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しおりを挟むガネーサリンガムが、やって来てテベンティラと話した後で、ミシュラ公爵家で家族会議が行われることになった。
みんなガネーサリンガムが養子になるのを知っていた。知らなかったのは、ミシュラ公爵家でテベンティラだけだった。使用人たちも歓迎ムードになっていて、テベンティラは無表情で父に尋ねたことで、使用人たちの表情が固まっていた。
「テベンティラに言ってなかったのか?」
テベンティラの父は娘に聞かれて、妻の方を見て、そんなことを言った。それにミシュラ公爵夫人であるテベンティラの母は、ぴくりと眉を動かした。
(これは、まずいわ)
テベンティラの横にいるガネーサリンガムも、そのヤバさに気づいたようだ。そもそも、言ってなかったかとテベンティラに聞けば、よかった。それを母に振るのは、まずいに決まっている。
「あなたが、話すとおっしゃっていましたよね?」
「そうだったか?」
「そうです」
「そうか。あー、テベンティラ。ガネーサリンガムを養子にした」
「……」
「あなた、それはもうテベンティラも知っていますよ」
ここから、母が静かに怒っている状況にガネーサリンガムが居心地悪そうにしてテベンティラを見ていたが、テベンティラは微動だにしなかった。
「あー、テベンティラ。何が知りたいんだ?」
「跡継ぎを彼にするつもりで養子にしたのですよね?」
「そうだ」
「……」
ガネーサリンガムは、心配そうにテベンティラを見た。養子になって、伯父が、こんなんだと知って心配するより、テベンティラを心配してくれているのはわかったが、テベンティラは無になっていた。
「あなた、それでは言葉足らずですよ。テベンティラ、あなたが、この家の跡継ぎに相応しくないと思ったからではないわ」
母が、必死にフォローしてくれていたが、テベンティラはショックのあまり聞いていなかった。
それに気づいたのはガネーサリンガムだけだったが、彼は養母となったミシュラ公爵夫人の今後を見据えた対策にテベンティラは全くそのことを考えていないことがまるわかりすぎて、テベンティラに話す気がなかった。
そんな時にガネーサリンガムを気に入った王女が婚約したいという打診が来て、それを拒否する気がないガネーサリンガムとミシュラ公爵夫妻はダラム国の王女が嫁いで来るのに浮かれていて、テベンティラの気持ちは置き去りになっていた。
「テベンティラ。大丈夫か?」
「よくわかんない」
ガネーサリンガムは、従妹から義理の妹になったテベンティラが心配で仕方がなかった。
「あー、テベンティラ。この国で婚約したいのいるのか?」
「……いるように見える?」
「だよな」
「?」
「あー、ならさ。王女が留学を終えて戻る時にでも、あっちに留学しに行ったら、どうだ?」
「留学……。それ、いいかも」
どうせ、この国ではシャルミスタたちが学園でギャーギャーと騒いでいるのだ。それが煩くて仕方がないテベンティラは、ヴァルシャの戻る時に留学したいと王女に伝えると大喜びした。
両親も、王女とテベンティラが仲良くしているのを知っているからこそ、留学するのに反対することはなかった。
盛り上がる王女とテベンティラに何とも言えない顔をしている王太子に気づいていたのは、ガネーサリンガムとわずかの令嬢だけだった。
ガネーサリンガムは、誰と婚約しようとも利用するのも、されるのも嫌いだった。それが、王女と婚約したことで、一喜一憂している養父母が、テベンティラと王太子が良さげだから婚約するものと思って、跡継ぎにガネーサリンガムのことを養子にしたと聞いて、静かに怒っていた。それに気づく者はいなかった。
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