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しおりを挟む「ベルティーユ」
「第1王子。っ?!」
声がしてそちらを見ると松葉杖で自分の身体を支えて立ち上がって、歩く第1王子がそこにいた。
色々あって、部屋に引きこもっていると噂されていたが、歩く練習を密かにしていたようだ。
丁度、エルヴィールもベルティーユといたこともあり、そんな兄の姿を見て、目を輝かせた。
「お兄様。凄いわ! 私も、頑張るわ!」
「そうか。そうしてみるといい」
「えぇ、2人共、頑張ってるんだもの。私も負けられないわ」
エルヴィールは、目をキラキラさせて第1王子を見た。もはや、自分の兄は彼しかいないかのようにしていた。
第1王子も、同じように前より一層、エルヴィールのことを大事そうにしていた。守るべき妹だと再認識したようだ。
そもそも、レオンスが仲違いさせるようなことをしていたのだ。それに第1王子も気づいたようだ。でも、エルヴィールは全く気づいていないようで、それにベルティーユはホッとしていた。
学園でも、3人でいることが増えた。周りがヒソヒソと話すのもお構いなしに楽しそうにしていた。
それをレオンスは、遠くから見てばかりでまじることはなかった。あんなことをしたのだ。今更、兄妹と元婚約者が楽しそうにしていても、まじるなんてできるわけがなかった。
その横にいる令嬢が、あれやこれやとレオンスに話しかけていても、レオンスはベルティーユが笑っているのを見ているばかりだった。
そうこうしているうちに浮気してまで婚約したというのに浮気している時の方が、よかったと令嬢に言われるほど、レオンスはベルティーユばかりを見ていたことで婚約したのに愛想をつかされることになるのも、すぐだった。
やはり、ベルティーユとやり直そうとしたレオンスだったが、その頃には、第1王子とベルティーユが婚約することになり、更には王太子が第1王子となった。
その時も、彼は国王にこんなことを言っていた。
「な、なんで、私ではないんですか?!」
「お前、自分が王太子になれると本気で思っているのか? 側近は、お前に付き合えきれないととっくに辞めている。執務を何もしていないで、浮気していた令嬢と好き勝手し続けているのにお前を王太子にするわけがないだろ」
「え? 側近が、やめた……?」
第1王子は、いつの間にか、以前より執務を増やしていた。それに病気に打ち勝とうとするベルティーユの姿勢に感化されて前より、フレンドリーになっているのもあり、彼を支持してついて回る者が増えたのも大きかった。
何より、ベルティーユの頑張りによって、第1王子のみならず、エルヴィールが見違えるように変わったのも大きかったようだ。
レオンスは、ぼーっと元婚約者であり、兄の婚約者となったベルティーユを眺めているのに忙しくしている間にそんなことになっていたことを知りもしなかった。
そもそも、打算的な考えから、ベルティーユと婚約しようとしたのも言葉にしなくとも、わかってしまったのも大きかった。
「ベルティーユ様が、頑張っているのを構ってもらえないとか、頼ってもらえないからって浮気に走るなんておかしいわよね」
「本当にそうよね。大体、エルヴィール王女のことだって、色々周りに言うより本人に言って直させればよかったのよね」
レオンスは、色々言われるようになり、更には婚約した令嬢も浮気の末、王太子となると思っていた王子と婚約したはずが違ったことで、両親や周りから色々言われることに耐えかねて、婚約破棄をするなり、修道院に入ってしまったのだ。
第2王子は、更に色々言われるようになるも、寂しそうにベルティーユたちを見るばかりで、そこから頑張るなんてことをしなかった。
そのため、再び誰かと婚約することもないまま、往生際悪く、ベルティーユの周りをうろちょろするのを見かねて、心因的なもので療養が必要になったということにして、田舎で療養させることにして、そのまま王宮に戻らせはしなかった。
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