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しおりを挟む「テオドールと……お嬢?」
「マリーヌさんが、シェフたちの手伝いをしようとしていたので、お茶をしながら詳しい話を聞くことにしました」
「は? お嬢、休めって言っただろ?」
「一日休みました」
「はぁ~、わかった。お茶飲みながら、何があったかを話せ」
「はい!」
「詳しくだぞ」
「え、一語一句までは……」
「そうじゃない。あったことのあらましだ」
「あらまし」
マリーヌは、エドガーたちに何があったかを淡々と話した。
それこそ、シェフ長に聞いた話より、だいぶ端折ったものだったが、以前自分の半生を淡々と話していたのを聞いていたエドガーたちは、ざっくりすぎるまとめ方だと思って、あらましだと釘をさしたのにこれかと苦笑したくなっていた。
それこそ、メイドを助けていた話も端折っていたのだ。それは、メイドが叱られると思って黙っていたようだ。
その話をエドガーは、料理長から聞いていた。そのせいで、昼間休んでおけば、ここまで寝不足にはならなかったことも。
だがメイドは、黙っていられずメイド長に全部話して、マリーヌが料理係だと思って料理長に礼をのべていたが、それがエドガーの率いる騎士団の使用人だとわかった上にマリーヌが寝込んでいると思って、酷く気にしているのだ。
その話をするとマリーヌは、苦笑した。それこそ、勝手に助けたことだから、気にすることないのにと言うだけだった。
それが、エドガーは引っかかったが、マリーヌが突っ込んでほしくなさそうにしているので、深く聞くことはなかった。
だが、働かせるわけにはいかないと別のことを言うことにした。
「明日も、お茶用意しとくから、喋りに来い」
「え? 明日も、ですか? 話すことなんて……」
「そうだ。それとテオドール。なんか、雑用があっただろ? 外部の奴に頼めないが面倒くさいやつだ」
「……えぇ、報告にまとめるのに必要な書類整理なんですが、マリーヌさんさえ良ければ手を貸してもらえませんか?」
「お手伝いですね! わかりました」
嬉しそうにするまでにテオドールは、笑顔になっていた。それこそ、明日はマリーヌが手伝いをしてくれることになって嬉しくてたまらないようだ。
エドガーは、やれやれといった顔をしていた。それこそ、マリーヌのことでシェフたちを威圧しているのは知っていたが、今回のことでは向こうが悪いと止めることはしなかったが、テオドールが食堂にいてよかったようだ。
働きたがるマリーヌに呆れながら、テオドールといられるようになったのだから、我ながらいいことを思いついたものだと思っていた。
テオドールの気持ちは、聞いていた。女嫌いだったテオドールが、一目惚れした相手だ。どうにかくっつけてやりたいが、こればっかりは本人に頑張ってもらうしかない。
マリーヌ相手では、前途多難だろうなとエドガーは思わずにはいられなかったが、この二人があっさりと婚約することになるとは、エドガーも、テオドールも思っていなかった。
その後、助けてもらったからとメイドが、わざわざメイド長にお礼を言いに来て、マリーヌは驚いて困った顔をしていた。
「そんな、わざわざお礼をされるようなことはしていませんので」
「そんなことはありませんよ。熟練したメイドでも、中々できないことです。本来なら、私がフォローするべきことをあなたはいち早く見つけてくれた。何も言わないでいたのは、この子が怒られたら大変だと思ってくれたのよね?」
「えっと……」
「マリーヌさん。ありがとう。ごめんなさい。あんなに良くしてもらって、怒られるのが怖くてメイド長様に言うのが遅くなってしまって、お礼をするのが今になってしまったわ」
「そんなこと気にしないで。私が勝手にやったことですから。でも、理解してくれるメイド長様なんですね。怒るばかりで話を聞いてくれない方じゃなくて、こんな風にお礼に一緒に来てくれる方だったから、あれだけ行き届いた配慮が宮廷ではできていたのですね」
マリーヌは気づいたことをのべて、メイド長は益々自分のところにほしいと思った。
「マリーヌさん、困ったことがあったら、いつでも頼ってちょうだい」
「え?」
「この子にお礼の機会を与えてあげて。それとあなたが困っている時は、私も喜んで手を貸すわ」
そんなことがあって、マリーヌはとても心強い者を味方にすることになったのだが、怒られなかったことに心底驚いていた。
それにエドガーたちは驚いていたが、何はともあれ義母があれだけ気に入ったのなら、この先心強いと思って安堵していた。
それこそ、老婦人がここにまだ務めていなかったら、マリーヌのことを孫のように溺愛していなかったら、取られていたことだろう。
そうなるとテオドールが暴れて大変だったことは間違いないはずだ。そうならなかったことに安堵していた。
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