姉の八つ当たりの対象の持ち主となっていましたが、その理由まで深く考えていなかったせいで、色々な誤解が起こっていたようです

珠宮さくら

文字の大きさ
9 / 12

しおりを挟む

「お帰りなさい。オルテンシア」
「……ただいま帰りました。お姉様」
「紹介してくれる?」


笑顔で出迎えてくれた姉にそう言われてオルテンシアは、顔色を悪くさせた。

でも、婚約者のアダルベロンを紹介しても暴れることはなかった。それでも、オルテンシアだけになったら何かして来る気だとオルテンシアだけでなく、この家ではみんなが思っていたが、エルマンガルドが暴れることはなかった。

学園では、兄の手紙の通りにキルペリクがエルマンガルドにぞっこんな姿にオルテンシアは目を見開いて驚いてしまった。


「一方的なようだな」
「……そうですね」


キルペリクは、婚約者のエルマンガルドに煙たがられているように見えるが、それでもオルテンシアが見たことないほど幸せそうにしていて、好みが姉のような令嬢だったことにドン引きしてしまった。

でも、婚約者をぞんざいにしているようで、パーティーには出ているようだ。それが目的の方が強そうだが、家族以上に構われているのは間違いない。

それがストレスになっていないのは、親友のレティシアが散々な目にあっているのが嬉しくて仕方がないようだ。

そのため、オルテンシアが玉の輿に乗って留学先から戻って来ても嫉妬する気持ちがエルマンガルドにはわからなかった。

姉に八つ当たりされないことに油断していたオルテンシアはレティシアに遭遇した時、たまたま1人でいた。

王弟は、オルテンシアの姉や兄、両親と会ってまともそうに見えたこともあり、大丈夫だと思ってオルテンシアが学園にいる時は外交できているのもあって、仕事をすべく王宮に行っていた。


「あなたのせいよ」
「え?」


レティシアにそんなことを言われたことはなかった。声は似ていないが、留学する前の姉に雰囲気が似ている気がして、オルテンシアは後退りをしようとしたが駄目だった。


「せっかく、私が元婚約者からも、エルマンガルドからも助けてあげたのに。どうして、別の国に留学するのよ!!」
「っ、」


オルテンシアは腕をがっしり掴まれて、レティシアから怒鳴られ続けた。

姉は、ぬいぐるみやものに当たり散らしていたが、レティシアは相手に当たり散らす人だったようだ。

親友同士で、こういうところがそっくりだったとは誰が思うだろうか。


「あなたのせいで、私が今、どんな目にあっていると思っているのよ!!」


それこそ、そんなの知るかと普通の令嬢なら思うところだが、本性を目の当たりにしたオルテンシアは恐怖で固まっていた。

そんな状況で助けてくれたのは、姉のエルマンガルドだったとはオルテンシアも思いもしなかった。


「ちょっと! オルテンシアに何してるのよ!!」
「っ!?」
「私の妹よ」


エルマンガルドは、レティシアからオルテンシアを引き離して背中に隠した。

それこそ、初めて姉らしいことをされてオルテンシアは感激したが、この状況をややこしいことにしたのは、レティシアではなかった。


「おい、エルマンガルド! こんなところで、何をやっているんだ!?」


オルテンシアたちの兄のマクシミリアンがやって来て、エルマンガルドが妹とレティシアに何かしているように見えた。

トンチンカンなことを言って、エルマンガルドに酷いことを言う兄にオルテンシアは、冷めきった目を向けることになったのは、この時からだった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

望まない相手と一緒にいたくありませんので

毬禾
恋愛
どのような理由を付けられようとも私の心は変わらない。 一緒にいようが私の気持ちを変えることはできない。 私が一緒にいたいのはあなたではないのだから。

〈完結〉貴方、不倫も一つならまだ見逃しましたが、さすがにこれでは離婚もやむを得ません。

江戸川ばた散歩
恋愛
とある夏の避暑地。ローライン侯爵家の夏屋敷のお茶会に招待された六つの家の夫妻及び令嬢。 ゆったりとした時間が送れると期待していたのだが、登場したこの日の主催者であるローライン夫妻のうち、女学者侯爵夫人と呼ばれているルージュの口からこう切り出される。「離婚を宣言する」と。 驚く夫ティムス。 かくしてお茶会公開裁判の場となるのであった。

