり気にしていないようだ。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです

ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。 女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。 前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る! そんな変わった公爵令嬢の物語。 アルファポリスOnly 2019/4/21 完結しました。 沢山のお気に入り、本当に感謝します。 7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。 2021年9月。 ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。 10月、再び完結に戻します。 御声援御愛読ありがとうございました。

善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です

しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。

【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜

福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。 彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。 だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。 「お義姉さま!」           . . 「姉などと呼ばないでください、メリルさん」 しかし、今はまだ辛抱のとき。 セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。 ──これは、20年前の断罪劇の続き。 喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。 ※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。 旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』 ※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。 ※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。

婚約破棄され森に捨てられました。探さないで下さい。

拓海のり
ファンタジー
属性魔法が使えず、役に立たない『自然魔法』だとバカにされていたステラは、婚約者の王太子から婚約破棄された。そして身に覚えのない罪で断罪され、修道院に行く途中で襲われる。他サイトにも投稿しています。

地味令嬢を見下した元婚約者へ──あなたの国、今日滅びますわよ

タマ マコト
ファンタジー
王都の片隅にある古びた礼拝堂で、静かに祈りと針仕事を続ける地味な令嬢イザベラ・レーン。 灰色の瞳、色褪せたドレス、目立たない声――誰もが彼女を“無害な聖女気取り”と笑った。 だが彼女の指先は、ただ布を縫っていたのではない。祈りの糸に、前世の記憶と古代詠唱を縫い込んでいた。 ある夜、王都の大広間で開かれた舞踏会。 婚約者アルトゥールは、人々の前で冷たく告げる――「君には何の価値もない」。 嘲笑の中で、イザベラはただ微笑んでいた。 その瞳の奥で、何かが静かに目覚めたことを、誰も気づかないまま。 翌朝、追放の命が下る。 砂埃舞う道を進みながら、彼女は古びた巻物の一節を指でなぞる。 ――“真実を映す者、偽りを滅ぼす” 彼女は祈る。けれど、その祈りはもう神へのものではなかった。 地味令嬢と呼ばれた女が、国そのものに裁きを下す最初の一歩を踏み出す。

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

処理中です...