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しおりを挟む(リシャール視点)
とんでもないタイミングで、婚約破棄をしてしまった。
それに落ち込んでいるとテオドールが声をかけてきた。
「そんな顔するな」
「だが」
「破棄のタイミングを先延ばしにしてくれてたのは、私たちのためだろ?」
「っ、」
私たちのため。そう聞いて、ギクッとしてしまった。
なんてことだ。こんなところで、バレてしまうとは……。
「やっぱりな」
「すまない。最後まで、止められたら良かったんだが」
そう、ヴィクトワールが破棄をした途端、妹にあの調子で色々しそうで、それを食い止めるのにタイミングを見計らっていたのは確かだ。
でも、彼女が泣きじゃくる姿に耐えられなくなった。あんなに泣くのを見ていたくなかった。
「よく考えてみてくれ。遅かれ早かれ、破棄してたんだ。あれが、暴れないわけがない」
「……」
テオドールは、さらに続けた。まだ、なにかあるのかと思っていた。
「リュシエンヌと婚約したかったのだろ?」
「っ、!?」
バレているとは思わなかったから、そんなわけがないとは言えなかった。
一番否定すべきところで、嘘をつけなかった。
ずっと隠してきた。なのにここで、そんなことを言われるとは思わなかった。
誰にも知られていないと思っていた。誰にもバレずに終わらせるつもりでいたのに気づかれていたとは思わなかった。
「やはりな。彼女を選んで婚約する理由が、それくらいしか思いつかなかったんだ」
「……」
彼女の……。リュシエンヌの役に立てることをしたかった。
だから、両親にも隠していたが、破棄を中々しないのに弱みでも握られているのではないかと勘ぐられたりしたが、彼女のために粘っているとわかってからは、何も言わなくなった。
陽だまりのような彼女に見惚れ、無様に噴水に落ちたのを見つけて、声をかけられた時に一目惚れした。澄んだ瞳をしていて、その中に自分が映っているのを見て、嬉しかった。
それから、ずっと見ていた。そこで、気づいてしまった。彼女の目が、私に向けられたのは、あの時だけで、同じように噴水に落ちたテオドールをその後、彼女は追いかけていたのを。
彼女が恋したのは、私ではなかった。テオドールだった。
それを彼女の姉は、凄い顔をして見ていた。あんな恐ろしい顔を初めて見た。
今も時折、同じような顔をしているが、最初に見た日のことを今も忘れられない。
リュシエンヌの恋を成就させるために動くことにした。
テオドールに感謝されて頭を下げられた。それに私は……。
「彼女を幸せにしてやってくれ」
「もちろんだ」
こうして、私の初恋は終わりを迎えた。
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