姉の八つ当たりの対象の持ち主となっていましたが、その理由まで深く考えていなかったせいで、色々な誤解が起こっていたようです

珠宮さくら

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(エルマンガルド視点)

あの女が婚約しようとしているのが、キルペリクだと聞いて焦ったが、すぐに婚約させてもらえたことに喜んでいた。

悔しがっているはずだと思って、レティシアを探し歩いたが、中々見つけられなかった。それをこう思っていた。


「ふん、私に婚約したかった子息を取られて逃げ惑っているのね」


そう思って優越感に浸っていた。その間は、オルテンシアが婚約を解消したいとあれこれ言っていた子息と婚約したのも気にならないほど、浮かれていた。

なのにそんな浮かれていたのも、束の間だった。


「え? レティシア、留学しているの……?」
「あら、知らないの? あなたたち、親友なのよね?」
「そ、そうよ。ちょっと、うっかりしていただけよ」


他の令嬢にあまりにレティシアを見かけないから聞いてみたら、そんなことを言われて慌てた。留学するなんて、聞いていない。


「どうなってるの??」


そういえば、オルテンシアも留学していることを思い出して、もしかして2人で何か企んでいるのではないかとピンときた。

でも、すぐにレティシアとオルテンシアは別々の国に留学していることがわかった。きっと、あわせる顔がなくて留学したのだろう。そう思うと嬉しくて仕方がなかった。


「お母様。お茶会のお誘いはないの?」
「来ていないわ」


あの女が留学中ならお茶会に出ても腹が立つことはないと思っていたのに母に聞くと困ったように毎回そう言われた。

あからさまにムスッとすると母は……。


「婚約したのだもの。婚約者とパーティーでも行ったら?」
「っ、!?」


母とその言葉にハッ!とした。なぜ気づかなかったのかと思った。

それを聞いて、キルペリクを学園で探したが中々見つからなかった。それでも、婚約者を見つけてパーティーに連れて行ってもらわなければと思って探し回ったが……。


「何で見つからないのよ?!」


探し続けている間、婚約者はオルテンシアと同じように親が決めた婚約者のことなどキルペリクは、放置しっぱなしだった。

その代わりのように好みの令嬢を同伴してパーティーに出席していたし、新しい婚約者が探し回っている間に浮気に勤しんでいた。それを妹から言われていたはずなのにエルマンガルドは、すっかり忘れていた。

そのうち、やっと会えたキルペリクにパーティーに連れて行けと言うも聞いてもらえず、オルテンシアが留学していてストレスがたまる一方となっていたエルマンガルドが不満を爆発させたのは、すぐだった。


「浮気相手を連れて行くのに忙しいっですって!? 私が、婚約者なのよ。私を連れて行かないで、自分だけ楽しんでいるなんて許せない」
「は? そんなの君の妹と婚約していた時から、同じことしてたのを知ってるだろ? 親が決めた婚約者なんかと仲良くしてられるか。大体、お前みたいなの好みじゃないんだよ。お前より、親友だって言ってるレティシアの方が断然好みだ」
「は? 今、なんて?」


好みじゃないと言われただけでなくて、レティシアの方が好みという言葉を聞いて、エルマンガルドは殺気だった。

そこから、二度とレティシアの方が良いと言われないようにキルペリクのことを教育し直した。浮気しまくっている令嬢たちにも片っ端から身の程を知れと粛清してあげた。

そのおかげで、私がキルペリクとパーティーに出るようになるまで、それなりに時間はかかったが、他の令嬢を誘ってパーティーに行くことはなくなったし、学園で休み時間に私がキルペリクのことを探し回ることはなくなった。


「エルマンガルド。ここにいたか」
「……何か用?」
「いや、君の姿が見えなくなったから心配したんだ」
「……」


キルペリクに執着するまでになるのにそんなに時間はかからなかった。うんざりするくらい、婚約者だからとつきまとわれるようになって、げんなりしていたが、彼の浮気相手の令嬢たちが悔しそうにしているのを見れて、私はそこは気分がいいままなのに変わりはなかった。

この光景をレティシアが見て悔しがるのを見たら、もっと嬉しいのだが、留学から戻って来ないことが残念でならなかった。

更には留学先で何かやらかしたようで、王族に嫌われ、それによって家族にも嫌われる厄介者になったエルマンガルドに笑いが止まらなくなった。







妹のオルテンシアが、婚約して留学先から戻って来ても、エルマンガルドは暴れることはなかった。

逆にレティシアは自暴自棄になってしまったようだが、エルマンガルドは悔しそうにするレティシアを見て馬鹿なことばかりするのを見て楽しそうにするばかりだった。


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