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しおりを挟む何があったかは、学園にまたたく間に広がっていた。おや、広まらないはずがなかった。
「あれを無視できるって凄いわね」
「撤回してもらう以前にあの2人、やるべきことがあると思うけど」
「そうよね。私なら、すぐに謝罪して、速攻で家に帰って両親にやらかした話をしているわ」
「それに気づく人は、あんなことしてないわよ」
テベンティラは、そんな会話を聞いていて苦笑していた。確かに撤回させようとするより、ヴァルシャに謝罪すべきなのだが、それをせずにつきまとっている姿に申し訳なく思えてしょうがなかった。
「あの2人、本当に謝罪していないの?」
「していないそうですよ」
サルミラは、何気に情報通だ。朝、やらかしているのを見てから昼になり、午後の授業に差し掛かろうとしていた。
「あの、テベンティラ様。流石にまずいですよね?」
「そうね。物凄くまずいでしょうね」
「……」
あまりにも酷い状態に見かねたテベンティラは、サルミラや他の令嬢たちにも今後のこともあると言わんばかりにしていた。
アラカナンダとシャルミスタの味方する気にはなれないが、王女に話しかけることにした。授業がかぶらなかったため、挨拶が中々できなかったのは仕方がない。……というか。近づきたくなかった。
でも、そんなことをしていられない。この学園だけでなくて、この国がみんなあの2人みたいだと思われてしまっているのをどうにかしなくてはならなかった。
(流石に遅いフォローだけど、仕方がないわ。あの2人が謝罪してないとは思わなかったし、つきまとっているとは思わなかったし)
そんな言い訳を頭の中でしながら、声をかけることにした。
「王女殿下。ご挨拶しても、よろしいでしょうか?」
「……えぇ」
一応は、テベンティラの家は公爵家なのだ。王女は、やっとまともな令嬢が現れたとばかりにして、テベンティラたちのことを見てくれたが、ヴァルシャの側にアラカナンダとシャルミスタがいて、挨拶をきちんと終える前にシャルミスタが……。
「テベンティラ! 私も、紹介して!」
「……もしかして、テベンティラ嬢のご友人なの?」
「そうです!」
食い気味で、声をかけて来たのだ。テベンティラは、勘弁してほしいと思ったが、表情には出さなかった。
「ただの幼なじみです。悪いけど、あなたのような令嬢を紹介したくないわ」
「何でよ!?」
「王女殿下にすべきことをしていないと聞いたわ」
「すべきこと……?」
「それすらわからないのね。悪いけど、紹介なんてしたくないわ。それにそのブレスレットについて、散々伝えたはずよ。それをみんなが妬んでいると言い、悪く言っていたのは、そっちでしょ」
「そんな、あんなのでわかるわけないでしょ!!」
シャルミスタは、それに腹を立ててこれまでのようにテベンティラにギャーギャーと言い始めたが、それをヴァルシャだけでなくて、テベンティラも無視した。
「とんでもないのと幼なじみなのね。テベンティラ嬢、苦労するわね」
「王女殿下。どうか、テベンティラとお呼びください」
「なら、私のことも名前でいいわ。ここに来てから、不愉快な目にあっていたけど、あなたのようなまともな人を見てホッとしたわ」
ヴァルシャは、チラッとシャルミスタを見た。それに頭に血が上りすぎていたシャルミスタは周りを見て、自分が何をしているかにようやく気づいたかのような顔をして、焦った顔をしていなくなった。
アラカナンダは、婚約者だからといってヴァルシャの側にいるのをやめようとしなくて、それにヴァルシャだけでなく周りも、怪訝な顔をせずにはいられなかった。
(まだ、婚約者気取りなのね)
そう思っているのは、テベンティラだけではなかった。
「ヴァルシャ様。よろしければ、学園の中をご案内いたします」
「待ってくれ。それなら、婚約者の私が……」
「いつまで、婚約者気取りでいるの?」
「え? 気取り??」
「婚約者がいるのに他の令嬢の誕生日にプレゼントを渡して、街にも2人っきりで出かけていたのでしょ? そんなのと婚約したままでいるわけないじゃない。この国では、それが当たり前だとしても、ダラム国ではそんなことしないわ」
「いや、たかが、プレゼントですよ。そんな意味深なものでは……」
アラカナンダは、言い直すのに必死になっていた。それをヴァルシャは不愉快そうにした。
「あの令嬢には意味深なものになっていたわ。婚約していることも伝えずにいるのもあり得ない。そんな子息と婚約し続けるなんて、もっとあり得ないわ」
「いや、だから、ただ女性の笑顔を見たかっただけで、君と中々会えないのが寂しくて……」
「寂しいと浮気しまくる男なんて論外よ。もう二度と話しかけて来ないで。テベンティラ、案内してくれる?」
「はい」
それでも、アラカナンダはしつこくして来て、そのたびヴァルシャの機嫌が悪くなるのにテベンティラは困ってしまった。
それこそ、心の中でさっさと帰れとボロクソに言っていたのはテベンティラだけではなかったが、鈍すぎるアラカナンダが察知してくれることはなかった。
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