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しおりを挟む何とか、王太子である双子の兄のキルペルクに相応しい婚約者ができた。
「シャルレーヌちゃ~ん。どれも、美味しそうですね~」
「……」
できたはずだったが、彼女が王太子の婚約者のポジションになった理由のほとんどが、シャルレーヌが義妹になることだったようだ。シャルレーヌのことをちゃん付けで呼んで嬉しさを隠すことなく、王太子のやるべきことをやらせている。
つまりは、婚約した途端に尻に引かれっぱなしになったということだ。
「おい、気安いぞ」
「王太子殿下。まだ、休憩時間ではありませんよ~。そちらを片付けてからになさってくださいね~」
王太子の執務室で、婚約者はシャルレーヌとお茶をする気でいた。側近たちは、見目の麗しすぎるシャルレーヌとそれには劣っても引けを取らない王太子の婚約者がそこにいるのだけでも目の保養になっていた。
語尾を伸ばしていても、彼女は有能で無駄があるようでない。
シャルレーヌの横には、彼女の婚約者のオーギュストが座っていたが、ぴったりとくっついて座っているだけだったとしても、側近たちを無駄に威嚇することもなく、ちょこんと座っていた。
ちょこんなんて表現が正しいのかはさておき、オーギュストはシャルレーヌの隣にいる時に邪魔にならないようにする時はそんな風に見えた。
王太子の見た目の良さに劣っても、美丈夫でシャルレーヌのことを軽々と運べるほどでも、大人しくしていようと思えばできるのだと思うほど、器用にこなしていた。
王太子の婚約者とやり合うことをシャルレーヌの側では、オーギュストたちはやらないと協定を結んでいた。シャルレーヌの前では、仲の良いとまで見せずとも、仲が悪いなんて思われると一緒にいる時間が削られると思ってのことだ。
「仕方がないですね~」
「それは、こっちの台詞だ」
そう言いながら、中々上手くやっていた。
シャルレーヌは、王太子の婚約者とオーギュストの協定うんねんなんて気にせず、この状況て自分が邪魔になっていないかを気にしていた。
そんな中で黙々と側近たちが仕事をしているとシャルレーヌが嬉しそうにするのを知っていて、側近たちは王女がいる時の方がテキパキと動けていたりする。
何気にシャルレーヌにできる側近だと褒められることが好きだった。
問題は、婚約者に噛み付く王太子だけだ。婚約者のおかげで、評価がだだ下がりしていたのもちょっとずつ回復していた。
でも、見た目が物凄く良い王太子の残念なところは全く直っていなかった。むしろ、悪化して見えた。
シャルレーヌの側ではやらないようにするとかしていれば、まだマシなことにも王太子は、そこら辺のことに気づいていない。
配慮ということをされる側で、したことがほとんどなかったにしろ。あんまりなことになっていた。
婚約者の令嬢の言葉に王太子は……。
「っ、なら、こんなところでお茶をするな!」
「あら、わざわざ、シャルレーヌちゃんをここに招いたのに。必要ないと? なら、次からはそうします。1人寂しくお過ごしください。せっかく、シャルレーヌちゃんがお菓子を作ってくれたのに」
「っ、」
「こちらは、先程からこんな煩くしているのに仕事をこなしている側近の方々に差し上げても?」
「……」
シャルレーヌは、こくんと頷いた。それに側近たちが嬉しそうにした。
それすら可愛いと思われて悶絶されたが、シャルレーヌはもっとたくさん作ってくればよかったと思っていた。
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