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しおりを挟むテベンティラは、学園の中でも、街に行く時でも、ヴァルシャと一緒にいるようになった。
結局、アニル国の王太子が、せっかく来たのに元婚約者のせいで速攻で帰る選択をやめさせたのだ。
「そんなことしたら、ダラム国の印象が最悪になってしまう。……まぁ、王女であるヴァルシャにこんなことをしたんだ。しばらくは、印象が戻りそうもないが……」
そのため、ヴァルシャが楽しめるようにとテベンティラは、王太子に色々と聞いたりした。
シャルミスタの時にどうにかしようとしたが、シャルミスタはテベンティラのしようとしたことを変な方向に勘繰りすぎた。みんな悪い方向に答えを向けてしまったのだ。
(私の言い方も、よくなかったのよね)
でも、ヴァルシャも、王太子も、そんな人たちではなかった。テベンティラも気をつけていたが、そもそもシャルミスタのような思考回路をしていなかったのが違っていたようだ。
だから、あれこれと相談して、自分のためにというより従兄と従妹のためにどうにかなればいいと思いあっている気持ちにテベンティラが応えていたにすぎない。
(本当に仲の良い兄妹みたい。羨ましいわ)
テベンティラは、次第にそんな風に思うようになっていた。
「テベンティラ嬢。ありがとう」
「?」
「ヴァルシャが、あのままでは傷心のまま戻るところだった」
「お礼を言われることはしていません」
(そもそも、幼なじみの暴走を止めきれなかったせいだもの。まさか、あんなに性格が悪かったとは思わなかったわ。あれが、本性なのよね)
誕生日のプレゼントを子息から貰った程度で、テベンティラが醜い嫉妬して外させようとしていると思い込まれるとは思いもしなかった。
まぁ、そんなことはもう終わったことだから置いておく。もう、シャルミスタのことで何かしようとする気はテベンティラには全くない。
ヴァルシャは、ダラム国の中でも宝玉と言われるほどの美人だ。そんな彼女に求婚する男は多くいたが、そんなヴァルシャが、アラカナンダとの婚約だけに頷いたのだ。
それを知っている王太子は、傷心の従妹を気にかけていた。だが、テベンティラはそこに恋愛感情が全くなかったことをヴァルシャから聞いて知っていた。
(流石に言えないわよね。従兄がいる国に嫁ぎたくて、アラカナンダが丁度、公爵家だとわかって了承しただけで、この国に嫁いで来れるなら、誰でもいいと思ったなんて)
従兄妹同士だが、王太子も従妹扱いより実の妹として扱っている気がしてならなかった。誰よりも可愛い妹。
だからこそ、そんなヴァルシャを傷つけたことに腹を立てていたのだが、そもそもが違うことをヴァルシャが伝えないのは、甘えているのだ。
そんな話をしてくれるくらいにはヴァルシャとテベンティラは仲良くなれていた。
「ヴァルシャが、こっちに嫁いで来てくれるとわかって喜んでいたんだがな。次の婚約者が誰になるのやら」
「……」
王太子のその言葉にヴァルシャと同じく、王太子も一緒にいられるのが、楽しいと思っていたのは間違いない。
(その辺は似たもの同士よね。……この2人の婚約者になるのは、大変そうね)
そんなことを思って、ヴァルシャと王太子の話をそれぞれ聞いたり、2人いっぺんに話を聞いたりして過ごすことが増えた。
その間も、学園のどこかでアラカナンダとシャルミスタがギャーギャーと口論しているのを1日1回騒いでいるのを見聞きすることになった。
そのたび、テベンティラは……。
(よく飽きないわね)
それこそ、どんなに口論しても、ヴァルシャたちをあれだけ怒らせたのだ。婚約を解消することも、破棄することも、貴族の間ではできない。どんなに相手のことを悪く言っても、離れられないのだ。貴族の間は、その上、アラカナンダがこれまでしてきたような浮気をすれば、速攻で2人とも勘当されるようだが、そうなれば貴族でなくなるのだ。
そう、勘当されたら平民となってしまう。そうなれば、解消も、破棄もしていいのだが、それが2人とも嫌なようだ。
(跡継ぎになれなくて、爵位を買うお金も出してもらえず、縁も、そのうち切られることになっている意味合いが全くわかっていないのよね。……そうまでして、あの状態で貴族のままでいたいって変な2人よね)
テベンティラだけでなくて、周りの多くがその辺に気づいていたが、わざわざ教えようとする者はいなかった。
そもそも、そこに気づいていないとは思っていなかった。
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