幼なじみが誕生日に貰ったと自慢するプレゼントは、婚約者のいる子息からのもので、私だけでなく多くの令嬢が見覚えあるものでした

珠宮さくら

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「ヴァルシャ王女」
「王太子殿下」


学園に滅多に顔を見せないアニル国の王太子が現れたので、テベンティラだけでなく、周りも驚いていた。

だが、テベンティラはそれで固まっているわけにはいかない。カーテシーをした。ヴァルシャに挨拶する時もしたが、それ以上に敬意を表すものをした。


「殿下。この国では、浮気を平然となさるの?」
「浮気……?」


王太子は、何のことだと言わんばかりにして側近に目を向けた。どうやら、執務が忙しくて学園に滅多に来ないせいで、アラカナンダが何をしていたかを知らなかったようだ。


(そういえば、このお2人って従兄妹同士だったわね)


従兄妹と言っても同い年で、数日しか誕生日が違わない。そのため、王太子はヴァルシャのことを実の妹のように可愛がっていた。

だが、そんなヴァルシャが機嫌が悪い時は、殿下だの。王太子と呼ぶのだ。そのため、ヴァルシャが機嫌悪いのは、明らかとなっていた。

アラカナンダは、相変わらずヴァルシャの側につかつ離れずいた。それにテベンティラだけでなくて、一緒にいるようになったサルミラたちも困り果てていた。

何をしても、婚約者の側にいたがるのだ。もう、破棄は確定しているというのに。

側近が、簡潔にアラカナンダのことを話して、それを聞いた王太子は……。


「ヴァルシャ。この国の子息が、これと一緒だと思わないでくれ」


これと言われたアラカナンダは、何とも言えない顔をしていた。王太子はその後、王女に何をしたかを知って毒舌を炸裂させて、顔色を悪くしてようやく慌てて帰宅するのは、あっという間のことだった。


(あそこまで言わないと伝わらない子息が、トゥリパティ公爵家の跡継ぎだとは思わなかったわ)


誰もが、疲れた顔をしていた。








まぁ、そこから、アラカナンダとヴァルシャの婚約は破棄となった。ならないわけがないが、そしてすぐさまアラカナンダとシャルミスタが婚約することになった。それには、周りはびっくりしたが、くっつけたのはヴァルシャだと聞いて、何も言う者はいなかった。


「堂々と浮気するほどのようですから、あの2人を婚約させてあげて」


そんなことを両親とアラカナンダとシャルミスタの両親に笑顔で言ったのも、ヴァルシャだ。

それを耳にした王太子も笑顔だが、その目の奥は怒りに煮えたぐっていた。


「確かに優しいヴァルシャの言いそうなことだ。相思相愛のようだからな。遠慮して婚約できなくては、ヴァルシャが悲しむ」


王太子もまた、ヴァルシャが何をさせようとしているかに気づいて、アラカナンダの父親のトゥリパティ公爵とシャルミスタの父親である伯爵に婚約させてやってくれと言いつつ、それを拒むことも婚約を解消することも、今後破棄させることも、貴族であるうちはないと言う話をした。


「こんな風に王女との婚約を破棄させるようなことをして、婚約するんだ。2人の気が早々変わるわけはないだろうが、あんなのを跡継ぎにはしないだろう?」


アラカナンダの父は、王太子の言葉に頷いていた。

それによって、アラカナンダとシャルミスタは晴れて婚約者同士になることになったが、あんなことがあった2人が幸せそうにしているわけがなかった。

テベンティラは、婚約することになったと聞いて何とも言えない顔をしてしまったが、そのことでヴァルシャや王太子に何か言うこともなかった。もう、関わる気もなかった。

色々あったシャルミスタの手首からは、あれだけ大事にしていたブレスレットがなくなっていたのにすぐに気づいても、向こうがテベンティラに話しかけて来ることもなかった。

アラカナンダは、本命のヴァルシャとの婚約者さが台無しになったのをシャルミスタのせいにしていたが、シャルミスタも負けていなかった。


「婚約していた話をしないで、勘違いさせていた方がどうかしているわ!」
「はっ、そんなの勝手に勘違いした方がどうかしている」
「あんたのせいで、家族に白い目を向けられてるのよ!?」
「それは、こっちのセリフだ。お前が、ややこしくしたんだろうが!」


シャルミスタは、アラカナンダのせいにしていた。アラカナンダも、同じようにシャルミスタのせいにしていた。

2人とも、家族に白い目を向けられ、アラカナンダは跡継ぎから外されることになり、爵位については自分たちでどうにかしろと丸投げされていた。

貴族でいたければ、仲良くしていろと言われているのに2人は言い争ってばかりいた。


「あの2人、変わってませんね」
「前より煩くなったのでは?」


サルミラと他の令嬢たちは、言い争いを続ける2人にげんなりしていた。

2人は貴族で居続ける気のようだ。


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