女嫌いな騎士が一目惚れしたのは、給金を貰いすぎだと値下げ交渉に全力な訳ありな使用人のようです

珠宮さくら

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老婦人が、王弟夫妻の屋敷に住み始めて、養女となった娘の教育係になったことを知って、彼女の息子夫妻は出世に利用できると思ったようだ。

何年も、音信不通だったのに突然、夫婦揃って会いに来たのだ。その態度から、察した老婦人は……。


「私のことなら、何も心配いらないよ。ここで、きちんと仕事をしているから、お前も自分の仕事に専念おし。お互いの仕事の邪魔はしないでおこうじゃないか」
「邪魔だなんて、そんなことは……」
「私の邪魔をしたら、お前の出世どころじゃなくなるよ。ここの養女となられた方は、とても大事にされているんだよ。教育係として、害となるなら、お前でも容赦しないけどね」
「そんな、家族じゃないか。家族を邪魔だなんて酷いよ」


息子だけでなくて、嫁も、そうだと頷いていた。それを老婦人は冷めた目で見ていた。


「家族ね。都合のいい言葉だね。まぁ、私が容赦することもないだろうね。お前みたいな程度、プチッとされて終わるだけになるから、関わらないことだ」


だが、息子の嫁の方はそんなことで黙るような女ではなかったようだ。

そこから、血の繋がった孫は可愛いだろうとマリーヌの婚約者にどうかと言い出したのだ。


「……私の息子の出世どころか。孫の人生台無しにする気かい?」
「え? 何言ってるんですか?」


嫁は、意味がわからない顔をした。息子の方もそうだった。


「縁談なんてあったと知られたら、それこそ今後の人生で出世は見込めなくなりかねないよ。やめときな。あの子を嫁にと望むところは多いが、それをしないだけの理由があるんだよ。マリーヌを嫁になんて高望みは、おやめ。身を滅ぼすよ」
「……」


だが、それを鵜呑みにせずに縁談を持ち込むことにしたのは、嫁の方だった。息子であり、彼女の夫は、老婦人があぁ言う時は関わるべきじゃないと身をもって知っているようで、妻に期待するのは諦めようと言っていたが、嫁は諦めるような女ではなかったのだ。可愛い息子が、出世するためなら、何でもやる気でいた。それが、かえって息子の将来を絶望的なものにするとも知らずに張り切っていた。

それ以外にも、王弟夫妻の養女になったことを聞きつけて、怖いもの知らずたちが、マリーヌに縁談を持ち込んだのは、すぐだった。

それを知って、慌てすぎたテオドールは、殺気立っていた。騎士団の面々も、軒並み凄かった。


「野郎共、話は聞いてるな? お嬢に近づく虫なんかに容赦する必要はねぇ。任せられるような男か、きっちり見定めてやれ」


エドガーの言葉に騎士たちは、大きく頷いていた。テオドールも、その一人だった。

そんなことを言っているエドガーは、縁談を持ち込んだ家に睨みを効かせ、他の騎士たちも縁談を持ち込んだ各家にできる限りのことをして、ぶち壊すのは早かった。

彼らは、老婦人の孫息子だろうと容赦しなかった。彼らだけではない。宮廷のメイド長も、凄かった。特に老婦人の孫にも、容赦しなかったのは、彼女だ。

老婦人が何をして、息子夫妻が出て行ったかを知っていたが、それなのに利用できると戻って来て、マリーヌと縁談しようとしたのが許せなかったのだ。彼女は、それが自分の身内だったら、老婦人がこの世の道理を教えているだろうと思い、よく知っているからこそ、酷いことになる前にかたを付けたかったが、老婦人のところの嫁はどうにも鈍いようで、その息子も相当な馬鹿だったようだ。

とどめは流石にと思っていたら、騎士団に入ろうとして、騎士たちにボコボコにされたようだ。

その息子は、トラウマになるような目にあったようだ。給金がいいと思っているだけで、騎士になるのは簡単だと思っていて、マリーヌにいい格好をしてアピールしようなんてしたせいで、現役騎士たちにボコボコにされて当然だろうが。

それこそ、騎士を舐めきっていたのが丸わかりすぎて、他の騎士団の面々も、彼にはムカついていたようだ。そのせいで、どこに所属できていたとしても、針のむしろだったろうが、トラウマとなってしまって騎士を目指す気は呆気なくなくなってしまったようだ。

彼の母親は息子に何の恨みがあるんだと怒っていたようだが、そもそも息子が騎士なんて大したことないと言っていたことが発端だとわかっても、あーでもないこーでもないと言っているせいで、更にエドガーのまとめあげている最近では害獣討伐で素晴らしい成果を出している騎士団をボロクソに言ったことで、そんなのと付き合いがあると思いたくないと友人知人をなくすことに繋がっただけでなくて、夫の仕事もなくすことに繋がったようだ。


「なんてことをしてくれたんだ! あの騎士団を侮辱するなんて、お前、正気なのか?!」
「あの騎士団が、寄ってたかって息子をイジメたのよ!」
「騎士団に入りたいと言っていたのは、あいつだろ。それを訓練でしごかれたのをイジメだなんて言うな。害獣討伐で、死者も除隊者も出さなかった猛者揃いなんだぞ。訓練だろうと手を抜くわけがないだろうが!」


夫婦喧嘩となり、息子は引きこもりになり、老婦人の息子夫婦と孫は散々な目にあったことを知っても、だから忠告したのにとしか思わなかった。

自分たちの今後のことで、大変なことになって、老婦人のところにも何度か押しかけて頼ろうとしたようだが、老婦人が手助けすることはなかった。


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