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しおりを挟むヴァルシャは、ガネーサリンガムと婚約したことで義理の姉妹は確定している。そのため、アニルの王太子である従兄が、テベンティラに気があるのに気づいていても、テベンティラに全くその気がないのに気づいていた。
だから、ガネーサリンガムがテベンティラに留学したらいいというアドバイスのもとで、ダラム国に来たのに婚約者に嫌われる方が困ると思ったのが強かったようだ。
元よりガネーサリンガムは、王女のヴァルシャに全く興味がないのだ。従兄の側にいたいがために婚約したなら、王太子がいればいいだろうときっぱり割り切るところがあるせいで、これまでヴァルシャの美貌でご機嫌伺いのようなことを一切しないガネーサリンガムが、素敵に見えた。
ガネーサリンガムは、王太子と婚約したら玉の輿に乗れて幸せ
になれるとは欠片も思っていなかった。テベンティラが、それに縛られないように相手を探す時間を稼ぐためにアニル国の王太子に何を言われようとも、知らぬ存ぜぬを貫こあてしているのも、ヴァルシャには素敵に見えた。
だから、テベンティラの思う理想の人を探そうとしたが、それをヴァルシャが手伝うことはなかった。
テベンティラのことを見初めたのは、妻に先立たれた王弟だったことで、アニル国の王太子はテベンティラのことを諦めるしかなくなった。
王太子が往生際悪くガネーサリンガムに当たり散らすのを見て、ヴァルシャは従兄に幻滅する一方となり、王太子はテベンティラだけでなく、実の妹のように可愛がっていたヴァルシャからも嫌われるようになった。
だが、その頃には、シャルミスタたちは貴族を諦めれば婚約を破棄できるとようやくわかって静かになっていたが、王太子がグチグチもガネーサリンガムに色々言っているのにヴァルシャが結婚してからは何かと庇う姿が、アニル国で目撃されることになった。
「また、やっているみたいね」
「あんなことする方とは思わなかったわ。ネチネチしてるわね」
テベンティラは、ダラム国で王弟と結婚して、ガネーサリンガムがアニル国の王太子にねちっこいことをされているのは、ヴァルシャのことをとられたからだと思っていた。
その辺のことを誤解しているのをテベンティラの夫は気づいていたが、その話をすることはなかった。
ガネーサリンガムが、どうにかするからテベンティラが誤解したままにしてくれと頼まれたのをそのままにしていた。それによって、テベンティラは面倒なことに巻き込まれることはなく、幸せな人生を手にすることになった。
更にはガネーサリンガムも、義妹となったテベンティラのために色々されても、ケロッとしているのにヴァルシャは益々惚れられることになり、王太子はそんなガネーサリンガムが気に入らないとばかりに意地悪いことをし続けて、みんなから白い目を向けられるようになったが、それに中々気づくことはなかった。
そんな王太子が、やっと婚約しても結婚まで進むことはなかったのは、酷い本性があらわになってしまっていたからに他ならないが、彼はそれを……。
「運命の人と婚約できなかったからだ」
そんな風に思って、ガネーサリンガムを恨むことをやめることはなかった。
彼にとって運命の人でも、テベンティラからしたらそうではなかったことを受け入れることはなかった。
テベンティラは、そんなことになっているとも知らずに幸せいっぱいの人生を送ることとなり、幼なじみたち以上の厄介事に巻き込まれることもなく、笑顔溢れる日々を過ごすことができた。
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