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しおりを挟むせっかく誘われたパーティーで、ずっと浮かない顔をして壁の花をやっていたオルテンシアのことを咎めるために声をかけられたのだと思っていた。
そのために呼ばれたと思っていたのだが、どうにも雰囲気が違っていた。案内されたのは、中庭だった。
「オルテンシア。紹介するわ。私の伯父のアダルベロンよ」
「初めまして、オルテンシアです」
なぜか、伯父を紹介されたが、マナーがなっていないとアダルベロンからみっちりしごいてもらう気なのかもしれないと思っていた。だから、中庭なのかと思った。なにせ、留学して来てからコミュニケーションを一生懸命取ろうとしてくれているのに無下にしてきたのだ。
マナーがなっていないから、どこにも出たがらないとか勘違いされそうだ。婚約者がいたのにどのパーティーにも連れて行ってもらったことがオルテンシアはない。
そんなことをあれこれ考えていたから、オルテンシアはアダルベロンの話を全く聞いていなかった。
しかも、王女の姿が見えなくなっていたことにも気づいていなかった。
兄からの手紙が来てから、そんなことをぐるぐると考えていた。
「オルテンシア嬢。私との婚約は、そんなに嫌か?」
「……?」
婚約??とオルテンシアは思って頭の上ではてなマークが浮かんでいたが、アダルベロンはきょとんとした顔ではなくて、ショックなことがありすぎて現実感がないように見えた。
そのため、ちゃんと理解しているかを再確認したら、名前は覚えてくれていたが、話した内容がいまいち頭に入らないようだ。
一変に色々ありすぎて、ショック状態から抜けきれていないのではないかとアダルベロンは思うようになって、オルテンシアがそんな状態になっていることに心が痛んでならなかった。
オルテンシアは、ショック状態というよりネガティブ思考になりすぎていて、王弟から婚約を申し込まれるなんてことになるとは思っていなかった。しかも、さっき王女に紹介されたばかりだ。
それもあって、婚約したいと言われたのも都合よく聞こえたものと思っていたが、アダルベロンはあまりにも危うい存在に見えてならなかったため、外堀を埋めてオルテンシアが留学を終えて戻る頃には、婚約者になっていた。
そこまでになって、婚約したがっていたのは本当のことだったのかとオルテンシアはようやく気づくことになった。
「え? アダルベロン様も一緒に来るんですか?」
「……駄目か?」
「いえ、お忙しいのではないかと思って」
なぜか、オルテンシアと一緒に行くと言うアダルベロンに不安しかなかった。あの姉が、妹が王弟と婚約したと知って暴れるのではないかと思えてならなかったのだ。
だから、一緒に来ようとするのをどうにかして阻止したかったが、それが逆にアダルベロンは怪しいと思ってしまったようだ。最終的には何がなんでも着いて行くと目が物語っていて、それを見聞きしている王女や周りの令嬢たちは……。
「片時も離れたくないのね」
アダルベロンが、オルテンシアと一緒にいたくて必死になっていると思っていて、オルテンシアは見送りの時に羨ましがることになったが、オルテンシアはそれらを見ても聞いてもいなかった。
また、姉に大事なものを壊されることになると思って、気が滅入ってならなかった。
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