女嫌いな騎士が一目惚れしたのは、給金を貰いすぎだと値下げ交渉に全力な訳ありな使用人のようです

珠宮さくら

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実の祖父母のことで、色々あってから、騎士団ではマリーヌを何かと気にかけていた。老婦人も、その一人だったが、マリーヌは普段と変わることはなかった。

それがそれで痛々しく見えてならなかった。

何せ、顔も見分けてもらえなかったのだ。服装だけで、こっちだと思われる程度で、上辺だけだったのだ。何一つとして、マリーヌがどんな想いで、ここまでたどり着いたかなんて考えてもいなかったのだ。勘当されることになるまでのことにも、祖父母は何とも思っていないようで、それを目のあたりにしたエドガーの方が、怒りで腸が煮えくり返っていた。

マリーヌのことをもう一人娘のように思い始めていて、あんなのなら頼る気がないと言うだけはあると思ってすらいた。

それにマリーヌは、ケロッとしているが、忘れ去ってなどいないこともわかった。何をされたかを一語一句覚えていたのだ。これまでのことも、覚えているに違いないが、それは過ぎたことだと思っているのだろう。

もしかするとメイドを助けたのも、何かあって助けたくなったのかも知れない。

それに色々思うことがあったが、そんな時にマリーヌは、国王陛下に呼ばれることになった。

エドガーは、なぜ呼ばれることになったかを国王から聞いていた。どうするかは、マリーヌ次第だと思っていた。

それこそ、エドガーも養子にすることも一時は考えてはいたが、それをやるとテオドールが婚約する時に色々と面倒になるからとしなかったのだ。

自分よりもっといい条件の養子縁組の件が浮上したのだ。それは、マリーヌにとっては、好条件の後ろ盾になるはずだ。まぁ、どうするかはマリーヌが選ぶことだが。

そもそも、家族にどんな思い入れがあるかが、エドガーは気になって仕方がなかった。








マリーヌは、騎士団長に色々と心配されているとも知らず、国王陛下に呼ばれてなんだろうと思っていた。

そこには、国王に似ている男性もいた。彼は王弟殿下らしい。通りで似ているはずだとマリーヌは思っていた。


「え? 養女、ですか?」
「そうだ。あの、つまみや料理に弟が感激してな」
「あれは、素晴らしかった。兄上に聞いたら、全部、一人で試行錯誤したとか」
「はい。美味しいものを食べたくて」
「素晴らしい。それとすみません。勝手ながら、あなたのことは調べさせてもらいました」


マリーヌは国王に呼ばれて、王弟に会うことになり、養女にしたいと言われることになって、どう反応していいのかがわからない顔をしていた。

調べたと言われたことには、何とも思わなかった。こういうところでは、素性がしっかりしていないと駄目だろうから仕方がないと思っていた。

マリーヌは、意識を目の前に戻した。国王と王弟を目の前にして、物思いになど耽っていられない。


「私のところには、子供がいません。妻が病弱で、もてないんです。兄上のところから、養子も考えたりもしたのですが……」


マリーヌは、それを聞いて察した顔をした。そんなことになったら、大変なんて言葉で済まされなくなる。


「妻には、全て話しました。ぜひ、我が家にと言ってくれています」
「え?」
「どうかしましたか?」
「っ、いえ、そんな風に歓迎されるとは思わなくて……」


マリーヌは、複雑な顔をしていた。

国王と王弟は、そんなマリーヌを察するような顔になった。調べた通りの家に生まれ育ったのなら、そう反応しても無理はないと思ってのことだ。

だが、マリーヌは勘当されている今、何者でもない平民でしかない自分を養子にして何の特があるのかと思っていた。利用価値などないはずだ。そんな値打ちなど、マリーヌはないと思っていてなぜ、養子にしたいのかがわからなかった。

双方が、くい違うことを思っていることに気づくことはなかった。


「マリーヌさん、一度、我が家に来てみませんか? 妻とも会ってみてください。外を出歩くのも、滅多にできないので、話し相手になってくれるだけでも喜ぶと思います。養女のことは抜きにして、お茶に来られませんか?」


そう言われて、断るなんてできなかったマリーヌは、王弟の屋敷に行って、彼の妻に大歓迎され、マリーヌのことを大層気に入ったのは、すぐだった。


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