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しおりを挟む「お帰りなさい。オルテンシア」
「……ただいま帰りました。お姉様」
「紹介してくれる?」
笑顔で出迎えてくれた姉にそう言われてオルテンシアは、顔色を悪くさせた。
でも、婚約者のアダルベロンを紹介しても暴れることはなかった。それでも、オルテンシアだけになったら何かして来る気だとオルテンシアだけでなく、この家ではみんなが思っていたが、エルマンガルドが暴れることはなかった。
学園では、兄の手紙の通りにキルペリクがエルマンガルドにぞっこんな姿にオルテンシアは目を見開いて驚いてしまった。
「一方的なようだな」
「……そうですね」
キルペリクは、婚約者のエルマンガルドに煙たがられているように見えるが、それでもオルテンシアが見たことないほど幸せそうにしていて、好みが姉のような令嬢だったことにドン引きしてしまった。
でも、婚約者をぞんざいにしているようで、パーティーには出ているようだ。それが目的の方が強そうだが、家族以上に構われているのは間違いない。
それがストレスになっていないのは、親友のレティシアが散々な目にあっているのが嬉しくて仕方がないようだ。
そのため、オルテンシアが玉の輿に乗って留学先から戻って来ても嫉妬する気持ちがエルマンガルドにはわからなかった。
姉に八つ当たりされないことに油断していたオルテンシアはレティシアに遭遇した時、たまたま1人でいた。
王弟は、オルテンシアの姉や兄、両親と会ってまともそうに見えたこともあり、大丈夫だと思ってオルテンシアが学園にいる時は外交できているのもあって、仕事をすべく王宮に行っていた。
「あなたのせいよ」
「え?」
レティシアにそんなことを言われたことはなかった。声は似ていないが、留学する前の姉に雰囲気が似ている気がして、オルテンシアは後退りをしようとしたが駄目だった。
「せっかく、私が元婚約者からも、エルマンガルドからも助けてあげたのに。どうして、別の国に留学するのよ!!」
「っ、」
オルテンシアは腕をがっしり掴まれて、レティシアから怒鳴られ続けた。
姉は、ぬいぐるみやものに当たり散らしていたが、レティシアは相手に当たり散らす人だったようだ。
親友同士で、こういうところがそっくりだったとは誰が思うだろうか。
「あなたのせいで、私が今、どんな目にあっていると思っているのよ!!」
それこそ、そんなの知るかと普通の令嬢なら思うところだが、本性を目の当たりにしたオルテンシアは恐怖で固まっていた。
そんな状況で助けてくれたのは、姉のエルマンガルドだったとはオルテンシアも思いもしなかった。
「ちょっと! オルテンシアに何してるのよ!!」
「っ!?」
「私の妹よ」
エルマンガルドは、レティシアからオルテンシアを引き離して背中に隠した。
それこそ、初めて姉らしいことをされてオルテンシアは感激したが、この状況をややこしいことにしたのは、レティシアではなかった。
「おい、エルマンガルド! こんなところで、何をやっているんだ!?」
オルテンシアたちの兄のマクシミリアンがやって来て、エルマンガルドが妹とレティシアに何かしているように見えた。
トンチンカンなことを言って、エルマンガルドに酷いことを言う兄にオルテンシアは、冷めきった目を向けることになったのは、この時からだった。
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