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しおりを挟むそうそう、ミュリエルとトレイシーの元婚約者の王太子の方が、どうなったかというと……。
「王太子が婚約者になったのにちっとも贅沢させてくれないじゃない!」
貴族令嬢になったばかりの娘は、玉の輿に乗れたら贅沢三昧ができると思っていたようで、そんなことを言っていた。
彼女もまた隠していたが、珍しい色合いを持っていた。でも、その目を隠すように言われていて、ひた隠しにしていた。
なぜ、そうしなければならないのかを知らなかったが、母親に言われて隠していたが、貴族となってからトレイシーが隠しもせずに2つも珍しい色合いを見せびらかしているのに彼女はイラッとしていた。
自分は隠し続けるように言われているが、珍しい色合いをなぜ隠さなければならないのかがわからなくなってもいた。
トレイシーみたいなのでも、婚約者になれたくらいだから、自分でもできると思ってすらいた。
最近では、母が見ていないところでは、珍しい色合いなのを隠すこともしなくなっていた。
「こんなの割に合わないわ」
好き勝手なことを言う新しい婚約者のトレイシー以上に常識のないことを言うのに王太子は、自業自得なのに頭を抱えてばかりだった。
「こんなのと婚約したなんて、どうかしていた」
今更になって、後悔しても後の祭りでしかなかった。トレイシーよりも更に酷いことを婚約者にしたとして、側近たちも付き合いきれないとやめてしまっていた。
王太子は、両親にも見放されることになり、王太子の地位を追われることにもなった。そんなのと婚約している意味がないと婚約破棄すると言ったのは、貴族になったばかりの令嬢だった。
そんなのをそのまま家に置いておいたら、家が取り返しのつかないことになると思って勘当されることになった。
「大体、そんな色合いを隠していたとは聞いてないぞ! ジンクス持ちなら、お前とも結婚していなかったんだ」
「え? ジンクス持ち??」
その時になって、母親が隠すように言っていた意味を知ることになった。
「何、それ。珍しい色合いなのに幸せになるのが難しいって、わけわからない」
「珍しい色合いを持っているせいで、問題ばかりを起こすと言われているんだ。災いの種のような存在だ。最近は、滅多に生まれなくなっているから、騒ぐ者も少なくなったがな」
「それじゃ、あの前の王太子と婚約してた令嬢って最悪だったってことじゃない」
そんなの知らなかったと騒いだところで、勘当されることが取り消されることもなかった。
再婚相手の連れ子がそんなことをしたとして、妻を追い出したりして、妻と義理の娘がしでかしたことであり、珍しい色合いを持っていたことも知らなかったと周りに言ったところで、わかってくれる人が現れることはなかったようだ。
まぁ、そうなるだろうなということが起こっただけで、それが話題となって盛り上がることはなかった。
ジンクスうんねんでも、盛り上がることはなかった。珍しい色合いを持っている者は数年置きに隔世遺伝していて、両親の親から受け継いだ者はトレイシーがそれこそ珍し過ぎたのだ。
珍し尽くめだったせいで、幸せになれなかったのだとしたら、皮肉でしかない。
だが、そんな話では盛り上がることはなかった。
盛り上がったのは、オリーヴとパーシヴァルの婚約のことだった。
「あら、また2人でいらっしゃるわ」
「お似合いよね」
それこそ、そんな光景を見たら、ミュリエルが狂喜乱舞していそうだと呟く令嬢もいた。
「ミュリエル様だって、あちらでお似合いだって騒がれているのにね」
「そうみたいね。最近は、義妹のことできもそぞらになっておられるみたいで、国王がやきもきしているらしいわよ」
「あら、それ見てみたいわね」
「そうなったら、パーシヴァル様も気が気ではなくなりそうね」
そんなことを隣国で噂されている国王は、ミュリエルの気が自分に向くようにするのに苦戦することになり、国王を昔から知る者は……。
「陛下をあそこまで翻弄できるのは、彼女しかいないな」
そんな風に思われていたことも、ミュリエルは気づくことはなかった。
そんなところが、益々素敵に見えてしまっているようで、国王に溺愛され続けることになったミュリエルは幸せいっぱいの人生を歩むことになった。
ミュリエルを伴侶に選んでいたらと元婚約者が悔み続けていることも知る者はいなかった。
そして、一番厳しい修道院に入ったトレイシーが、姉が幸せになるのを妬み続けるのと実の父親も同じようにミュリエルのことを妬み、あの女のせいでこうなったとミュリエルとその母のせいにして、幸せとは真逆の方向へと突き進んでいった。
それこそ、似たもの親子だったが、その親子が父の心配も、娘の心配もすることはなかった。
ただ、自分がこんな目にあっているのに幸せになる者の話を聞くのが嫌でならない人生を送ることをやめることはなかった。
そんな2人のことが、ミュリエルの耳に入らないようにしていたのは国王だったが知ったところで、ミュリエルが昔のように落ち込んで立ち直れなくなることはなかっただろう。
耳に入るのは義兄となったパーシヴァルと義妹となったオリーヴのことが多かったことで、ミュリエルの笑顔が曇りきることはなかった。
それによって幸せいっぱいの人生を歩み続けることができたのだった。
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