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しおりを挟む機嫌よく帰って行った姉を見送って、リュシエンヌは……。
「旦那様」
「っと、間違えた」
「?」
わざとらしくテオドールがそんなことを言ったのにリュシエンヌは首を傾げた。
「それは、知り合いの結婚式の予定だった」
「そんなことをなさったら、その方が……」
「いや、ぶち壊してくれと頼まれたんだ」
「え?」
(結婚式をぶち壊す……??)
なぜ、そんなことをするのかとリュシエンヌは思った。
テオドールは、新婦が浮気しているのが発覚していて、新郎をどうにか目を覚まさせてやめさせたいと言っているが、テオドールはそんなことをするために仕事を放って行けない。仕事の方が大事だ。そんなの自分たちで、どうにかしろと思っていたが、父親が世話になった家のことで、自分は仲良くする気はないが無視するのも面倒だったらしい。
でも、本気でぶち壊すとはテオドールも思っていなかった。結婚式のところに行けば、わかると思ってのことだ。
だが、ヴィクトワールは見事なまでにぶち壊すことに集中しすぎて、コンスタンスたちの結婚式ではないことに気づくことはなかった。そのまま、結婚式をぶち壊して、新婦のことですっかり目が覚めた新郎にヴィクトワールは一目惚れされた。
サヴィニー伯爵より年上の子爵だが、好きになる相手が残念な人ばかりだったようだ。
今回も、また残念なのを好いたのだが、ヴィクトワールは見る目があると思ったようだ。凄く嬉しそうにしていた。
トントン拍子に婚約して、うきうきと嫁いで行くことになったのをサヴィニー伯爵夫妻も、リュシエンヌは呆然として見送った。
あまりにもあっさりとヴィクトワールが嫁いだことに夢なのではないかとサヴィニー伯爵夫妻が、しばらく疑心悪鬼になったようだが、出戻って来ることはなかった。
コンスタンスたちの結婚式は素敵だった。ヴィクトワールが襲来して来るのではないかと気にかけているようなので、前もって知らせておいた。
その後、結婚したのにコンスタンスもびっくりしていたが、隣国に嫁いだから平和になったとリュシエンヌたちは、お互い素敵な家庭を持ってからも仲良くした。
2人とも、仲睦まじい夫婦だと羨ましがられるまでになり、お互い夫に溺愛されて幸せいっぱいの日々を送ることになった。
ちなみにヴィクトワールの方は、浮かれていた彼女の幸せは嫁いで早々潰えた。
贅沢なことを一切禁じられ、使用人を雇うお金が勿体ないとヴィクトワールがやることになった。
「何で私が、こんなことしなきゃならないのよ!」
「嫁なら当たり前のことだ。愚痴ってる暇があるなら、きびきび働け」
「っ、」
それだけでなく、結婚した相手が物凄い見栄っ張りで、自分のことにのみお金を使うような男だったが、ヴィクトワールは今更実家に帰ることもできなかった。
そんなお金すら管理されて都合をつけられなかったのだ。
手紙を出すこともできず、変なことを口走れば食事抜きとなるため、ヴィクトワールは言われた通りのことをするしかなかった。
実家が気にかけてくれるのを期待したが、サヴィニー伯爵夫妻がヴィクトワールから連絡がないのをいいことだと思って快適に暮らしていることを知ることはなかった。
そう、ヴィクトワールがいなくなったことで、ホッとしている人間ばかりだった。
ただ1人を除いてだが。
(お姉様、どうしているかしら)
散々嫌っていた妹だけが、時折姉のことを思い出して幸せにしているかと気にかけていたことをヴィクトワールが知ることもなかった。
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