私を嫌いな貴方が大好き

六十月菖菊
恋愛
「こんなのが俺の婚約者? ……冗談だろう」  そう言って忌々しげに見下してきた初対面の男に、私は思わず。 「素敵……」 「は?」  うっとりと吐息を漏らして見惚れたのだった。 ◇◆◇  自分を嫌う婚約者を慕う男爵令嬢。婚約者のことが分からなくて空回りする公爵令息。二人の不器用な恋模様を面白おかしく見物する友人が入り混じった、そんな御話。 ◇◆◇  予約投稿です。  なろうさんにて並行投稿中。

大恋愛の後始末

mios
恋愛
シェイラの婚約者マートンの姉、ジュリエットは、恋多き女として有名だった。そして、恥知らずだった。悲願の末に射止めた大公子息ライアンとの婚姻式の当日に庭師と駆け落ちするぐらいには。 彼女は恋愛至上主義で、自由をこよなく愛していた。由緒正しき大公家にはそぐわないことは百も承知だったのに、周りはそのことを理解できていなかった。 マートンとシェイラの婚約は解消となった。大公家に莫大な慰謝料を支払わなければならず、爵位を返上しても支払えるかという程だったからだ。

離婚から玉の輿婚~クズ男は熨斗を付けて差し上げます

青の雀
恋愛
婚約破棄から玉の輿の離婚版 縁あって結婚したはずの男女が、どちらかの一方的な原因で別れることになる 離婚してからの相手がどんどん落ちぶれて行く「ざまあ」話を中心に書いていきたいと思っています 血液型 石女 半身不随 マザコン 略奪婚 開業医 幼馴染

【完結】イアンとオリエの恋   ずっと貴方が好きでした。 

たろ
恋愛
この話は 【そんなに側妃を愛しているなら邪魔者のわたしは消えることにします】の主人公二人のその後です。 イアンとオリエの恋の話の続きです。 【今夜さよならをします】の番外編で書いたものを削除して編集してさらに最後、数話新しい話を書き足しました。 二人のじれったい恋。諦めるのかやり直すのか。 悩みながらもまた二人は………

【完結】死に戻り8度目の伯爵令嬢は今度こそ破談を成功させたい!

雲井咲穂(くもいさほ)
恋愛
アンテリーゼ・フォン・マトヴァイユ伯爵令嬢は婚約式当日、婚約者の逢引を目撃し、動揺して婚約式の会場である螺旋階段から足を滑らせて後頭部を強打し不慮の死を遂げてしまう。 しかし、目が覚めると確かに死んだはずなのに婚約式の一週間前に時間が戻っている。混乱する中必死で記憶を蘇らせると、自分がこれまでに前回分含めて合計7回も婚約者と不貞相手が原因で死んでは生き返りを繰り返している事実を思い出す。 婚約者との結婚が「死」に直結することを知ったアンテリーゼは、今度は自分から婚約を破棄し自分を裏切った婚約者に社会的制裁を喰らわせ、婚約式というタイムリミットが迫る中、「死」を回避するために奔走する。 ーーーーーーーーー 2024/01/13 ランキング→恋愛95位 ありがとうございました! なろうでも掲載20万PVありがとうございましたっ!

らっきー♪

市尾彩佳
恋愛
公爵家の下働きをしているアネットと、その公爵の息子であるケヴィン。同じ邸で育ちながら、出会ったのはケヴィン16歳の年。しかもふかふかなベッドの中。 意思の疎通の食い違いから“知り合い”になった二人。互いに結ばれることがないとわかっているからこそ、頑なに距離を保ち続けていたはずが──。「これがわたしの旦那さま」の過去編です。本編をお読みでなくても大丈夫な書き方を目指しました。「小説家になろう」さんでも公開しています。

処理中です...