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しおりを挟むオーギュストは、その頃幼なじみが恐怖体験をしているとも知らず、騎士団に合流しようと必死だった。向こうが探してくれていたことで、すぐに報告することができた。
「オーギュスト! 無事か!?」
「団長! ガキが、肉焼いて野宿してます!」
「あ?」
オーギュストは気が動転しすぎたのと騎士団と合流できたことで安堵しすぎて、まとめようとしてまとめきれてない報告がそれだった。わかるような、わからんような……。
流石のエドガーは、一度で理解しきれなかった。ガキは、まだしも肉を焼いて野宿って、なんだ?
「一般人が、野宿してるのかも知れません。肉を焼く匂いがします」
テオドールが、ぽつりと言うのを聞いてオーギュストは大きく頷いていた。その通りと言いたいようだ。
こんなところで、呑気に野宿してるなんてとエドガーだけでなくて他の騎士たちも眉を顰めずにはいられなかった。
害獣が出始めて、森の奥で野宿するようなのは猛者揃いの騎士団くらいしかいないはずだ。それなのにガキが野宿したりするなんてありえないことだった。それこそ、よくそこまで無事に入れたもんだとすら思えた。まぁ、運が良かったとしても、その運もそこまでになるだろうが。
「ガキって言ったな? んなとこで、いい匂いなんざさせてたら、害獣が寄って来ちまうだろうが
。ルドヴィクは、そいつと一緒なんだな?」
「そ、そうです」
「テオドール」
「先に行きます」
エドガーは、一番足の速い副団長の名を呼ぶとすぐさま駆け出していた。肉の焼ける匂いを追って行ったのだろう。風向きで、肉が焼ける匂いなんて、エドガーにはしなかったが、テオドールなら嗅ぎ分けられるのだろう。
とりあえず、テオドールがこの中で一番速いし、一般人に怪我なんてさせられないから、緊急事態だとばかりに向かわせることにした。
「俺たちも後を追うぞ。オーギュスト、その間、もうちょい詳しく話せ」
「あ、えっと、俺らより、ガキだと思います。声変わりもしてませんでした」
「そいつ、一人だったのか?」
「一人でした。すっげぇ美味そうな肉を焼いてて、あ、狩ったって言ってました」
「……」
エドガーは、その肉について何となく察するものがなくもなかったが、美味いなんてことは聞いたことがなかった。しかも、ガキ一人しかいないのに狩ったって言うのだから、小さな獣だろうなと思っていた。
まさか、自分たちが討伐に来ている害獣だなんて、ここにいる誰もが思っていなかった。
「この森で野宿なんて、何考えてんだよ」
ぼそっと他の騎士がぼやいた。それに頷く者や家出でもしてんのかもなと言う者もいた。
エドガーも、家出かも知れないと思っていたが……。
「そいつ、隣国から来たらしくて、えっと、馬車に乗せてもらおうとしたけど通らないから、今日は野宿にしたとか」
「……」
隣国からなら、害獣の恐ろしさなんて知らなさそうだと思いつつ、肉が引っかかっていたのは、エドガーだけではなかったはずだ。
「まぁ、行って見りゃわかるだろ。匂いの方に行くぞ」
エドガーの言葉に騎士たちは、頷いていた。が、テオドールのように肉の焼ける匂いだけで、簡単にたどり着けるような嗅覚を持ち合わせた騎士はいなかったため、思っていたより時間がかかることになった。
それこそ、オーギュストが慌てすぎて道を覚えていなかったこともあり、無事を祈るばかりだった。
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